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▼新緑号

SPECIAL REPORT

行動する国際派知識人を育成する

早稲田の英語教育

これからの社会では、英語を手段として使い活躍する人材が求められます。
大学には、社会で活躍する人材の育成という重要な役割が求められます。
本学でも、さまざまな英語教育をすすめてきました。
社会における英語教育の重要性と、早稲田大学での取り組みを紹介します。

Part.2 英語教育紹介

国際人を育成するWASEDAメソッド

本学で行っている、さまざまな英語教育の取り組みを紹介します。

【1】実践に強い英語力を身に付ける3段階のプログラム

 高校までの勉強とは異なり、大学において学問の扉を開くのに必要な基礎学力を高めるために、オープン教育センターでは「WASEDA式アカデミックリテラシー1万人シリーズ」を開講しています。この基礎学力の一つ「グローバル社会の中でコミュニケーション可能な英語力」を身に付けるために、学生の英語力に合わせた3段階のプログラムを展開しています。


STEP 1 英語を学ぶ

Tutorial Englishで英語の基礎力をつける

 Tutorial Englishは、チューター1名に学生4名という少人数で行うグループレッスンで、英語を「話す」「聞く」力を身に付けるものです。Web上で行う本学独自の英語コミュニケーション能力判定テスト「WeTEC」の結果をもとに、レベル別に細かくクラス分けすることで、学生は気兼ねなくレッスンを受けることができます。チューターは国際経験の豊富な日本人またはネイティブスピーカーが担当しています。授業のフォローは専用サイト「Tutorial Site」で行われます。授業後、サイトを通し学生一人ひとりに対してチューターからCan-Do評価やアドバイス、復習課題が出され、学生はそれをもとに授業を振り返ります。このようなきめ細やかなサポートにより、英語の基礎力を向上させています。

チューターの質がカギ

 Tutorial Englishでは、年間受講生延べ8,100名に対して、125名のチューターが指導しています。どのクラスになっても学生が満足できるよう、シニアチューターと呼ばれる8名のベテラン講師が、採用、トレーニング、オブザベーション(検証)を通してチューターの質の管理を行っています。

 採用の際は、面接やデモレッスンにより7名の面接官が経験や知識、人柄を見極めます。採用後は2日間トレーニングをした後、オブザベーションを行います。授業風景を撮影し、シニアチューターが授業を評価。チューターはその評価と自身の授業を照らし合わせ、改善につなげます。2年目以降のチューターに対しても半期に一度オブザベーションを行っており、質の向上、より良い授業づくりを常に目指しています。

Senior Tutor
Scott Cavanaughさん

Tutor’s Voice

I have worked in the Tutorial English program since 2004. I think it is one of the best programs to improve English communication. Doing homework or communicating in class, prepares students to use English. Students get to know each other and share experiences in class. They improve their English and make new friends. I see former students and they say they are still friends with classmates even after Tutorial English. I think that is an extra benefit of the program.

STEP 2 英語を使う

Cross-Cultural Distance Learning(CCDL)で英語と異文化に親しむ

 Cross-Cultural Distance Learningは、Tutorial English中級以上の学生を対象としたプログラム。Tutorial Englishで身に付けた英語力をさらに伸ばし、英語を使って対話する力や異文化理解を深めることを目的としています。PCチャットやTV会議システムなどのネットワーク環境を利用し、早大生と海外の交流大学の学生がディスカッションを行います。テーマ別に3つのコースに分かれています。

 英語を母国語としていない台湾・韓国・中国の学生たちとの間で、英語で自分の考えを正確に伝えあい、相手の意見を理解しようとする実践的な授業を通して、英語能力だけでなく異文化に対する理解や適応力を深めることができます。

 予習・復習はCourse N@vi(本学独自の授業支援システム)を使って行われています。

STEP 3 英語で専門分野を学ぶ

グローバルな科目群で、英語をより実践的に使う

 3ステップの最終段階では、Tutorial EnglishやCross-Cultural Distance Learningで身に付けた英語力とコミュニケーション力を使って専門分野を学びます。PCチャットやTV会議システムなどを使って海外の交流大学の学生と発表や討論を行う授業、英語で行われる専門科目や、短期・長期の留学プログラムや海外での実習科目などがあり、学びのフィールドを海外に広げます。

学生の声

Tutorial English をはじめとする英語クラスを受講した学生からのコメントを紹介します。

英語は広い世界で多くの物事を吸収するための道具

教育学部3年 吉田みず季さん
受講科目:
「General Tutorial English(中級)」(2010年度前期)
「Discussion Tutorial English(中級)」(2010年度後期)
WeTEC受検結果:648点(2010年4月時点)→747点(2011年1月時点)

 「留学したい!」という夢の第一歩として、1年生の春休みにロサンゼルスへ語学研修に行きましたが、準備不足で他国の留学生とうまくコミュニケーションできませんでした。「英語で積極的に会話できるようになりたい!」と思いが募って、帰国後「Tutorial English」を受講しました。「General Tutorial English」は少人数制の授業なので、受け身になることがなく、積極的に参加できるところが魅力です。「Discussion Tutorial English」は、さまざまな社会問題についてグループで話し合うクラス。自分の考えを何とかして英語で表現しようと努力するうちに、英語で話すことに自信がつきました。早稲田大学は、英語を学びたいという意欲を満たすことのできる、素晴らしい環境が整っていると思います。

 私にとって英語は、より広い世界に出て行き、より多くの物事を吸収するための道具です。さまざまな国の人々と意見を交わし、他国を自分の足で訪ね、自分の目で見たいと思っています。英語を学ぶことで、物事をもっと多角的に考えられるようになって、生き方の幅を広げていきたいと思います。

英語で日本の良さを伝えられる人になりたい!

