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キャンパスナウ

▼2014 盛夏号

SPECIAL REPORT

早稲田の“ビジネス教育”

社会で活躍する人材育成を目指し教育改革を進めている早稲田大学。今号では、学生のビジネスマインドを育み、社会人基礎力を涵養させる早稲田の“ビジネス教育”に焦点をあて、特長や教育のしくみ、戦略、将来のビジョンをお伝えします。

学部でのビジネス教育のいま

学部学生を対象に行われている早稲田らしいビジネス教育の一部をご紹介します。ビジネスの現場に最も近い学部である商学部、また、専門分野とビジネスを融合させた教育を行っている創造理工学部経営システム工学科と、スポーツ科学部スポーツビジネスコースを取り上げます。

商学部 「学識ある実業家」の育成に向けて

商学学術院教授・商学部長
嶋村 和恵
商学学術院教授
略歴はこちらから

 商学部では、「学識あるものは実業の修養に乏しく、実業の修養あるものの多くは学識を欠く」というありがたくない固定観念を打ち砕くため、1904年の創設以来、実業と学識両面の修養を兼ね備えた「学識ある実業家」を育て、社会に送り出すことを教育理念としています。そこで、基礎となる学識をより専門的に身につけることを目的にカリキュラム改革を実施。2014年度から6トラック制を導入し、専門的な内容をより学修しやすい体制を整えました。

 一方で、学識の修得と併せて、実践的要素を学べる講義も多数展開しています。日本を代表する経営者やビジネスパーソンを講師として招く「寄附講座」がいくつも設置されていることは商学部の魅力で、学生にとても好評です。また、約60ある商学部のゼミでは学生が主体となった課題解決型の研究が日常的に行われています。私のゼミの場合は、企業が実際に抱えているビジネス課題に対して学生が戦略提案をすることで、理論だけでなく現実の事例を学び、自ら考える機会に結びつけています。いわゆる「サブゼミ」として、単位とは関係なく学生が意欲をもって取り組んでいるものですが、本学ならではの豊富な人材力がベースになっています。ゼミのOB・OGやその周囲の人たちが、後輩である現役のゼミ生に課題を提供し、4年生が前年の経験を生かして3年生にアドバイスする中で、ゼミ生同士の信頼関係も強くなります。学生には、知識や発想方法はもちろん、先輩方の姿を通じて「社会とどう関わりを持ち、どのような役割を果たしていくか」という姿勢の部分にも目を向けて学んでほしいと考えています。

 ビジネスのフィールドが世界に拡大している中、今の若い人たちには世界中どこでも生きていける、働けるという心構えを持つことが重要です。そこで、英語の修得を望む日本人学生はもちろん、日本でビジネスを学びたいと考える留学生の要望に応え、英語のみで進められる授業を本年度は21科目開講しており、今後も増やしていく予定です。海外の大学との間に商学部独自の箇所間協定を結んで交換留学を実施するなど、グローバル化に応えた人材育成を進めています。

 ビジネス教育とは言え、会社ですぐに役立つ実践的な訓練ということではありません。すぐに役立つことは、役に立たなくなることも早いものです。商学部の卒業生には、深い学識と豊かな教養に裏付けられた、人間としての魅力にあふれるビジネスパーソンに育ってもらいたいと考えています。

嶋村 和恵(しまむら・かずえ)/商学学術院教授・商学部長 商学学術院教授

1988年早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程単位取得満期退学。1993年早稲田大学商学部専任講師、1995年助教授を経て、2001年から教授。2012年から商学部長。主な研究テーマは広告論。

より深く、広く学べる環境を
専門教育科目にトラック制を導入

従来の4つのコースで構成されていた専門教育科目を、2014年度から6つのトラックに再構成。必要に応じてトラックの枠を超えての科目選択も推奨するなど、専門的かつ総合的な学修環境の整備に取り組んでいる。

新しく設けられた6つのトラック

経営トラック
経営学、経営組織、経営戦略、経営史など、現実の経営を理解し説明するための理論や分析用具を学ぶ。
マーケティング・
国際ビジネストラック
グローバルな視点から、市場メカニズムを通じた製品やサービスの創造と供給、諸資源の流通と交換に関わる理論などを学ぶ。
金融・保険トラック
金融分野では企業金融、ポートフォリオ理論、国際金融などを、保険分野では、家計および企業のリスク処理の体系、保険企業の機能・役割を学ぶ。
会計トラック
企業の経済活動を外部に報告する財務会計と、会計データを経営管理に活用する管理会計を中心に学ぶ。
経済トラック
経済学の基礎的な理論と定量分析の手法を学び、ビジネスの諸問題を分析する。
産業トラック
経済史や経済政策、日本経済論、中小企業論、財政学、労働経済論などを学び、経済および産業社会の実態を理解する。
理論を実際と結びつける寄附講座・提携講座

