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キャンパスナウ

▼錦秋号

SPECIAL REPORT

早稲田とスポーツ―スポーツを通じた社会との連携―

選手の育成をはじめ、スポーツに関する研究など大学教育の一環としてスポーツの可能性を追求してきた早稲田大学。
2012年ロンドンオリンピック、パラリンピックでは、早大関係者が多数活躍するとともに、JOC本部関係者として多くの教員も参加しました。そこで、スポーツをアカデミックな視点からとらえるとともに、スポーツを通じた大学と社会とのつながりについて探ります。

Interview

人々が活力をもって生きることのできる地域・社会のあり方を追求する

「アクティヴ・ライフを創出するスポーツ科学」

早稲田大学グローバルCOE プログラム「アクティヴ・ライフを創出するスポーツ科学」における取り組みを解説いただきます。

拠点リーダー
彼末一之
スポーツ科学学術院教授

 2009年、文部科学省のグローバルCOEプログラム※に採択された「アクティヴ・ライフを創出するスポーツ科学」プログラムは、スポーツや健康科学の分野で世界的に活躍できる人材を育成する日本で唯一の拠点です。

 スポーツ科学というと、体の動きのメカニズムなど生体機能的な研究を想像するかもしれませんが、実際にはさまざまな領域が複合的に関連しています。高齢者にスポーツを振興するにはどのような政策やマネジメントが必要かという研究もスポーツ科学の一種です。子どもの運動なら体育学や教育学も関連します。そこで本拠点では、子どもの健全育成、中高年の健康増進、トップスポーツの振興の3本柱を軸に、アナリシス&アセスメント、ビジネス&マネジメント、コーチング&クリニックの各領域横断的な研究・教育を行っています(図参照)。スポーツ科学あるいは健康科学の英知を結集し、さまざまな年齢層の人々が健全で健康的に日々を過ごす社会の形成を目指しています。

 現代社会には、子どもがきちんと走れないという身体的な問題やいじめなどの精神的な問題、中高年のメタボリック症候群、高齢者の要介護などさまざまな問題があり、スポーツが解決の良い手段になることが分かっています。その解決の糸口となるのがトップアスリートです。彼らを育てるには、科学的な知見と充実した環境が必要です。例えば多くの人がトップアスリートと一般人の筋肉は違うと思っているでしょう。しかしスポーツ神経科学で考えると、野球やバスケットボールなどのスポーツには筋肉ではなく運動神経、つまり脳が関係します。そこで、なぜ優秀な選手は脳での状況判断や身体を動かすための情報伝達が早いのかを研究しています。とは言え、この謎が解明されたからといってすぐに優秀な選手を育てられるわけではなく、教育学やコーチ学なども関連してきます。そういう意味で、本拠点が掲げる3つのプロジェクトは互いに関連しているのです。

 採択から3年が経ち、少しずつではありますが、形になってきています。現在、所沢市の小学校・教育委員会と連携して子どもたちの体力や技能を測定し、今後どのように教育すべきか研究を進めています。こうした地域との連携から生まれた成果を着実に社会へ発信することが私たちの使命です。また、中高年層の健康増進や介護予防としての運動に関しては、所沢市西地区総合型地域スポーツクラブ(通称:ワセダクラブ2000)や特定非営利活動法人早稲田健康の杜などの団体を窓口として研究・開発しています。中高年の健康は長年のライフスタイルの集約のため、さらに枠を広げた長期的研究を行う予定です。幸いにも、早稲田大学は卒業生が多く、しかも優秀なトップアスリートも輩出していますので。

 世界のスポーツ科学に優れた8大学と協定を結び、人的な交流や共同研究を始めました。今後は、本拠点をスポーツ科学の定常的な研究所と定め、活動内容を国際的規模に発展させたいと思っています。そして本拠点から世界で活躍する優秀な人材を輩出することで、現代社会のさまざまな問題を解決する方法論や制度を提案し、実践していくことが社会への貢献となると信じています。

※ グローバルCOE
(Center of Excellence)プログラム2002(平成14)年に文部科学省が始めた補助金事業。日本の大学院の教育研究機能の充実・強化を図り、世界で活躍できる人材を育成するため、教育研究拠点の形成を支援し、国際的な競争力のある大学づくりを推進することを目的としている。

彼末一之(かのすえ・かずゆき)/スポーツ科学学術院教授

1977年大阪大学工学部修士課程修了後、1979年医学部助手、1988年助教授、1994年保健学科教授を経て、2003年4月より早稲田大学スポーツ科学部教授。専門はスポーツ神経科学、スポーツ生理学、システム生理学。現在、グローバルCOEプログラムの拠点リーダーとしても活躍中。