早稲田大学の教育・研究・文化を発信 WASEDA ONLINE

RSS

YOMIURI ONLINE

ホーム > キャンパスナウ > 2013 盛夏号  SPECIAL REPORT

キャンパスナウ

▼2013 盛夏号

SPECIAL REPORT

教育のあり方が変わる

“ICT活用教育”

早稲田大学では他大学に先駆けて教育にICTを取り入れ、授業の質向上に取り組んできました。
“Waseda Vision 150”の核心戦略4「対話型、問題発見・解決型教育への移行」もそのひとつです。
早稲田のICTの現状とこれから、またICTを活用することで教育にどのような変化があるのかを探ります。

※ICT(Information and Communication Technology):情報通信技術

MISSION

メディアネットワークセンター&遠隔教育センター

学内インフラなど情報化を一手に引き受けてきたメディアネットワークセンター(MNC)と、教育へのICT活用をサポートしている遠隔教育センターの取り組みを紹介します。

教育・研究の質を向上する駆動力としてICTを普及させたい

教務部
情報化推進担当事務部長
黒田 学

全学の情報インフラ整備と教育・研究をサポートするシステムを提供

 早稲田大学では、1996年に設立したメディアネットワークセンター(MNC)、2002年に設立した遠隔教育センターを中心に、ICT環境の整備や教育へのICT活用などの情報化を推進してきました。

 その特徴のひとつとして、1999年に組織した早稲田大学デジタルキャンパスコンソーシアム(DCC)との連携があります。これまで、DCCに参画する企業の協力のもと、ICTを活用した新しい教育スタイルを生み出してきました。全学規模のオンデマンド授業、Tutorial English、CCDLなど他大学に真似できない先進的な教育はDCCによる実験的な取り組みからはじまり、今や「教育の早稲田」の強みとなっています。

利用者の視点に立った使いやすいサービスへ

 早稲田大学では、教育を支援するシステムを独自に開発・運用してきました。製品化されたパッケージソフトを導入し、その製品の制約範囲で授業を行うのではなく、授業でやりたいことにあわせて、さらには授業の新たな可能性を引き出すことを視野に入れてシステムをデザインすることにより、真に教育の質向上に寄与することを目指しています。そのため企画構想段階から利用者の要望を可能な限り反映し、リリース後も利用者の声に応える形で適宜改善を進めています。2007年にサービスを開始したCourse N@viは、現在では利用科目は約7割、教員の利用率は8割を超えるまで普及していますが、今後はより効果的な活用が進むよう、Course N@viを有効活用し、教育効果をあげている事例を広く公開・共有し、より質の高い活用につなげていかなければならないと考えています。活用事例集の作成、WASEDAe-Teaching Awardなどもそのための方策のひとつです。

 ICTはあくまで手段であり、活用すれば必ず授業の質が高くなるというものではありません。コミュニケーション力やディスカッション力、実行力といった社会で役立つ能力を身につけるためには、対面授業とICT活用の併用が不可欠だと考えています。2008年度より「WASEDA式アカデミックリテラシー」※として開講した「数学基礎プラス」「学術的文章の作成」は講義部分をすべてオンデマンド化し、個別指導、対面指導を組み合わせており、毎年それぞれ4,000名程度の履修者がいます。実際にこれらの授業を履修した学生、あるいは運営にかかわった大学院生からは「法律の論理的思考と数学の証明は似ていて、高校の頃できなかった数学の正体をつかんだ気がした。法科大学院への進学が決まったが、論理的な思考過程を整理する機会になった」(法学部4年)、「文章作成指導をするうちに自分の投稿論文も査読を通るようになった」(チューター)といった声も聞かれるように、オンデマンド授業の活用により「講義は教室で」の既成概念を超え、個別指導でより深い学びを創出する新たな教育スタイルが大きな可能性を秘めていると言えます。

 今後は、オンデマンド講義と対面でのディスカッションやグループワーク、さらには学生自身によるオンラインプレゼンコンテンツの作成などを組み合わせたブレンド型の新しい教育スタイルの定着をはかりつつ、作成コンテンツや論文・レポートなどの学修成果を「そのときにどのようなことを考えたか」といった気づきとあわせて記録する『学修ポートフォリオ』を整備していきます。就職活動時などに自分自身を振り返る、あるいは学外(企業など)に自分自身をアピールすることができる「学びと成長の軌跡」になると考えています。MNC、遠隔教育センターは、ICTが教育・研究を向上させる駆動力となるよう、これからも先を見据えた情報化を進めていきます。

