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キャンパスナウ

▼錦秋号

SPECIAL REPORT

早稲田とスポーツ―スポーツを通じた社会との連携―

選手の育成をはじめ、スポーツに関する研究など大学教育の一環としてスポーツの可能性を追求してきた早稲田大学。
2012年ロンドンオリンピック、パラリンピックでは、早大関係者が多数活躍するとともに、JOC本部関係者として多くの教員も参加しました。そこで、スポーツをアカデミックな視点からとらえるとともに、スポーツを通じた大学と社会とのつながりについて探ります。

Column

研究とオリンピック

研究者としてロンドンオリンピックに関わった2名の先生にお話を伺いました。

ロンドンのマルチサポートハウス外観

ロンドンオリンピック選手村の医務室にて診療

分析室

専門知識を生かし、選手のよいコンディションづくりをサポート

日本代表選手団本部役員
赤間高雄
スポーツ科学学術院教授

 アテネ、北京に続き、ロンドンオリンピックに日本選手団の本部ドクターとして参加。医務の責任者として大会組織委員会からの医学的情報の伝達やドクターとして選手のサポートに関わりました。平時とは異なる環境下での選手のコンディション維持は重要なテーマです。健康状態を判断する指標の一つに、唾液の成分の測定があります。長年の研究で、厳しい練習後や強いストレス下においては、唾液に含まれる抗体(分泌型免疫グロブリンA)が減少し、体調を崩しやすいことが分かっています。これまで分析には2日間程かかるため、なかなか現場では応用できませんでした。そこで今大会に向けて文部科学省のマルチサポート事業として筑波大学と共同で、短時間で分析できる機械を開発し、実務の場で活用しました。その結果、判断材料の一つとして役に立ったと思います。

 大会にはアンチ・ドーピングに関する細かなルールがあります。治療の際、申告が必要な薬剤があれば書類を提出し、許可を得なければなりません。また、大会中は事前申告した居場所情報と別の場所にいると違反になる可能性があります。そういったルールを理解していないことにより選手がうっかり違反となることのないよう、選手もサポートスタッフもしっかりとした対応が必要です。私はアンチ・ドーピングの専門家としても日本代表選手のサポートをしました。

 臨床医学における研究は、患者や選手など現場にいかに役立つかという視点が明瞭でなければなりません。そういった意味で、選手からの感謝の言葉はうれしいですし、これまでの研究が実践の場で生かされていると感じます。「チームニッポン」と言うように、研究も現場もチームで動くものです。今後は学問を通じて人材を育成し、人と人がうまく協力できる体制づくりに取り組みたいと思います。

赤間高雄(あかま・たかお)/スポーツ科学学術院教授

スポーツ科学学術院教授。ロンドンオリンピックでは日本代表選手団本部役員(医務担当)として活躍。公益財団法人日本オリンピック委員会アンチ・ドーピング委員会副委員長、公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構副会長など。専門分野はスポーツ医学、スポーツ免疫学、アンチ・ドーピング。医学博士。

自らの経験を伝え、IOCで活躍できる人材を育てたい

「ロンドンオリンピック検証チーム」委員
間野義之
スポーツ科学学術院教授

 2010年より、文部科学省の「チームニッポン」マルチサポートプロジェクトのアドバイザリーボード・メンバーとしてオリンピックに関わっています。このプロジェクトでは、スポーツ医・科学を活用したアスリートの支援やスポーツ用具・ウェア等の研究開発など、選手をサポートするためのさまざまな取り組みが行われていますが、最も大きな取り組みが「マルチサポート・ハウス」です。現地で選手のコンディショニングや食事の提供などを行う施設で、2010年に広州アジア大会で試験的に導入し、今回のロンドンオリンピックでは、選手村のゲートから徒歩10分のところに設置しました。

 施設内には、炭酸水浴施設、高気圧カプセル、メディカルケアスペース、分析ルームなどがあり、日本人スタッフが調理する食事が提供され、家族に面会することもできるため、選手のモチベーションアップとリカバリーに寄与しています。期間中は、1日平均約150名と多くの選手やサポートスタッフが利用しました。日本が過去最多の38個のメダルを獲得したことからも、大きな効果があったと言えるのではないでしょうか。今回の反省点を踏まえ、ソチオリンピックではさらに選手の力になれるような「マルチサポート・ハウス」に改良していきます。

 オリンピックに関わっていると「、スポーツを通して心身を向上させ、さらには文化・国籍などさまざまな差異を超え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解し合うことで、平和でよりよい世界の実現に貢献する」というオリンピズムをよく意識します。スポーツの世界はグローバル化しており、選手だけでなく、マネジメントにおいてもオリンピズムの精神を持った人材が求められています。現在、IOCには日本人スタッフがいませんが、早稲田でスポーツマネジメントを学んだ卒業生が活躍する日が来ることを願って、自らの経験を教育にフィードバックしたいと考えています。

間野義之(まの・よしゆき)/スポーツ科学学術院教授

2002年より早稲田大学人間科学部助教授、スポーツ科学部助教授を経て現職。文部科学省「チームニッポン」マルチサポートプロジェクトアドバイザリーボード・メンバー、日本アスリート会議理事長、日本体育協会マネジメント資格部会長、日本バスケットボールリーグ理事、東京都スポーツ振興審議会委員など、スポーツ団体やプロリーグの理事、自治体のアドバイザーを多数務める。専門はスポーツ政策。博士(スポーツ科学)。