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SPECIAL REPORT

“Waseda Vision 150”

世界に貢献する大学を目指して

創立150周年となる2032年を目標に、早稲田大学がアジアのリーディングユニバーシティとして確固たる地位を築くための中長期計画“Waseda Vision 150”が本格的にスタートします。4つの大きなビジョンとそれを実現するための13の核心戦略、さらに具体的なプロジェクトの中で特に重要な取り組みをご紹介します。

ロングインタビュー

“Waseda Vision 150”策定
アジアのリーディングユニバーシティを目指して

“Waseda Vision 150”を策定した背景、目指すところ、全体像について鎌田総長に伺います。

鎌田 薫 総長

常に革新し続ける大学を目指して

――今、20年後を見据えた中長期ビジョンを、このタイミングで策定した背景をお聞かせください。

 グローバル化が進み、環境・エネルギー問題や貧困・地域紛争など地球規模の課題が深刻化している今、学術研究の進展とグローバルに活躍する優れた人材の育成を担う大学への期待は高まっています。

 本学では「21世紀の教育研究グランドデザイン」「Waseda Next 125」など早くから大学改革を進め、教育・研究の質の向上に取り組んできました。とりわけグローバル化に関しては「グローカルユニバーシティ」あるいは「早稲田からWASEDAへ」をスローガンにさまざまな改革を実行し、外国人学生は4,000名を超え、国内の大学では最も多くの留学生を受け入れており、多くの言語が飛び交うキャンパスとなってきました。日本人学生の海外派遣者数も年2,000名を超え、グローバルユニバーシティの実現に向けて着実に前進してきました。そして今回、2008年にスタートした「Waseda Next 125」の5カ年実行計画の終了にともない、中長期計画“WasedaVision 150”を策定しました。2010年11月の現理事会発足後から、理事会や学術院長会、各学術院教授会などで議論し、全学的な検討を繰り返してきました。

――“Waseda Vision 150”の目指すところについてお聞かせください。

 少子高齢化や企業就労形態の変化、国内外の大学間競争の激化、教育研究の技術的変化などが続く中で、東日本大震災に見舞われた日本の現状に鑑みると、大学も従来のあり方では将来立ち行かなくなると考えられます。そこで本学では、創立150周年を迎える2032年の本学の姿を見通した“Waseda Vision 150”を策定し、大規模な大学改革を行っていきます。

 本学が目指すのは、①世界中から、世界に貢献する高い志をもった学生が早稲田に集い、②世界の平和と人類の幸福の実現に貢献する研究を行い、③校友が世界や地域の至るところで、また、あらゆる分野でグローバルリーダーとして社会を支え、かつ本学と緊密な協力関係を築き、そして④本学がアジアのモデルとなるような大学運営体制を確立しているという姿(ビジョン)です。このビジョンの実現に向け、13の核心戦略とプロジェクトを定めました(下図参照)。13の核心戦略には「入試制度の抜本的改革」「グローバルリーダー育成のための教育体系の再構築」「教育と学修内容の公開」「独創的研究の推進と国際発信力の強化」「教職員の役割と評価の明確化」「財務体質の強化」など、大学制度の抜本的改革につながるものを多数含んでいると共に、具体的な数値目標も提案しました(『2032年の早稲田大学 数字で見るWaseda Vision 150』参照)。この実現により、本学がアジアのリーディングユニバーシティとして世界に貢献することを目指しています。

グローバルリーダーを育成し 社会へ輩出する

――“Waseda Vision 150”の核であるグローバルリーダーの育成に注力することの意義を教えてください。

 社会が混迷の一途をたどる今、日本が世界の発展を牽引するには、どのような地域や分野であってもグローバルな視点を持って活躍できる人材の育成が重要だと言われています。本学では以前からグローバルリーダーの育成に力を入れてきました。本学が考えるグローバルリーダーとは、海外で活躍する人材という狭い意味にとどまりません。地域社会の隅にあっても、主体的に考え、多様な価値観を持った人材をまとめ、新しい方向性を提示し、自ら行動する人材を含みます。現代は、社会の隅々にまでグローバル化の波が及んでいますし、同じ日本人であっても価値観が多様化しています。どこにいてもグローバルな視点や感覚は必要となります。

 本学では国際感覚を養うため、すでに春・秋入学の実施や、英語で学位を取得できるプログラムを6学部10研究科に設置。さらに、2013年度からはクォーター制(4学期制)※を順次導入していく予定です。これにより、海外の大学で6月や7月に行われるサマープログラムへの参加が容易になり、派遣学生や外国人留学生の増加につながると共に、海外の研究者との共同研究、さらにはボランティアなどもさらに活性化するでしょう。また2014年度にオープンする中野の国際学生寮では、寮内での国際教育プログラムを充実させる計画です。外国人学生と地方出身の日本人学生が混住し、異なる価値観や文化的背景を持つ者同士で共に学び生活することにより相互理解を進め、豊かな人格と将来にわたる人脈の形成に寄与することを期待しています。

――グローバルリーダー育成のために、教育面で力を入れたいことを教えてください。

 グローバル社会の中で、文化的・宗教的背景や価値観の異なる人々と意思の疎通を図るには、それぞれのバックグラウンドを理解するための幅広い教養が必要です。教養を育む方法は二つあります。一つは基礎教育と従来型の教養科目です。すでにチュートリアル・イングリッシュ※、学術的文章作成能力、数学的思考力、IT技術の活用など、基礎的なスキルを伸ばすための教育プログラムは整いましたので、今後は教養科目の内容をより一層充実させていきたいと考えています。もう一つは、専門性を高める中で養う幅広い教養があります。例えば私の専門である法律は、経済や社会、政治、文化などさまざまな知識がなければ法律の解釈も新しい法律の作成もできません。つまり、グローバルリーダーに求められる洞察力、論理的な思考力、創造力を涵養(かんよう)するためには、その基礎になる幅広い教養教育が必要なのです。

