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キャンパスナウ

▼2015 新緑号

SPECIAL REPORT

ワールドクラスの教育・研究大学へ。
世界とつながる早稲田の研究

国際的な教育・研究のハブを目指して教育・研究力の強化に取り組む早稲田大学。
2012年に策定した中長期計画“Waseda Vision 150”の中でも「国際教育・研究大学への躍進」を掲げ、大学をあげて教育・研究力の向上に取り組んでいます。
また、文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援」に採択された“Waseda Ocean構想”では、国際的に競争力のある6研究分野に先行投資することで教育・研究力の底上げを図ると明示しました。
いま早稲田で最もアツい「研究」について、改めて取り上げます。

Pick Up

加速する教育・研究モデル拠点

前号(2015早春号)に続き、スーパーグローバル大学事業における先行6モデル拠点のうち、4拠点を紹介します。

健康スポーツ科学

スポーツ科学学術院長
友添秀則 スポーツ科学学術院教授(右)
拠点リーダー
彼末一之 スポーツ科学学術院教授(左)

健康で楽しく生きるための社会づくりに貢献する

 現代社会には、こどもの不活動や要介護高齢者の増加といった心身の健康にかかわるさまざまな問題があります。人が楽しく生きるためには心身の健康が不可欠で、運動(スポーツ)が大切だということは世界における共通認識です。しかし、世の中には間違った健康法やトレーニング法などが横行しています。これは、健康スポーツにおける科学的知識が乏しいことによります。そのため私たち研究者には、研究レベルの向上と同時に、優秀な人材を育成し正しい情報を発信していく使命があります。

 これまで健康スポーツ科学分野の研究を牽引してきた早稲田大学は、2003年にスポーツ科学学術院を設置し、従来の学問領域の中で個別に行われていた研究を「スポーツ科学」として統合してきました。2009年の文部科学省グローバルCOEプログラムでは、健康スポーツ分野で唯一、本学の「アクティヴ・ライフを創出するスポーツ科学」が採択され、スポーツや健康科学の分野で世界的に活躍できる優秀な人材の育成に努めてきました。2014年からは早稲田大学校友会と連携し、健康づくりに関する壮大な研究調査「WASEDA’S Health Study」を開始しました(「研究最前線」参照

 健康スポーツ科学拠点では教育・研究のさらなる活性化を図るため、①スポーツ活動を通じたこども・青少年の健全育成、②スポーツ参加による中高年の健康増進、③スポーツ環境構築のためのマネジメント方策、④スポーツ技能向上の基盤形成という4つの教育・研究プロジェクトを設置しました。5年間のグローバルCOEプログラムで培ったドイツ・ケルン大学やイギリス・ラフバラ大学、中国・清華大学、カナダ・カルガリー大学など欧米・アジアの体育系大学との国際連携をさらに強化し、ジョイント・アポイントメント制度による外国人研究者の短期招聘や、優秀な外国人留学生の受入と早大生の派遣、博士課程に設置している英語学位プログラムの学部・修士課程への導入など、新しい制度の整備を計画しています。教育面での国際交流を通じて教育・研究レベルの向上を図り、多くの優秀な人材が集まり成長できるハブを目指します。

 3月4日に東伏見キャンパスで健康スポーツ科学モデル拠点の第1回国際シンポジウムを開催。ハンガリー体育大学のZsolt Radak教授をはじめ複数の招聘研究者が登壇し、「Health Promotion: The Joy of Sports and Exercise~スポーツ科学で楽しく健康に~」をテーマに講演しました。今年度内には招聘研究者の集中講義を開講する予定です。

実証政治経済学

政治経済学術院長
須賀晃一 政治経済学術院教授(右)
拠点リーダー
田中愛治 政治経済学術院教授(左)

