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キャンパスナウ

▼2014 新緑号

SPECIAL REPORT

早稲田の国際化

国内の大学でもいち早く国際化に取り組み優秀な人材を世の中に送り出してきた早稲田大学。
文部科学省「国際化拠点整備事業(グローバル30)」(2008~2013年度)の採択を機に、さらに国際化を促進。英語による授業のみで学位を取得できるコースの大幅な増設や、留学生受入体制の整備、戦略的な国際連携の推進などを進めてきました。早稲田大学の国際化のこれまでの成果と、今後の展望をお伝えします。

英語学位プログラム

グローバル30で英語学位プログラムを設置し、成果が出ている政治経済学部、理工三学部、社会科学部における取り組みを紹介します。

政治経済学部

英語学位プログラム(English-based Degree Studies September Admission:EDESSA)

佐藤 正志
政治経済学術院長

政治・経済学の分野で国際競争力を持つ学部を目指す

 政治経済学術院では、2004年、学部に国際政治経済学科を設置したことをきっかけに、グローバルな視野をもった人間をグローバルな教育環境で育てることを目標に、教育・研究の国際化に向けた改革を進めてきました。EDESSA設置により政治学、経済学、国際政治経済学の分野で国際競争力をもつ学部・大学院たらんと、グローバル・スタンダードでの高いレベルの教育・研究機関への改革努力がさらに促されました。

 設置に当たり苦心したのは、世界中から優秀な学生を集める方法と、教育能力に優れ英語コミュニケーション力のある教員体制の確立です。幸いにも志願者数は増加傾向にあり、専任教員も6名採用。今秋卒業する1期生で、教育の成果が問われることになります。一方で、従来の日本語学位プログラムの国際化を推し進める効果もあります。EDESSAの科目を履修し留学生と共に学ぶことは日本人学生にとって大きな刺激です。今後は、両プログラムで完全に互換的な日英両語のハイブリッドなカリキュラムを実現し、内外からの国際化を同時に推進したいと考えています。

 2015年度には入学定員を100名に。EDESSAを核として、ダブル・ディグリープログラムや交換留学プログラムなどを推進し、主に政経が使用する新3号館(今秋竣工)を多文化の共存する教育拠点とするとともに、未来のグローバルリーダーとなる学生たちが行き来する、教育・研究のグローバルネットワークを構築することを目指したいと思います。

【教員の「声」】関係諸国の学生たちと議論できる喜び

梅森 直之/政治経済学術院教授

 明治維新以降の日本政治を議論する「日本政治思想史」の授業を英語プログラムとしても提供しはじめて3年。日本の歴史は日本語で学ぶと「国史」ですが、英語で学ぶことで「地域研究」として見直す「距離感」が生まれます。紛糾しがちな東アジアの歴史認識問題を、アジア圏の留学生と日本人学生とともに、フラットな立場で議論できる喜びを大切にしたいと思います。

Pick Up 01

ダブルディグリープログラム
北京大学(2012年9月から1年間)
密度の濃い授業、真面目な学友との交流

吉永 恵さん/政治経済学部4年

 幼少期を中国で暮らした経験から北京への留学を決めました。1コマ3時間の授業は密度が濃く、すぐに復習しなければついていくのが困難なほど。先生の発言を書きとめ、資料をまとめたノートは1科目につき70ページに及びました。貧富の差が大きい中国では毎年農村から学費免除の学生が入学します。北京大学で勉強して将来は村全体のインフラや教育などすべてを改善することで恩返しをしたいと熱く語る友人の言葉に感動しました。細い身体の上に、家族や村全体の希望が託されているのです。「努力しなければ何とかなることは絶対ない!」ことを学びました。国際化は単に留学生を増やすだけではないと思います。日本で早慶と呼ばれる私立の名門校として、もっと教育の質に力を入れ世界での知名度を高めてほしいです。

 私は人と人がコミュニケーションするためには言葉よりも共に分かち合おうとする心が大切だと考えています。日中友好のため留学中に学んだ中国手話を継続し、日中の懸け橋を目指します。

基幹理工学部・創造理工学部・先進理工学部

英語プログラム(国際コース)

山川 宏
理工学術院長

海外で活躍する研究者・技術者の育成を目指す

 今の時代、大学も企業も国内だけで研究が進む時代ではありません。特にサイエンスやテクノロジーは世界共通ですから、理工系の研究者や技術者こそ海外に出て行く必要があります。そこで、国際化をさらに進めるために、2009年度に採択された「グローバル30」を契機に、2010年秋より基幹・創造・先進の理工3学部3研究科において英語による授業のみで学位を取得できる「国際コース」を開設しました。現在は686名の外国人学生が在籍し、その出身は中国・韓国・台湾・インドネシア・マレーシア・インド・ブラジルなど45の国・地域に及びます。

 特長は、早稲田理工系の伝統である「実験教育」を組み込んでいること。技術職員による英語での指導も可能にしており、英語の指導書も備えています。また、4年次(一部の学科では3年次)に研究室に所属し日本人学生と交流しながら日本の文化に触れ、企業との連携を通じて日本の最先端技術を学べることも彼らにとっての魅力です。一方で外国人学生が増えてキャンパスにさらに活気が溢れ、日本人学生は彼らの熱心に学ぶ姿に刺激を受けています。また、外国人学生を通じて新しい国・地域と交流し、共同研究を行う教員も増えています。