寄附講座・提携講座は、寄附元からの寄附金や人的協力に基づく。さまざまな企業、組織から、経営者やビジネスパーソンを講師に招聘し、実際のビジネス活動を素材に講義を展開。学生は、他の講義で理論的な勉強をしつつ、寄附講座・提携講座で実際のビジネスについて理解を深めることができる。

2014年度開講中の寄附講座・提携講座
企業名 講座名
(株)ニトリホールディングス 流通・サービスの科学
British American Tobacco Japan, Ltd. Global Marketing Strategy and Management
(株)ゼンリンデータコム 起業家養成講座 Ⅰ
早大OB企業家有志 起業家養成講座 Ⅱ
(社)日本観光振興協会 ツーリズム産業論
あいおいニッセイ同和損害保険(株)・MS&AD基礎研究所(株) 新時代の保険事業
(財)全国勤労者福祉・共済振興会 少子高齢化社会における生活保障論
(財)経済広報センター 日本企業の国内外における利益獲得競争の最前線
拡大する商学部独自の提携海外協定校
※2014年5月時点

海外の15大学と商学部独自の協定を結び、交換留学を実施。中でも中国の復旦大学と香港の香港中文大学とは「Asian Bus iness Studies」として3校間留学プログラムを組んでいる。

商学部独自の協定校

アジア
国立台湾大学、国立政治大学、高麗大学校、延世大学校、梨花女子大学校、復旦大学、香港中文大学
ヨーロッパ
WHUオットー・バスハイム経営大学、ウィーン経済大学、ボッコーニ大学、ナバラ大学
北米
トロント大学、ブリティッシュ・コロンビア大学、ヴィクトリア大学、サウスカロライナ大学
学生の自主性で可能性が高まるゼミ、サブゼミ

多くのゼミでは、通常のゼミ(本ゼミ)の活動に加え、学生主体のゼミ活動(サブゼミ)を実施。内容はゼミによって異なり、より実務に近い、課題解決型の戦略立案や提案などが行われることも多く、学生は積極的に取り組んでいる。

Pick Up 
マーケティング・サイエンス
企業と共同で
学生に学ぶことの面白さを伝える

守口 剛/商学学術院教授

 マーケティング・サイエンスを研究している守口ゼミでは、さまざまな企画を通じて、企業との接点を多く持っています。昨年度は、ハウス食品「とんがりコーン」のマーケティング施策の提案、山崎製パン「ランチパック」新製品の共同企画、某プロスポーツチームの会員情報データの分析による施策提案を行いました。普段のゼミ活動とは異なる場を経験することが学生の成長を促すとともに、現実のビジネスと大学で学ぶマーケティング理論との関係を実感することが学ぶことの面白さの再確認につながっていると考えています。

創造理工学部経営システム工学科 
技術を事業につなげるマネジメント力を持った理系人財の育成を

学科主任
片山 博
理工学術院教授

 社会インフラや生活、産業、ビジネス活動がグローバル化する中で、社会システムがスムーズに機能するにはマネジメントの技術、すなわち経営システム工学が不可欠です。1935年の工業経営分科から歴史を引き継ぐ経営システム工学科は、産業や企業の効率的運用への寄与を目的としています。

 技術は事業につなげてこそ社会に貢献できると考えています。学生たちが将来企業に就職し、管理職として活躍する際に、経営システム工学への造詣の深さで大きな差がつくでしょう。当学科では、効率よく質の高い製品やサービスをつくり出す「生産システム」、企業経営の分析評価と戦略立案を目指す「経営管理システム」、経営数理技法の開発やコンピュータの効果的な活用を図る「数理情報システム」の3つの技術を習得するために、体験型実験・演習教育を導入しています。これまでに各大学で教鞭をとる教員や産業界のリーダー人財を含む10,000名超のOB・OGを輩出してきました。

 国際規模の社会的ニーズに応える高度な即戦力型人財育成が求められる今、日本のマネジメント技術の国際展開は不可欠です。医療・介護、行政などのサービス機能やイノベーション、災害復旧など、異業種・異分野にも“カイゼン”の技術が活用されることを踏まえ、一層のカリキュラム充実を図ってまいります。