 本学では教養教育シンポジウムを8回にわたり開催し、教養教育のあり方について全学的な検討を繰り返してきました。手法の一例として、学部・研究科の垣根を越えた「学部横断的な教育プログラムの設置」、新しい教育手法を可能とする「ICT(情報通信技術)の活用」、学生が主体的に考え議論する力を育む「対話型、問題発見・解決型教育の拡充」を図っています。また学生は、教職員とは異なる立場から大学と社会のあるべき姿を考え、教職員と共に大学を支え進化させる大切な一員です。教育・研究支援業務などへ積極的に参画することで大学における自らの存在意義を自覚し、卒業後には社会を支える一員としての責任感を身につけることができるでしょう。

 他にも、平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)による国内外でのボランティア活動をはじめプロフェッショナルズ・ワークショップ※やインターンシップなど、社会におけるさまざまな体験型学習の機会を提供。これらの体験型学習も教養教育の一翼を担います。すべての学生が、留学、海外フィールドワーク、国際ボランティアなど海外での学習を経験するためのプログラムも整えています。

――早稲田の多様さを語る上でも、社会人学生の占める割合は大きくなっていると思います。社会人向けプログラムについての展望を教えてください。

 社会において、高度な専門知識を求める職業人の増加と同時に、自身の能力を磨きキャリアアップを図る人の流動化が進んでいます。大学は、それらの人たちが学ぶための受け皿として、多様なニーズに応えた教育システムおよび内容を提供するという社会的責任を担っています。

 本学では従来から社会人教育に力を入れてきました。専門職大学院としては日本で一番充実した教育カリキュラムを編成しており、より高度で実践的な能力を求める社会人学生のニーズに応えています。さらに従来型の研究大学院の社会人入試を充実させるなど幅広い受け入れ体制を整えています。一方で、学位にこだわらず専門性を高めたいとのニーズに対し、ノンディグリー・プログラム※、短期集中セミナーなどを設置しています。

 大学内でいろいろな世代や多様な分野で活躍する人たちが交流することで、グローバルリーダーの育成に2倍、3倍もの相乗効果があると考えています。今後も一層、国内外の社会人に向けたプログラムの充実を図ります。

早稲田の魅力を世界へ、未来へ

――創立150周年を迎える2032年に残したい早稲田らしさとは何でしょうか。

 「早稲田らしさ」とは「在野・反骨・進取」あるいは「自由・独立・多様性」と形容され、建学以来の伝統と言えます。その根本は、教旨「模範国民の造就」に根ざした進んで社会のために尽くすという利他の精神です。個性豊かで進取の精神にあふれた、多様な学生が切磋琢磨する中で「早稲田らしさ」が育まれています。

 また「早稲田文化」とは、教旨をはじめ130年にわたる歴史と伝統、校風、そして集まり散じた多様な人々の総体、かつそこから生まれる精神的な価値を指しています。これは歴史の積み重ねが醸し出す キャンパスの雰囲気、図書館や博物館が所有する文化資源、さらに文化的な催しや学生のサークル活動などの中に脈々と伝わっています。

 こうした「早稲田らしさ」「早稲田文化」を受け継いだ学生が卒業し、それぞれの地域、分野の中で活躍し、早稲田に対する信頼を築いてきました。この伝統を継承し、早稲田の誇りをさらに醸成していきたいと考えています。

――大学に関わる皆さんへのメッセージをお願いします。

 社会的存在である大学は、教職員や学生をはじめ企業や官公庁、地域、校友、ご父母などと連携を深める中で成り立っています。ビジョンの実現のためにも、教育・研究などを通して戦略的パートナーシップを築くと同時に、共に大学を育てるという視点から知恵あるいは精神的、物質的支援などの幅広いご助力をいただければと思います。

――創立150年に向けた意気込みをお聞かせください。

 現在、大学自体の役割が大きく変わり、世の中の大学を見る目は厳しくなっています。文部科学省は人材育成の重要性について触れた大学改革プランを策定、経済界からも大学に対してさまざまな提言があります。大学の現状への批判が多いのは、それだけ大学に対する社会全体の期待が高まっているからだと思います。

 “Waseda Vision 150”は、本学がかねてより進めてきた大学改革を、さらに前進させるための方向性を提言したものです。20年、30年先の地球社会に貢献できるグローバルリーダーを育成するという本学の中長期ビジョンは、日本の大学にとって今どのような改革が必要なのかを議論する起爆剤となるでしょう。そして早稲田のブランド力を高めるだけでなく、国際的な大学間競争の中で日本の大学の地位を引き上げると期待しています。それが早稲田の目指すアジアのリーディングユニバーシティなのです。

※クォーター制(4学期制):1年を4学期にわけ、短期集中的に単位を取得できる制度。海外ではクォーター制を採用している大学が多い。
※チュートリアル・イングリッシュ:チューター1人に学生4名という少人数で行うグループレッスン。英語を「話す」「聞く」力の修得が目的。
※プロフェッショナルズ・ワークショップ:大学と企業が一体となって取り組むプロジェクト。企業の課題に対し、学生がプロフェッショナルズ(企業人)と共同で課題解決に取り組み、企業経営陣に解決策を提案する。
※ノンディグリー・プログラム:学位を取得せず、専門的な知識の修得に徹した教育課程。