早稲田大学の教育・研究・文化を発信 WASEDA ONLINE

RSS

読売新聞オンライン

ホーム > キャンパスナウ > 2013 早春号  SPECIAL REPORT

キャンパスナウ

▼2013 早春号

SPECIAL REPORT

地域で活躍するグローバルリーダーを育てる

大学と地域の幸せな関係

創立150周年となる2032年に早稲田のあるべき姿を示した中長期計画“Waseda Vision 150”。ここで掲げられるグローバルリーダーとは、海外で活躍する人材だけではなく、グローバルな視点や感覚をもって地元に戻って地域のために活躍する人材という意味も込められています。こうしたグローバルリーダーを育成することで大学と地域の連携は一層深まるでしょう。よりよい地球の未来を築くため、早稲田にできることは何かを探ります。

各地域で活躍するグローバルリーダー

グローバルリーダーとして地域社会の中で活躍する2名の校友に、早稲田で学んだことがどのように生かされているか、お話を伺いました。

“くまモン”が地元熊本のブランド力アップの起爆剤に

くまモン活動記録
(1)九州物産フェアでシンガポールへ
(2)1万枚配った名刺32種類の1枚
(3)熊本名産の晩白柚(ばんぺいゆ)を抱えて大阪城前
(4)関西の大学で講演
(5)ファン作品(大阪なんばでの熊本逸品縁日)

 特に志があって地元に戻ったわけではありませんでした。それでも、国内外から多様な価値観を持つ人たちで溢れた刺激的な4年間を早稲田で経験し、大海を知った蛙が井の中に帰ってできることは何か、常に考えていました。その答えの一つが、2011年のゆるキャラグランプリを獲得した“くまモン”です。

 くまモンは、2011年の九州新幹線全線開業に向けて、地元熊本で展開した「くまもとサプライズ運動」のキャラクターとして生まれましたが、新幹線でつながる関西地域での熊本県の認知度アップを図ったKANSAI 戦略の主役に抜擢しました。新幹線が開業する期待感とともに、何もしなければただの通過駅として埋没するという危機感のもと、当時所属していたくまもとブランド推進課のメンバーや県庁内外の協力者と共に「チームくまモン」を立ち上げました。とにかく目立つことをしようと、お笑い文化を意識し面白いコピーを使った名刺を配り、ツイッターやブログで双方向コミュニケーションを図りました。おかげで全国のマスコミに取り上げられ、今では多くの方がくまモン会いたさに熊本に来られます。県外から熊本の物産展を開催したいとの依頼も増えました。お目当てはくまモンです。県外企業もくまモングッズを製作し、全国で販売するまでになっています。すべて熊本のPRにつながっています。

 くまモンは今、新たなミッションとして全国各地に元気をお届けしようと東北地方の被災地をはじめ全国に出没しています。もちろん海外も視野に入れています。上海やシンガポール、アメリカにはすでに出没していて、ウォール・ストリート・ジャーナルにも取り上げられました。世界中の皆さんに愛されるようなキャラクターになってほしいと思いますし、必ずそうなると信じています。「願いは熊モテ県!」。早稲田で得た多様な価値観をベースに、理解ある蒲島知事のもと、これからも熊本のためにできることを探していきたいと思います。

成尾 雅貴(なるお・まさたか)さん/熊本県庁 地域振興課 審議員(1982年・法学部卒)

1982年熊本県庁に入庁。2010年4月から2年間くまもとブランド推進課でくまモンと共にKANSAI戦略を担当。『くまモンの秘密(仮題)』(幻冬舎新書)を3月に出版予定。

地域の伝統と海外のセッションを地域活性化の起爆剤に

(1)イタリアンブランド「Orobianco」とコラボレートした会津の漆食器
(2)大河ドラマを県のブランド開発に活かした「八重セレクション」
(3)ヴィンテージ米としてブランド化した「会津継承米氏郷」は今年で10年目
(4)デニム(KOJIMA)Betty Smith と会津木綿のコラボレーション

 地域を意識したのは高校時代。新聞部の活動で地元会津の歴史に触れ、この伝統と歴史を後世に残すために生き様を誇れる会津人になりたいと考えました。早稲田在学中は哲学や文学、宗教など専門外の勉強も積極的に取り組み、そうするうちに、より一層自分は故郷から離れられないとの思いを強くしたのです。

 卒業後は会津でITベンチャーを起業。地元の産品の販路拡大をと考えた時に愕然としました。売れるものがない、売れるものをつくれる人がいないのです。ITを使っても、地域の個性がなければ他と差別化できません。そこで、10年前から会津のブランド米生産を始めました。農家の協力のもと、まず5年かけて土づくりです。5年かけるとその土や水田は地域の財産になる。そうした地域の資産を見出し、付加価値化することが地域ブランドには重要です。一方で、新商品を開発しても流通しなければそれまでです。そこで私が力を入れているのは海外ブランドとのセッションです。震災後、福島は海外からも多くの支援をいただき、注目度も高まっている。これを活かし、イタリアの有名ブランド「Orobianco」と会津のコラボ商品を企画。今までにないものが生まれ、販路も開拓できました。また、フランスの学生に会津版ミシュランガイドのようなものを考えてもらうフィールドワークは、地元にとって、その魅力を海外に伝えるとともに、海外の視点を知るきっかけにもなりました。

 会津以外でも活動をしていますが、どこも同じ課題を抱えています。日本は海外から新しい文化を取り入れる一方で伝統をかたくなに守り続けてきた。そのため現実のライフスタイルから伝統が取り残されてしまったのです。伝統に注目が集まる今は、日本あるいは地域の伝統を世界へと発信する良い機会です。人は父母、師、そして地域の3つの恩を受けて生きているという会津藩校日新館の「三大恩」の考えのもと、これまで日本を支えてきた地域に報いるために、さまざまな挑戦をしていきたいと考えています。

本田 勝之助(ほんだ・かつのすけ)さん/(1997年・政治経済学部卒)

(有)会津食のルネッサンスおよび(株)ヒルサイドコネクション代表。地域経営という視点で、会津地方や福島県内を中心に食やモノづくりのプロデュース、ならびに伝統産業のコンサルティングやリノベーション事業を展開。