経営システム工学入門実験A

具体的課題に触れることで、経営システム工学の概要と、現実の問題解決にどう役立つかを理解することが目的。

  • レポートのまとめ方:
    交渉ゲームを用いたデータの分析・整理法
  • 経済性計算:
    経営分析の基礎、損益分岐点分析、統計的データ分析法
  • ロジスティクスの実習:
    一班8名で実施する生産在庫ゲーム など
その他の演習・実験授業の一例
オペレーションズ・リサーチ演習
生産システム工学実験
プロフィットマネジメント
メソッド・エンジニアリング演習
経営システム工学実践演習
スポーツ科学部スポーツビジネスコース 
多彩なスポーツビジネスの場で活躍する人材を育成

コースオーガナイザー
松岡 宏高
スポーツ科学学術院教授

履修科目一覧
スポーツビジネス概論
スポーツ経営学
スポーツマーケティング論
スポーツファイナンス
スポーツ市場解析法
スポーツ政策論
スポーツ組織論
スポーツツーリズム論

 人々のスポーツに対するニーズの多様化、スポーツイベントやスポーツ組織の国際化、スポーツ産業市場の拡大に対応するため、スポーツ界においても「マネジメントできる人材」が求められるようになってきました。当コースは、この動きにいち早く対応し、マーケティングやメディア、イベントなど多彩なスポーツビジネスの場で活躍する人材の育成を目指しています。そのため、他の産業でも通用する経営やマーケティングの基本を学びますが、これは学生にとっても有益だと考えています。

 特徴的なものとして、スポーツ組織やスポーツ消費者に関する具体例を交えた授業や、試合会場での観客データ収集・分析やスポーツ政策に関する提案作成を行うゼミなどがあります。プロスポーツやスポーツメディア、地域のスポーツクラブといったさまざまなフィールドを取り上げながら、学生たちはスポーツビジネスをはじめ一般のビジネスにも必要なマネジメント能力だけでなく、論理的思考能力やコミュニケーション能力も身につけます。

 今後の課題は、スポーツビジネスに関する労働市場の開拓・創造が遅れていることです。新しい学問領域であるために教育・研究の人材不足という問題も存在しています。そのため、大学院教育にも注力し、将来の指導者の育成にも取り組んでいます。

インキュベーション推進室 
学生のあいだに、ビジネスとは何かを体験してほしい

産学官研究推進センター
インキュベーション推進室長
鵜飼 信一
商学学術院教授

 早稲田大学のインキュベーション推進室は、アントレプレヌールシップ(起業家精神)を持った人材の育成を第1のミッションとして活動しています。私たちは学生の皆さんに、思い切った挑戦ができる時期に仲間を集め、成功を目指して、ヒト・モノ・カネといったビジネスの原理を実体験で学んでほしいと考えています。ビジネスに成功することだけがゴールではなく、仮に失敗したとしてもそこで得たものは必ず実社会で役に立つに違いありません。この挑戦をサポートするため、弁護士、税理士、中小企業診断士、ベンチャーキャピタルのキャピタリストなど多彩な専門家による相談会を用意しています。他にも、商学部設置のオープン科目「起業家養成講座」の支援、ビジネスプランコンテストの企画運営、ビジネススタートアップセミナーの定期的な開催などを通じて、学生のアントレプレヌールシップの育成に取り組み、すでに新しい時代のビジネスリーダーを社会に輩出しています。今後も、起業を志すさまざまな学生や教職員が集い、交わることでイノベーションが生まれるような基点として活動していきます。

インキュベーション推進室のミッション
  • アントレプレヌールシップ(起業家精神)を持った人材を輩出。
  • 学内の特許技術や研究成果、学習成果をもとにしたベンチャー企業を育成・支援。
教育支援
商学部設置 オープン科目「起業家養成講座Ⅰ・Ⅱ」

Ⅰでは、「ベンチャー企業論」「経営戦略」「マーケティング」などの講義と、各界の実業家による講演、そして、実際にチームを作ってビジネスプランを作成・発表する演習から構成。Ⅱでは、「資金調達」「出口戦略」などのテーマに対してビジネススクールの教員による講義と、若手起業家による実例の解説で構成している。

年間イベント
http://www.waseda.jp/rps/incubation/event/

ビジネススタートアップセミナー
起業スピリットから実務的なアドバイスまで、豊富なテーマによるミニ講座と人脈を広げる交流会を実施。
早稲田大学ビジネスプランコンテスト
起業を志す本学学生が自らのビジネスプランをベンチャーキャピタルや事業会社などの前で発表する。今年で17回目の実績あるコンテスト。
早稲田大学アプリケーションコンテスト
早稲田の中高大学生が、テーマに合わせて企画した新しいアプリケーション・サービスを協賛企業やベンチャーキャピタル、事業会社を前に発表するコンテスト。