社会課題の解決を目指し政治学と経済学の融合を図る

 年金、環境汚染などさまざまな課題があふれる現代社会において、人類がより良い生活をするには、市民のニーズを反映させた現実の社会に意味のある政治経済制度を構築しなければなりません。そして仮定や推測ではなく、統計データなどの科学的根拠に基づいた「エビデンス・ベースト」の考え方で判断することが重要です。根拠をもって具体的な方策を提案する能力は、どのような分野に進んでも必要なスキルであり、それができる人材の育成こそ大学に求められている役割でしょう。

 政治経済学術院では2000年代初頭から国際的な視野で政治学と経済学の融合を図るための大改革を行い、国際競争力のある人材の育成に取り組んできました。文部科学省の21世紀COEプログラムやグローバルCOEプログラムにより政治経済学の拠点を形成し、その成果として「政治経済学実験」や日本初のノートパソコンによる全国世論調査「CASI(Computer Assisted Selfadministered Interview)」を開発。本学ではこれに政治学実験を組み込んだ世界初のCASI調査による実験に成功、世界でもトップレベルの実験・世論調査を用いて理論上の解決策を検証するなど、さまざまな教育・研究で活用されています。科研費の基盤研究Aにおいて政治経済学術院は近年で6つ採択されている実績の上に、2013年には早稲田の文系プロジェクトでは初の基盤研究Sにも採択されています。

 政治経済学部では、2008年に文部科学省国際化拠点整備事業「グローバル30」に採択されたことをきっかけに、英語だけで学位を取得できる「英語学位プログラムEDESSA(English-based Degree Studies September Admission Program)」をスタート。今では入学定員を100名に拡大するまでに発展し、世界中から集まった外国人留学生と日本人学生が机を並べて学ぶ中で国際性や多様性を身につけています。この「グローバル30」では早稲田大学は文部科学省より最高のS評価をいただきました。この流れは、“Waseda Vision 150”やスーパーグローバル大学創生支援の目指す方向と同じであり、追い風になると期待しています。

 人事面では、2001年からグローバル・スタンダードの国際公募制をいち早く導入し、教員の国際化を図ってきました。今後は海外の教員を短期招聘する訪問教授制度(Visiting Professorship)やジョイント・アポイントメント制度、テニュア・トラック制度などにより、教育・研究の両面で優秀な人材の集まる国際的ハブを目指し、社会に貢献する人材育成に取り組みます。

※テニュア・トラック制度:若手研究者が、より安定的な職を得る前に任期付の雇用形態で自立した研「政治経済学実験」究者として経験を積むことができる制度。

「政治経済学実験」

 実験ルームに設置されたパソコンを用いて、複数の人を対象に人間心理や行動を同時に実験し、解明する手法。政治経済学術院の研究者・学生以外にも、企業の経営データを構築し国際比較をしている宮島英昭商学学術院教授など、分野の枠を超えたさまざまな教育・研究に活用され、顕著な成果をあげています。

ナノ・エネルギー材料

拠点リーダー
西出宏之 理工学術院教授

「エネルギー・ネクスト」を担う教育・研究拠点へ!

 日本をはじめ世界中でエネルギー問題が喫緊の課題となっています。この大きな課題を解決するために、既存エネルギーの改善や改質、あるいは規模の拡大のみならず、10年、20年先を見据えた全く新しい社会の価値を創造し、研究開発できる人材の育成が求められています。

 早稲田大学は材料分野で抜群の研究力をもつ研究者を数多く擁し、いち早くナノサイズでの新材料研究も展開してきました。微小空間が整列した多孔体とその空間を利用した機能開発や、電気を蓄えることのできる有機プラスチックとそれを利用した「柔らか電池」など、早稲田らしいユニークかつ役立つものづくりを行っています。そうした研究力は高く評価されており、例えば2015年3月にはスマートエナジーシステム・イノベーションセンターを設立。次世代の蓄電池・太陽電池・エネルギーマネジメントシステムなどの国家プロジェクトが複数進行していることや、多くの学生が心躍らせながら参画する共同研究を通してリーディングカンパニーとのつながりが深まっているのも特長の一つです。

