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▼新年号

SPECIAL REPORT

研究の早稲田から

「産学官連携」

本学では、「Waseda Next 125」に「研究の早稲田」の飛躍を掲げ、全学的な研究体制を構築し、多様な研究活動を推進しています。特に「産学官連携」による研究は、大学の知を社会に還元する意味でも重要です。最新の連携事例をはじめ、産学官研究推進センターの役割、早稲田大学の目指すべき姿などについて探ります。

早稲田発! 産学官連携「本庄スマートエネルギータウンプロジェクト」

早稲田の技術・研究を生かした次世代の街づくり

現在本学で取り組んでいる産学官連携プロジェクトの中から、「本庄スマートエネルギータウンプロジェクト」を取り上げ、大学と自治体、それぞれの立場からの声を紹介します。

 2011年5月、本学と財団法人本庄国際リサーチパーク研究推進機構は、「本庄スマートエネルギータウンプロジェクト」を発足しました。本学本庄キャンパスのある埼玉県本庄市の上越新幹線本庄早稲田駅周辺の土地区画整備地域において、企業や自治体と連携し、早稲田の技術・研究を生かした次世代の街づくりを行っています。

 本庄市は全国有数の高温地帯かつ豊富な自然に囲まれた地域です。同プロジェクトでは、こうした再生可能エネルギー(太陽光、太陽熱、風力、地熱、バイオマス、水素エネルギーなど、比較的短期間に再生が可能なエネルギー)を有効活用し、交通システム、ライフスタイルを総合的に組み合わせることでエネルギー効率を高め、気候変動対応型の次世代モデル都市を構築します。現在、本学教員が中心となり、「バイオマスエネルギー」「クラスター拡張型スマートグリッド」「次世代モビリティ・交通システム」「次世代商業施設/次世代スマートハウス」などの研究を進めています。これらの技術開発を事業化することで新産業の創出を図り、取り組みの成果を周辺地域や全国の地方都市、海外に向けて発信していく予定です。

大学の視点

研究テーマについて、ワーキンググループごとに紹介します。

バイオマスエネルギー

周辺地域との連携を図り
バイオマスエネルギーを活用した街づくりを展開

小野田弘士
理工学術院客員准教授

 本庄市が立地する埼玉県北部は、農業や畜産業が盛んであり、未利用の農業系・畜産系の廃棄物が存在します。さらに、秩父市を中心に、周辺地域は木質バイオマスの賦存量が豊富です。本プロジェクトでは、周辺地域との有機的な連携を図りながら、バイオマスエネルギーを積極的に活用した街づくりを展開していく予定です。

 本庄スマートエネルギータウン内には住宅や商業施設が整備される計画で、各施設から排出される食品廃棄物も貴重なエネルギー源となります。食品廃棄物などをエリア内で一括して、収集・回収する仕組みを構築することも計画しています。

 現在私は、埼玉県における再生可能エネルギーの普及戦略に関する政策立案に埼玉県環境エネルギー統括参与として携わっています。バイオマス関連のプロジェクトでは、秩父市および周辺地域における未利用木質バイオマスの高効率エネルギー供給システムのモデル事業を産学官連携で展開。間伐材などの未利用の木質バイオマスを原料とし、ガス化(熱利用や発電利用)とバイオオイル化(重油・灯油代替の液体燃料)を組み合わせて供給する技術開発および実証事業であり(図参照)、平成23年度環境省地球温暖化対策技術開発事業に採択されています。秩父市およびその周辺地域で生産された製材を本庄スマートエネルギータウン内で整備される住宅などの建築物に利用するとともに、木質バイオマスのエネルギーを本庄周辺地域でも積極的に活用するという地域間の連携モデルを構築することがねらいです。

 バイオマスエネルギーの利活用を実現していくためには、林業、農業などの既存の産業との連携が不可欠です。その一助となる取り組みを展開していきたいと思います。

クラスター拡張型スマートグリッド

相互結合型の電力供給ネットワークで
災害に強い電力供給インフラを構築

横山隆一
理工学術院教授

 日本の電力会社は、消費者からの要求である低廉で良質な電力を安定的に供給するため、100年にわたり電力システムの形成に努めてきました。廉価な電力を生産するために100万kWを超える大規模な発電設備を建設。必然的に需要地域とは遠隔の地におかれ、地域的な広がりをもつ巨大システムが作り上げられました。

災害に強いクラスター拡張型電力インフラ~次世代の新エネルギー・社会システム~

 しかし、2011年3月の東日本大震災で大規模な電力不足を経験し、家庭や企業、地方自治体は、電力会社に全面依存しない自前の電源を確保しておくことの必要性を痛感し、原子力発電の代替として再生可能エネルギー(太陽光や風力発電など)を促進するための法案が成立。再生可能エネルギーが導入されると、出力変動による電力品質(周波数、電圧)の悪化が懸念され、新たな電力供給社会インフラの考え方が必要となりました。

 地域自治体主体の地産地消型電力供給システムの開発においては、地域や市街落特性に合わせた適正規模の供給ネットワークを作り、必要に応じてネットワークを増設して相互間を連結していく方式が適しています。相互結合型の電力供給ネットワークの構築により、再生可能エネルギー利用電源からの地域電力供給、電動車両への急速充電、電力貯蔵装置の有効活用、ICTによる電力利用の効率化が可能となります。