 今後は外国人学生および外国人教員を増やし国際化を一層進めることで、地球規模の課題に挑む研究者・技術者の育成に力を入れる所存です。

【教員の「声」】国際コースの学生との交流から国際化を実感

柴山 知也/理工学術院教授

 学部・大学院の水理学や海岸工学に関する講義、研究室内の週1回の研究指導、月1回の研究報告会、年1回の研究室ゼミ合宿などで英語を共通言語としています。国際コースの学生が毎日卒業研究に勤しむ姿を見ると国際化の進展を実感します。日本人の学生が非常に協力的で、積極的に英語を使って国際コースの学生と協働しています。今後も英語を共通言語として切磋琢磨する環境を維持し高度化したいと思います。

Pick Up 02

Asian Business Studies(ABS)
上海・復旦大学(2013年9月~12月)
香港・香港中文大学(2014年9月~12月)
将来、世界のビジネスの場で競争する日を目指して

山崎 博史さん/商学部4年

 1年次のプロゼミで訪れた台湾でポテンシャルや学業に取り組む意識の高い学生に刺激を受け、将来グローバル化が進む世界を牽引する彼らと同じ土俵で勝負したいと留学を決意しました。授業では日本人としての意見を求められることや、他国の留学生と互いの国や文化について話す機会が多く、海外に出ると自分は日本代表のように扱われるため自国について知っておくことの大切さを実感し、客観的に日本を見つめ直すことができました。また主張が強い海外の大学生の中で埋もれないよう、意識して授業のリーダーに名乗りを上げるなど積極的にアプローチしたことで自信がつきました。帰国 後はゼミや授業に限らず友人関係やアルバイトにおいてもリーダーシップを意識しながら積極的に行動・提案しています。

 現在の夢は、留学先で出会った仲間と世界のビジネスの場で再会し競い合うことです。将来自分が活躍し成果を残すことが、日本への貢献、そしてプログラムを提供してくれた大学への恩返しになると考えています。

※ABSは中国・上海、日本、香港の各地域に持ち回りで半期ずつ留学し、1年半にわたって継続される留学プログラム。

社会科学部

現代日本学プログラム(Contemporary Japanese Studies Program: CJSP)

畑 惠子
社会科学総合学術院長

多様な学生が切磋琢磨できる体制をさらに整えていきたい

 CJSPは日本独自の「知」と「経験」を総合的に理解し、21世紀の日本や国際社会の在り方を考えるなかで、地球規模の問題を解決できる人材を育成することを目的として、2011年に開設されました。現在は学部に56名、大学院(修士課程)に5名のCJSP学生が在籍し、出身国・地域は6に拡がっています。

 特徴は、具体的な課題を学際的かつ実践的に考えるアプローチをとること、英語を基本言語としながらも日本語教育を重視していること、少人数クラスとゼミを通して幅広い教養とコミュニケーション力を涵養することにあります。一部科目は一般プログラムと相互に開放しており、一般学生は「留学への備え」、「留学後の英語力維持・向上」、「国際的な感覚を養うこと」などを受講の目的としています。国際性豊かで多様なバックグラウンドを持つCJSP学生と机を並べ、互いに切磋琢磨しあう意味は大きいでしょう。年々受講学生数が増加しており、CJSPは学部全体の国際化推進の原動力にもなっています。

 2014年度に始まった「特定テーマ研究(Concen tration)」では、CJSPと一般プログラム、両方の科目履修を修了要件とするテーマも設置されており、学生は授業だけでなく、言語・文化を相互に教えあうなど、多様な交流活動を通して、異文化コミュニケーション・異文化理解を実践し始めています。

 今後の課題は、CJSPと一般プログラムがさらに有機的につながるようなカリキュラムを編成し、両プログラムの相乗効果を最大限に活用しながら真に必要とされるグローバル人材を社会に送り出す学部全体の体制をつくることです。さらに、同様の英語プログラムを持つ学部間の連携強化も図らねばならないと考えています。

早稲田から世界を舞台にはばたくリーダーを目指す
「グローバル・リーダーシップ学」
コア科目一覧使用言語
グローバルリーダー入門日本語
Introduction to Global Leadership英語
グローバルリーダーのための比較文化入門日本語/英語
グローバルリーダーのための政治・経済・ビジネス入門日本語/英語
Religion and Society in Modern Japan英語

 全学共通副専攻として2012年度から開設されている「グローバル・リーダーシップ学」は、建学の精神である「東西文明の調和」のスピリットを持つ将来のグローバルリーダーを早稲田から世界へ送り出すことを目指して設けられました。同コースの描くグローバルリーダー像は、東洋と西洋の両方の価値観を互いに尊敬・配慮しながら、優れた判断や意思決定を行える人物です。

 「グローバル・リーダーシップ学」の授業はグローバルエデュケーションセンターで開催されており、学部・学年を問わず受講可能で、東洋と西洋に関する歴史・文化・社会・政治・経済の分野で知識と問題意識を深めながらリーダーとしての素質を身につけます。コア科目4単位以上、選択科目12単位以上を修了すると、所属学部での主専攻とは別に、「副専攻」として卒業時に修了証明書が発行されます。科目により日本語、英語と日本語の併用、または英語のみで授業が提供されています。