 研究と同時に、教育プログラムも動いており、2012年度に採択された文部科学省の博士課程教育リーディングプログラムでは、国際的な舞台でさまざまな問題に挑戦できる高度産業人材の育成を目指し、海外の大学へ学生を3カ月間派遣し共同で育成する科目の設置や、国際的な企業における3カ月間のインターンシップ実施などの実績を積んできました。2014年度には5年一貫制博士課程の「先進理工学専攻」を設置。現在、オーストラリア・モナシュ大学とのジョイント・ディグリーのトライアルなど新たな取り組みを進めています。海外の大学の教員が早稲田大学で授業やゼミを行うことで、教育の多様化が期待できます。スーパーグローバル大学創成支援は、この動きをさらに進めるものと期待しています。

 エネルギーはサステナビリティやスマートライフなどのさまざまな問題が複雑に絡み合ったテーマであり、早稲田大学だけで解決することは不可能です。そのため、海外や企業と連携しながら、新しいエネルギー材料を起点とした「エネルギー・ネクスト」技術を生み出すことのできる、高度産業人材を育成し社会に輩出することで、世界に貢献する拠点でありたいと思います。

 2015年3月に設立したスマートエナジーシステム・イノベーションセンター(センター長:逢坂哲彌教授)(写真左)。ドライルームなど最新鋭の設備とスタッフをそろえ、次世代蓄電池研究を推進しています。また、くねくね曲がる有機プラスチック製の蓄電池(写真右)は、電池の形状を自由に変化できるため、製品開発の発想が大きく変化すると期待されています。

数物系科学

拠点リーダー
柴田良弘 理工学術院教授

日本のものづくりを支える数物系イノベーションを

 人類の技術の発展はさまざまな大発見によって成り立っています。しかし、いかにすばらしい発見も、誰もが使えなければ意味はありません。世の中の現象を論理的に解明し、誰でも理解できる言葉(数式)で表現して初めて技術や製品となります。そこで必要となるのが数学と物理の考え方であり、数学と物理は文化・文明におけるイノベーションの原動力なのです。日本がこの先も文明国として世界から評価され続けるためには、この分野がいかに重要であるかをもっと周知し、数学と物理の知識を持った次代の研究者・技術者を継続的に育成し、社会に送り出さなければなりません。それが私たち研究者の使命です。

 早稲田大学では、創設当時より「理と工の融合」を理想とした教育・研究を行ってきました。数物系の分野においても優秀な研究者を多く擁し、科研費の採択数でも高い実績をあげており、国内外から高く評価されています。まずは幅広い数物系分野の中から国際的評価の高い「量子力学・数学」「流体力学・数学」に絞り、数学・物理を基盤としたモデリングを行い、数値解析によるシミュレーションによって科学技術に貢献する優れた人材を育成する、教育・研究システムの構築を図ります。これは本学だけでなく、海外拠点と連携して進めます。特にドイツ・ダルムシュタット工科大学とは2009年より日独共同大学院プログラムをスタートさせ、共同で国際的かつ分野横断的に活躍する人材の育成に取り組んできました。今後はその実績をベースに海外連携を拡大する予定です。他にも各分野とつながりの深いイタリア・ピサ大学、アメリカ・ピッツバーグ大学、ポーランド科学アカデミー、ロシア科学アカデミーとも教育・研究の協力体制を構築。海外から「早稲田で数物系を学びたい、研究したい」と思われる拠点を目指します。

 また、数物系はもちろん機械工学系の学生も数学や物理の基礎知識を身につけることのできる場を今後も多く用意していきたいと考えています。スーパーグローバル大学創成支援が教育・研究力を発展させる急進力となり、より正確なものづくりができる人材を世の中に送り出すことで、社会の発展に貢献したいと思います。

 3月10日から13日にかけて西早稲田キャンパスで行われた日独流体数学国際研究集会。独共同大学院プログラムの一環として、ダルムシュタット工科大学のMatthias Hieber教授をはじめ海外の研究者を招聘して特別講義を実施するなど、国際連携に注力しています。