 図のように、自治体所有の発電所を中心に、行政や病院、避難所、通信基地、高齢者住宅などを完備すれば、自然災害時のライフライン(電気、水、通信)確保が可能なスマートグリッドとなるでしょう。これは「Resiliency:回復力」と呼ばれ、今後の社会インフラ構築の指針となり、今進められている東北の被災地復興にも活用されるべきだと考えています。

次世代モビリティ・交通システム

次世代モビリティシステムの運用で
新しいビジネスモデルを創出

小野田弘士
理工学術院客員准教授

超軽量小型モビリティULV

体験試乗の様子(実際は免許が必要です)

 本庄市は、新幹線の本庄早稲田駅と本庄児玉のインターチェンジが近接しており、交通の結節点としての機能を有しています。また、本学環境・エネルギー研究科には、エンジンや電動バス、電気自動車などの「モビリティ」に関わる専門家が結集しており、これらの英知を最大限に活用することを計画しています。

 最も具体的に計画が進んでいるのは、超軽量小型モビリティULV(Ultra Lightweight Vehicle)を活用したカーシェアリングシステムです。ULVは、「自転車以上自動車未満」をコンセプトに、既存のモビリティの概念を変えることを目的に開発してきました。軽量設計による省エネ性を追究していること、バッテリーやエンジンなどのさまざまな原動機に対応可能な設計手法を採用していること、地場の中小企業などと連携した地産地活の生産・供給体制を模索していることなどが特徴です。「用途・距離限定」の低環境負荷型のモビリティとして、すでに公道走行を実現しています。

 本庄早稲田地区ではマイカー1台を標準的に保有し、セカンドカーをULVのシェアリングにより実装します。それにより、近隣の大規模商業施設や既成市街地への動線を創出します。モビリティシステムの運用による新しいビジネスモデルの創出を目指した検討に着手しています。将来的には、宅配や緊急搬送に対応した自律走行なども視野に入れた研究開発への展開を計画しています。

 モビリティとはヒトやモノの移動を支援するものです。その原点に立ち返り、地域に必要とされるモビリティのあり方を探っていきたいと考えています。

次世代商業施設/次世代スマートハウス

相互にエネルギーの融通を図りCOのさらなる削減を目指す

勝田正文
理工学術院教授

 近年、特に2011年3月の東日本大震災以降、世界の先進国では例がない大規模計画停電の実施などにより、地域の中でエネルギーを自給することへの関心が高まっています。本事業では、地域の中の商業地区や住宅地区などを一つのグリッドとみなし(クラスター拡張型スマートグリッドと呼ぶ)、電気ばかりでなく冷温熱をグリッド間で融通することでCO2排出を削減しようとする計画です。すでに大がかりなコジェネレーションによる、いわゆる地冷(地域冷暖房)が各地で行われていますが、電気と熱の両方を独自系統で供給している例は我が国ではほとんど存在しません。

 本プロジェクトでは、商業地域、特にスーパーマーケット、レストランを一つのクラスターと考えて、燃料電池(SOFC)とガスエンジンを上位のコジェネシステムに位置付け、この温排熱を導入して吸着冷凍機により冷 熱を発生させ、空調や冷凍機の予冷にも利用することを計画しています。当然のことながら、太陽光発電や水素なども積極的に導入し、情報通信技術を用いて異なる発電方式や排熱を最適にマネジメントし得るEMS(エネルギーマネジメントシステム)を開発、今まで問題の多かった温熱の余剰分を異なる需要特性を持つ業種間で融通させることを考えています。

 現在は分散電源システムの製作と、JR新幹線本庄早稲田駅前に実証店舗(1/15スケール)の建設を行っています。長期ビジョンでは大学、オフィス、一般居住地区、商業地区などにグリッドを拡張して相互にエネルギーの融通を図りながら運用し、省エネルギーの面からCO2のさらなる削減を目指す予定です。

自治体の視点

本学との産学官連携について吉田信解本庄市長からコメントをいただきました。

吉田信解 本庄市長

早稲田大学との連携で
地場産業の技術革新や新たな産業の創出など、
地域経済の活性化を図りたい

 本市は、JR上越新幹線、関越自動車道をはじめ、鉄道や国道が市内を縦横に走る交通の要衝です。この立地条件の良さをPRすることで、企業誘致などの実績を挙げています。

 本市は、2008年4月に「本庄市環境宣言」を行い、市内全域を対象として市民・事業者とともに環境施策を推進しています。特に現在、本庄早稲田の杜において、豊かな自然環境と早稲田大学の「知」を生かしたまちづくり「本庄スマートエネルギータウンプロジェクト」を進めています。この先導的な取り組みは、本市の環境に配慮したまちづくり施策の中核をなすものです。将来的には、本プロジェクトで培った技術を既成市街地や市内のその他の地域へ波及させることにより、市内全域のエコタウン化が図られることを期待しています。

 産学官連携の魅力は、地場産業の技術革新や新たな産業の創出など、地域経済の活性化を図ることができるところにあります。本市は、2005年に早稲田大学と協働連携に関する基本協定を締結。本プロジェクトをはじめ、川淵三郎塾による市民一人1スポーツの推進や校庭の芝生化、環境教育、人材育成など、さまざまな事業を実施してきました。今後も、より一層の協働連携を図っていきたいと考えています。

本庄キャンパスの施設

本庄高等学院

国際情報通信研究センター・理工学総合研究センター 本庄研究棟

インキュベーション・オン・キャンパス本庄早稲田

早稲田リサーチパーク・コミュニケーションセンター
(本庄総合事務センター、(財)本庄国際リサーチパーク研究推進機構ほか)