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SPECIAL REPORT

理事インタビュー

産学官民が総力を結集し、社会の課題を解決していく

産学官連携において大学が果たすべき役割、早稲田大学に期待されていることについて、教務・研究推進など学事部門を統括する橋本常任理事にお話を伺いました。

社会の一員としての大学の役割

橋本周司 常任理事

 産学官連携は、社会のあり方として自然な姿です。社会は、産学官に民を加えた「産学官民」によって成り立っていますが、産業は人々が生きる糧を得るためにあり、大学は将来の糧となる基礎研究を行い、社会を支える人材を養成するためにあり、官は社会の流れを円滑にしていくためにあります。そして民は社会を構成している私たち一人ひとりです。つまり本来、産学官民はお互いに連携しなければ存在し得ないものであり、連携することで社会をより良くしていくことができます。

 もう少し小さな枠組みとして、産学連携のあり方を考えてみましょう。産学連携における大学の役割は、日々の課題と将来の課題の両方に答えていくことです。大学は、産業界が困っている日々の課題に知恵を提供し、手助けするという役割があります。しかし、これは応急措置に過ぎません。大学が自ら問題の種を見つけて研究し、将来の課題に答えやヒントを出すことも求められています。

 科学技術だけでなく、人文科学、社会科学の分野においても、学問が貢献できることはたくさんあります。そもそも大学は社会をより良くするためにさまざまな研究が行われている知の集積地です。もっと、社会に向けてメッセージを発信するべきではないでしょうか。かつて、東大総長が卒業式の式辞で「太った豚になるよりは、痩せたソクラテスになれ」と言ったことが話題になりましたが、最近は、大学が発したメッセージが世間で話題になることはなかなかありません。

 大学と社会の関係はまだまだ希薄で、唯一強固な関係といえば、学生を育てて社会に送り出すというつながりです。もちろん大切なことですが、それだけではなく、大学と社会の結びつきをさらに強化していくべきでしょう。

 産学ばかりでなく民との連携も求められています。大学が、地域コミュニティやボランティア団体などのさまざまな活動に知を提供し、貢献できることはたくさんあるでしょう。日本が直面している多くの課題や国際社会の課題を解決していくためには、産学官民が総力戦であたっていかなければなりません。壁をなくし、日頃からお互いを行き来し、それぞれの役割を果たしていく必要があります。

イノベーションを創出し、社会に新しい価値を提供する

 本学は産業界から期待されています。人材輩出という点においては、本学の卒業生はめげずに新しいことを切り拓く力があると高く評価されております。本学の研究には、本庄プロジェクトの環境・エネルギーに限らず、理工学、人文科学、社会科学のすべてに多くの得意分野があります。「学問の活用」を教旨に掲げ、学問を現実に生かすことで日本の近代化に貢献してきた本学にとって、産学官連携は重要な使命です。これは、産業界の注文を聞いて奉仕するというような受け身の姿勢ではありません。科学技術と社会文化のイノベーションを創出し、世の中に新しい価値を提供する存在を目指しています。

 そのためには、シーズを生み出す基礎研究を強化することが大切であり、創造力を育む自由な気風を守らなければなりません。現状を見ると本学に限ったことではありませんが、教員が本来の教育と研究以外のことに割く時間が増え多忙を極めています。個人の奮闘に多くを頼っている状態ですが、研究の時間を確保するためにも、この状況を組織的に改善する必要に迫られています。大学を社会に開き連携を深める上でも非常に重要な課題です。

 今後、本学が社会の一員として存在価値を高めていくには、産学官民の連携の質を向上していくことが求められています。相談しにいくと、横丁のご隠居のように気軽に知恵を与えてくれるような頼もしい存在にならなければなりませんし、世の中を良くするためのメッセージを積極的に発信していかなければなりません。

 大学の究極の目標は、世界中の人々が毎日機嫌良く暮らせるための知恵を創出することです。地球の裏側の人とテレビ電話で歩きながら会話ができるようになった今、私たちは夢を見ることを忘れていないでしょうか。大学の役割は、現状に満足せず社会をもっと良くするにはどうすればいいかを考え、より高い夢を創造することです。そして、知恵を駆使してその新しい夢と現実のギャップを埋めることです。

 2011年にスタートした本庄スマートエネルギータウンプロジェクトは、産学官民の総力を結集したプロジェクトです。エネルギー問題など、さまざまな課題を解決する夢の街の実現に向けて、早稲田大学の手腕が試されています。何としても成功させたいのです!

橋本周司(はしもと・しゅうじ)/常任理事

1970年、早稲田大学理工学部応用物理学科卒業。東邦大学講師、助教授、早稲田大学理工学部助教授を経て、1993年より早稲田大学理工学部教授。専門は計測・情報工学。理工学術院長、理工学部長、理工学研究科長などを歴任。2010年11月より早稲田大学常任理事に就任。(財)本庄国際リサーチパーク研究推進機構理事長を兼務。