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キャンパスナウ

▼錦秋号

SPECIAL REPORT

早稲田とスポーツ―スポーツを通じた社会との連携―

選手の育成をはじめ、スポーツに関する研究など大学教育の一環としてスポーツの可能性を追求してきた早稲田大学。
2012年ロンドンオリンピック、パラリンピックでは、早大関係者が多数活躍するとともに、JOC本部関係者として多くの教員も参加しました。そこで、スポーツをアカデミックな視点からとらえるとともに、スポーツを通じた大学と社会とのつながりについて探ります。

Interview

大学とスポーツの新たなモデルを構築

早稲田大学が日本のスポーツにどのように貢献してきたのか、また今後の展開についてお話をお聞きしました。

日本の近代スポーツを牽引した早稲田のスポーツ

理事(スポーツ振興・競技スポーツ担当)
宮内孝知
スポーツ科学学術院教授

――早稲田大学が日本のスポーツ界に貢献してきた歴史について教えてください。

 日本の近代スポーツの歴史は、早稲田のスポーツの歴史に重なるといっても過言ではないほど、日本のスポーツにとって大きな役割を果たしてきました。早稲田大学の創立は1882(明治15)年ですが、その翌年には大隈重信が学生の健康を目的に初めての運動会を開催しています。野球部は、1901年に設立され、1905年の日露戦争中に、日本のスポーツチームとしては初めての海外遠征を行い、米国で学んだ野球技術や練習法を持ち帰り、その後の球界の発展に大きく貢献しました。

 大学内には、日本のスポーツ界に貢献してきた卒業生の名前が冠になっている施設がいくつかあります。戸山キャンパスの高石記念プールは、日本人初のオリンピック水泳競技の入賞者、高石勝男氏の活躍を讃えて建てられたものです。また、所沢キャンパスの織田幹雄記念陸上競技場は、日本人初のオリンピック金メダリストである織田幹雄氏の生誕100周年を記念して命名されたものです。ちなみに、国立霞ヶ丘陸上競技場のメインポールの高さは、織田氏の三段跳優勝記録の15m21cmの高さで通称織田ポールと呼ばれています。そして、現存しませんが、現在中央図書館がある場所には、日本における野球の発展に貢献した安部磯雄初代野球部長の名前をつけた安部球場がありました。現在は胸像と石碑が残されています。このように、日本スポーツ界のエポックメイキングな出来事には、早稲田の選手・関係者が名を残してきました。

 スポーツの教育・研究においても、早稲田は先駆けで、スポーツ科学部(設立当時は人間科学部スポーツ科学科)は、スポーツという名を掲げた日本初の学科です。「体育」ではなく、「スポーツ」というところにこだわりがあり、体育の教材としてのスポーツ研究から、総合科学としてのスポーツ研究へと範囲を広げました。医科学、社会学、心理学、経営学などを学際的に学ぶことができ、選手だけでなく、コーチングやスポーツビジネスの分野など、選手を側面から支える分野で活躍できる人材を多く輩出しています。

大学スポーツの3つの役割

――大学におけるスポーツの役割とは何でしょうか。

 大学におけるスポーツは、教育としてのスポーツ、社会貢献としてのスポーツ、経営資源としてのスポーツに分けられます。

 教育としてのスポーツは、学生の健康維持や運動欲求を満たすためにオープン教育センターに体育の授業が設けられているほか、課外活動として約2,400名が所属する体育各部があります。社会貢献としてのスポーツでは、大学が持っている「知」を地域社会に還元しています。2000年に所沢に設立された総合型地域スポーツクラブ「WASEDA CLUB 2000」は、現在では会員数1,300名、15種目のクラブに成長しました。ワセダクラブ(P.16参照)の上井草での活動もスクール事業を中心に展開されています。いずれも指導力を発揮できる場であり、研究の題材としてもフィードバックを受けることができています。経営資源としてのスポーツは、大学のイメージを向上するためにスポーツを利用するということです。学生や校友にとってもユニバーシティアイデンティティーを形成する大切な要素になっています。

――スポーツ選手の学習支援やキャリア支援について、早稲田大学ではどのように取り組んでいますか。

 スポーツ科学部では大学院生によるチューター制を導入し、選手の学習支援を行っています。キャリア支援については、不況で企業のスポーツ支援が縮小傾向にある中、スポーツを続けたい学生と支援する企業のマッチングが重要な課題ですが、学内でもスポーツビジネスの先生が仕組み構築に取り組んでいます。

――今後の展望をお聞かせください。

 早稲田大学のイメージを形成する重要な要素の一つとして、また、大学スポーツのモデルケースを示すためにも、今後さらに多面的な角度からスポーツに力を注いでいくべきです。現在は別組織で行われている教育としてのスポーツ、社会貢献としてのスポーツ、経営資源としてのスポーツを一元化し、相乗効果を生み出していくことができればよいと考えています。

 これからも早稲田のスポーツを応援してくださっている皆さんの期待に応えるとともに、長い歴史の中で培ってきたスポーツに関する経験と知を広く役立て、スポーツ界の発展に寄与したいと思います。

宮内孝知(みやうち・たかのり)/スポーツ科学学術院教授

スポーツ科学学術院教授。1978年教育学部専任講師、1982年助教授、1987年人間科学部助教授、1991年教授、2003年スポーツ科学部教授。競技スポーツセンター所長など歴任。