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キャンパスナウ

▼2016 新緑号

SPECIAL REPORT

“多様な個の尊重”と“全国の教育現場への貢献”を貫いて
早稲田の教員養成

教員就職で、トップクラスの実績を誇る早稲田大学。 長い歴史を通して、多くの教育者を全国の学校現場に送り込んできました。 一方で、教育界はさまざまな変化の渦中にあります。 それに対応するための新たな取り組みにも触れながら、教員養成に込める思いを紹介します。

「教育」を通して広く社会に貢献する

教育学部長を務め、4月に発足した教職支援センターの所長でもある松本教授に、早稲田大学における教員養成の特色について伺いました。

設立時の趣旨を110年の歴史で実践

教職支援センター所長
教育・総合科学学術院長
教育学部長
松本直樹 教育・総合科学学術院教授
早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。早稲田大学助手、非常勤講師、専任講師、准教授などを経て、2008年より教授。2014年より学術院長・学部長、2016年より教職支援センター所長。

―早稲田大学の教員養成の歴史、伝統について教えてください。

 早稲田大学における教員養成の歴史は、教育学部の前身である高等師範部が設立された、1903年にさかのぼります。当時、日本の教壇は帝国大学や国立大学の出身者で占められていましたが、同部設立に尽力した第三代総長の高田早苗は「国民の精髄たるべき中等国民を教育すべき中等教員、その人を唯一処に於(お)いて或(あ)る型に嵌(は)められた様な人のみを養成するよりは、各所各学風の下に於(お)いて養成する方が宜(よ)からん」と語っています。

 近代国家を目指す日本にとって真に求められるのは、一部エリートの育成より、国民全体に教育を行き渡らせることであり、そのためには、各私学の学風を生かして多様な価値観を持つ教員を養成すべき、との思いが高田の言葉からは伝わってきます。まさに「学問の独立」「学問の活用」「模範国民の造就」という早稲田大学の趣旨を、教育を通して実践することが、本学における教育養成の信念といえるのです。

 1949年に本学が新制大学に移行し、私学で最初の教育学部を設置した際には、教員の資格取得を義務づけない“開放制”の教職課程を全国の大学で初めて採用しました。学生の多様な個性を尊重し、学問の自由を保証する姿勢は、ここにも表れています。

 本学ではこうした信念を、110年を超える学部の歴史のなかで貫きつつ、全国の学校や教育関係機関に多数の教育者を輩出してきました。現在でも、毎年の教員採用試験合格者数は私学で最多の400名前後を誇ります。また、本学出身の教育関係者で組織する稲門教育会には、全国33の地区稲門会が所属。会員数は数千名に及びます。全国に広がる校友教員ネットワークの存在は、本学が日本の教育に広く貢献してきた証であり、独自の財産であると考えています。

高度な学問的知見を社会に還元する

―現在、早稲田大学が目指す教員像について教えてください。

 目指す教員像は決して一つではありません。それが多様な個性を重んじる早稲田大学の教員養成のあるべき姿だと考えています。

 現在本学では、13あるすべての学部で各種教員免許を取得可能ですが、免許取得に必須の教職課程については、学則に基づき教育学部が担ってきました。全学の学生は各学部において高度で専門的な学問を修めるとともに、教員養成の歴史を積み上げてきた教育学部による教職課程科目を履修することになります。そのため、同じ学内においても決して画一的ではない、多様な教育者の養成につながっており、学生一人ひとりについては、高度な学問的知見を「教育」を通して社会に還元できる能力を育んでくれています。

 さらにいうなら、教育学部のなかでも、教育界にとらわれない広い意味での教育者養成を目指しています。実際に卒業生の進路は、教育界以外にも官公庁やマスコミ、実業界など多岐にわたります。人に教える能力は、特定の業界に限らず幅広く役立てられるもの。卒業生たちは本学で学んだことをあらゆる分野で生かしてくれています。

 このように、型にはまらない学生たちが共に学ぶ環境は、教員志望の学生にとってもプラスとなります。さまざまな未来を描き、思い思いの活動に励む仲間が集い、交わる。それによって、教育現場で求められる広い視野や多面的な物の見方が養えるからです。

先輩教員との連携を強化する

―今年4月に始動した教職支援センターの役割について教えてください。

 教職実践演習の履修義務化など、近年、国は相次いで教員養成に関連する改革を実施しています。こうした劇的な環境の変化に、柔軟かつ俊敏に対応することを目的として発足したのが教職支援センターです。

 本センターが担う具体的な役割は3つ。学部および大学院の教職課程を担う「カリキュラム運営」、教育実習などの運営を行う「実習等連携推進」、教員就職指導室や教員免許更新講習などの「キャリア支援」です。免許取得から就職、免許更新など、教員としてのキャリア形成にかかわる各機能を本センターに一元化することで、学部生・大学院生に対してより充実したサポートを提供します。

 そのなかで特筆すべきは、キャリア支援の一環として稲門教育会の事務機能を設けている点です。前述の通り、稲門教育会は本学独自の財産。同会のネットワークを生かし、例えば、学生の母校で行われる教育実習時には、同じ地域で活躍する先輩教員にアドバイザーを務めていただくなど、連携強化を目指します。このように本センターが学生と先輩をつなぐパイプ役となり、将来的には全国規模できめの細かい教員就職支援を実現する考えです。

地方と早稲田の循環システムを構築

―今後の抱負を教えてください。

 早稲田大学では、全国から学生が集い、多様な魅力にあふれた教員となって、再び各地域へと散じることで、日本の教育にあまねく貢献してきました。高等師範設立時以来の理念に通じるそうした姿を、教職支援センターの設立を機にさらに強化したいと考えています。

 同時に各地域で活躍する早稲田大学出身の教員に学んだ生徒たちが、進学先として本学を目指すといった、良いサイクルを回していくことが理想とする姿です。「教育」を通じた、地方と早稲田との循環システム構築を目標に、今後も取り組みを進めます。

全国に広がる早稲田の教員校友ネットワーク

教員を務める校友は全国に散らばっています。今後はそのネットワークを積極的に活用することで、教員を志望する学生に対するサポートの充実、地方の教育現場への貢献を目指しています。