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キャンパスナウ

▼2015 早春号

SPECIAL REPORT

進む、大学改革。
多様性、開放性、流動性を備えたグローバル大学へ

文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援」タイプA(トップ型)に採択されたことを機に、早稲田大学が進める大学改革についてあらためて取り上げます。 “Waseda Vision 150”の策定から2年。改革の進捗はどうなっているか、 今回新たに提案された“Waseda Ocean構想”の狙いは何かをお伝えします。

“Waseda Vision 150”

4つのビジョン
Vision 1
世界に貢献する高い志を持った学生
Vision 2
世界の平和と人類の幸福の実現に貢献する研究
Vision 3
グローバルリーダーとして社会を支える卒業生
Vision 4
アジアの大学のモデルとなる進化する大学
取り組みの一例
入試開発オフィスを設置
多様で優秀な学生を獲得するため、新しい入試方法や入試制度の改革に取り組む
「国際学生寮WISH」を開設
東日本最大規模・約900名の留学生と日本人が混住し、国籍や文化の違いを乗り越え、共に成長する場を提供する
新研究機構「スマート社会技術融合研究機構」、「次世代自動車研究機構」を設立
「研究の早稲田」を代表する組織として、総合大学の強みを生かした分野融合による研究で豊かな未来・社会づくりに貢献する
国内で最も多様性に富むキャンパスづくり
700を超える国内トップレベルの協定校を有し、留学生受入れ5年連続1位、日本人学生派遣2年連続1位を達成(JASSO調査による)
新3号館竣工
少人数のゼミ教室、海外との遠隔授業、レポート作成や数学統計のチュートリアルなど、先進的かつ新しい教育形態を積極的に取り入れる
Pick Up

動き始めた教育・研究モデル拠点

スーパーグローバル大学事業において先行的に集中投資を行う6モデル拠点の中から、「日本文化学」と「ICT・ロボット工学」の2モデルを取り上げて紹介します。

日本文化学

理事(文化推進担当)
李 成市 文学学術院教授(右)
拠点リーダー
十重 田裕一 文学学術院教授(左)

早稲田で世界文化の中の日本文化を考える

 これまで早稲田大学が築いてきた日本文学・文化の研究を、広く世界の人々と展開する時代を新たに迎えています。村上春樹作品を見ても分かるように、日本文化は日本人だけのものではなく、世界の多くの人々に関心を持たれています。世界中で享受されるように、外に向けて発信していくことが求められています。研究の世界も同様で、これからは世界文化の中の日本文化という新たな視点から考えていく必要があるでしょう。特に研究テーマのユニークさを重視する人文学の世界では、研究力や人柄に加えて、個性が重視されます。個性をより豊かにするためには、異なるバックグラウンドの多様な視点を持つ研究者たちとの交流が効果的です。

 坪内逍遙が文学科を創設して以来、文学、歴史、哲学、演劇など人文科学系の研究に力を注いできた早稲田大学では、以前よりコロンビア大学と日本文化に関する高度な共同研究を展開してきました。2008年には日本文学コースの博士後期課程学生を対象とするコロンビア大学とのダブルディグリープログラムを開始。将来、国際的な日本文化研究を担う優秀な若手研究者の育成を共同で進めています。また、2014年にはカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)と連携し、日本文化学のグローバル化に取り組むプロジェクトを始めました。世界の優れた教育・研究機関とコンソーシアムを構成する予定です。2015年1月には本学とコロンビア大学の研究連携の架け橋となった角田柳作氏を記念した角田柳作記念国際日本学研究所を開設。人文学分野における日本文化研究の優秀な研究者が行き交い交流する場を設け、開かれた国際的な拠点をつくりたいと考えています。さらに、こうした環境に学生たちが身を置くことで常に世界を意識しながら日本文化を考えることができるようになり、良い意味の国際化につながると期待しています。

 今後の取り組みとしては5年一貫教育課程の文学研究科「国際日本学コース」の設置と、英語学位プログラムの設置を検討。早稲田大学が持つ潜在的な研究力の価値を拡大させていきたいと思います。

早稲田大学角田柳作記念国際日本学研究所とコロンビア大学ドナルド・キーン日本文化センターが、教育・研究活動などに関する協定の締結を目指しています。1月6日に同センターのデイビッド・ルーリー所長(写真中央)が鎌田薫総長を表敬訪問されました。

ICT・ロボット工学

拠点リーダー
菅野 重樹 理工学術院教授

分野を越えた“仲間”の輪を早稲田から世界へ!

 ICT・ロボット工学において「海外連携」は重要な課題です。なぜなら、今後必要となってくるICT・ロボット工学を自動車に次ぐ基幹産業へと引き上げるためには、日本が世界標準を確立する必要があるからです。そして、研究の段階から欧米各諸国の研究者と議論を尽くし、概念や設計について考えを共有しなければなりません。そうでなければ、いかに技術が高度であってもガラパゴス化してしまいます。そして世界との連携を推進できるのが大学であり、私たち研究者と学生たちです。

 2014年度よりスタートした情報技術と機械工学の連携を図る5年一貫の学位プログラム「実体情報学博士プログラム」は、「工房」という学問的刺激に満ちた共通の学舎の中で、学生たちが学科や研究室の枠を越えて実験やモノづくりを進め、互いに刺激し合うことで学問・研究分野の一体化を図っています。こうした積極的に連携する文化は、チームで研究を進める理工系分野の特徴であり、特に本学が秀でているところでしょう。かつて私が大学院生のころに参加したWABOTプロジェクトでも、機械・電気・応物の3学科4研究室が連携する中で、さまざまな刺激を受けました。こうした分野の枠を越えて融合する“仲間”の輪を、早稲田から世界へ拡大することで、国内外の産業界で活躍するリーダーを育て、送り出したいと考えています。

 現在、すでにドイツ・ミュンヘン工科大学やイタリア・SSSAなどの研究拠点と提携を結び、海外の研究者や学生が本学で共に切磋琢磨する環境が整いつつあります。スーパーグローバル大学創成支援事業は「海外連携」を加速させるものであり、年棒制やジョイント・アポイントメント制度が整ったことで、さらに世界トップレベルの研究チームの誘致が進むでしょう。それらのチームとの共同研究を広く展開し、その成果を世界へ発信していくことで、早稲田大学のICT・ロボット工学の研究力はさらに向上します。さらに、こうした実績は関連する他の分野である人間工学やバイオエンジニアリングなどの研究力向上にもつながり、総合大学である早稲田大学の研究力を世界最先端へと引き上げるものと期待しています。

学問的刺激に満ちた学び場「工房」

 指導教員の研究室から独立した共通の学舎「工房」は、バックグラウンドを異にする学生同士が日々の学究生活を送る場です。学問的刺激に満ちた空間の中で、アイデアや研究内容について透明かつインタラクティブな状態を生み出すことで、異分野の融合研究の発現をサポートします。