※WASEDA式アカデミックリテラシー(通称:1万人シリーズ):全学基盤教育のひとつ。「Tutorial English」「CCDL」「学術的文章の作成」「数学基礎プラス」など。

教育・研究をサポートするエンジンに

メディアネットワークセンター マネージャー
教務部調査役(情報化推進担当)
神馬 豊彦

 MNCは、学内の情報化を効率的に進めることを目的に、それまで業務、教育・研究、図書館システムをそれぞれ所管していた3つの組織を統合する形で、1996年に設立されました。ネットワーク、コンピュータ教室、AV設備といった学内I CT環境の整備をはじめ、教育・研究、学生生活、業務などを支援するシステムの開発・運用など、大学全体の情報化に取り組んでいます。教育・研究を推進するには教員だけに任せるのではなく、サポートする仕組みが必要です。そうした仕掛けをつくるエンジンの一つになればと思います。

MNC Webサイトhttp://www.waseda.jp/mnc/

ICTの活用が授業の質向上につながる

遠隔教育センター
事務長
永間 広宣

 遠隔教育センターは、ICTを活用した新たな教育スタイルの確立を目指し、2002年に設立されました。オンデマンド授業、海外教育機関との遠隔交流授業(CCDLやサイバーゼミ)の企画・運営支援、コンテンツの制作支援など、ICT活用教育の普及・拡充に取り組んでいます。私たちは、ICTはあくまでツールに過ぎませんが、一方で、一部の人だけが使うのではなく、多くの人に活用されることが授業の質向上につながると考えています。そうした底上げを図るツールとして、情報化を推進していきたいと思います。

遠隔教育センターWebサイトhttp://www.waseda.jp/dlc/

広がるつながる学内のIT環境

24時間コンピュータ自習室

 22号館1階のコンピュータ自習室は1998年から24時間、ほぼ年間を通じて開室しており、学生が教育研究用のソフトウェアやインターネット検索を活用して課題に取り組むなど、日中は140台のPCがすべて使用されるほど活発に利用されています。コンピュータルームは各キャンパス・各学部に整備されており、専門教育などの授業で活用されています。

コンピュータ自習室

全学共通のコンピュータルーム
キャンパス名 端末台数
早稲田 1,866台
戸山 290台
西早稲田 672台
東伏見 102台
本庄 54台
所沢 126台
日本橋 20台
北九州 92台

無線LAN環境

 キャンパス内の図書館、自習室、学生ラウンジなどさまざまな場所に整備された無線LANアクセスポイントにより、学生個人が所有するノートPCやタブレット、スマートフォンをインターネットに接続する環境が整備されています。

IT利用支援

 コンピュータの使い方や大学が提供する各種システムの利用などに関する相談窓口として、学生IT相談室があり、ティーチングアシスタント(TA)が気軽に相談に応じます。また、7号館にある早稲田ポータルオフィスでもサポートを行っています。

コンテンツ制作スタジオ

 他に類を見ないほどオンデマンド授業が進化、普及している本学の学内には、授業用動画コンテンツの制作ができるスタジオ(26号館地下)を整備。専門のスタッフが収録から配信までを一貫してサポートしています。

コンテンツ制作スタジオ

簡易収録スタジオ

効果的な活用事例を共有し、より質の高い教育を実現する

 ICTの有効活用を目指し、効果的な活用事例を公開しています。また2012年度より、ICTを活用し効果をあげている取り組みを表彰する「WASEDAe-Teaching Award」も開催しています。事例を参考にさらなる工夫を加え、教育そのものの質を向上させるとともに、それを支えるシステムも進化するサイクルを実現していきます。

Course N@vi活用事例集

情報リテラシー教育活動の充実

 MNCでは、情報リテラシー教育にも力を入れています。新入生を対象としたコンピュータセキュリティーセミナーでは、大学の提供するシステム・サービスを利用するにあたって最低限知っておかなければならないこととして、ネットワークを利用した情報発信に関わる法的、倫理的責任、ネットワークを利用する上でのリスクなどについて、オンデマンドによる講義とテストを実施しています。講義受講およびテスト合格の条件を満たさない場合には、システム利用停止などの厳しい対応がとられます。また、教職員に対しても、情報セキュリティー、学術研究倫理、ハラスメントに関するオンデマンド方式の「教職員セルフマネジメントセミナー」の受講が義務づけられました。