文化構想学部2年 広瀬奈央さん
受講科目:
「General Tutorial English(上級)」(2010年度前期)
「Cross-Cultural Distance Learning(Social and Global Issues)」(2010年度後期)
「Discussion Tutorial English(上級)」(2010年度後期)

 私はアメリカからの帰国生のため、英語は十分に学んできましたが、英語で他国の学生と深い内容の話をしたいと考え、「Cross-Cultural Distance Learning」(CCDL)を受講しました。CCDLの魅力は、英語を学ぶ意欲が高い学生と勉強できることです。同じ意識を持った日本人だけでなく、他国の学生とも深く関わっていけると感じました。早稲田大学の英語教育は非常に充実していると思います。ただし、自分から進んで英語の授業を選択し、学ぶという姿勢が重要です。

 私は、英語で日本のことを説明できるようになりたいと考えています。これは英語だけの問題ではありませんが、日本語で表現するのと、英語で表現するのとではまた違ってくるものがあります。その表現を自分なりに工夫し、分かりやすく説明できるようになりたいと思います。

早大生の英語コミュニケーション能力判定テスト「WeTEC」

 「WeTEC」(Web - based Test for English Communication)は、早大生向けに開発されたインターネットを利用した選択式の英語コミュニケーション能力判定テストです。解答の正誤によって問題の構成を変化させていく順応型のシステムのため、より正確に学生の英語能力を判定することができます。

 「General Tutorial English」の受講生はクラス分けのための事前測定、成果を測るための事後測定と合計2回の受検が必須です。

【2】専門分野を学ぶための手段としての英語

 本学では、英語を手段として専門分野を学ぶために、さまざまな手法で授業に英語を取り入れています。
英語を取り入れるにあたり、どのような工夫をしているか、3つの視点からご紹介します。

国際教養学部

国際理解を促し
世界で活躍できる人材を育成

池島大策 国際学術院教授
授業科目:
「Intermediate Seminar」「International Law」
「Seminar on International Relations」

 国際機関や世界企業で活躍できる人材を育成する国際教養学部では、ほぼすべての授業を英語で行っています。英語で授業をするにあたっては、学生が授業を理解しやすいよう、事前によく準備し、配布用資料の作成にも時間をかけて工夫してきました。日本語を母国語とするか否かに関わらず、授業は英語で一貫し、一切の例外はありません。学生も英語で授業をすることが分かっているので、特に日本語での授業を望んでいないようですね。しかし、教室外で日本語で質問された場合は、丁寧に接するようにしています。

 英語で授業をする際に心掛けていることは、誰が聞いても分かりやすい英語を話すことです。また、英語の授業とはいえ、ここは日本ですから、学生たちには、日本の文化や伝統、儀礼、行動様式、発想などを尊重して行動することを求めています。例えば授業中の飲食禁止や脱帽など、諸外国との違いを理解することが国際理解だと力説しています。

 国際的に活躍できる人材を育成するためには、将来活躍する場所や場面を学生に意識させることが大切だと考えています。そのため授業では、具体的なTPOを織り交ぜるようにしています。

社会科学部

英語を日常化させることで
国際語としての必要性を意識喚起

山田満 社会科学総合学術院教授
授業科目:「ゼミナールⅠ~Ⅲ(国際協力と平和構築)」

 今秋から社会科学部にも国際化拠点整備事業(グローバル30)が導入されますし、ゼミの内容からも英語が必須だったため、2009年より英語を日常化してきました。

 2年生対象のゼミⅠでは、英語のテキストを利用して国際関係論の基礎的知識を学習し、毎回英語でプレゼンをします。何に重点をおいてプレゼンを進めるべきか、キーワードはテキストに載っているので最低限テキストの担当箇所の要約でも可能ですが、実際のプレゼン発表には予習に10時間かかるともいいます。個人差はあるものの、徐々に英文テキストや英文レポートに慣れてきていると思いますし、将来の展望ができ、意識が高まったゼミ生もいます。

 ただ、すべて英語で授業すると、英語力の差で専門知識の修得にも格差が出るため、前半は英語によるプレゼン、後半は日本語で専門知識の整理と議論をしています。

 学生からは、日本語で議論した方が、理解が深まり知識も集積されるという意見も出ています。プレゼンなどを英語で行うためには、その必然性を学生が理解し、留学生が混じっているなどの明確な理由が必要かもしれません。

 今後も英語文献の読解を促し、スピーキング、リスニングの機会を増やしていきたいですし、海外実習などで英語学習へのインセンティブを持たせたいと考えています。また、OBやOGで、ジャーナリズム、NPO、国際機関などで日常的に英語を利用して活躍しているゲストを授業に招き、国際語である英語の必要性への意識を喚起したいと思っています。

先進理工学部

日本語と英語のバイリンガル授業で
国際的に活躍できるエンジニアを育成

岩本伸一 理工学術院教授
大学院の授業科目:「電力システム理論」
学部の授業科目:「数理計画法」「電力回路」「電力システム工学」

 日本の学生は優秀ですが、英語でのコミュニケーション力が足りないと感じていました。また、理系の人間が海外で仕事をするためには、少なくとも専門用語だけは日本語と英語で知っておく必要があります。そこで約30年前に着任して以来、大学院の授業を英語で行ってきました。さらに4年前からは学部と大学院で日本語と英語のバイリンガル授業を始めています。授業では書画装置を使い、日本語と英語を同時にスクリーンに映しながら進め、次の授業では、英語だけで復習しています。国際的に活躍したい学生やバイリンガル授業に興味がある学生など、多くの学生が受講しています。

 私の研究室では、国際的に活躍できる大学院生の育成に力を注いでいます。ゼミはバイリンガルで実施し、大学院生には必ず一度は海外の学会で発表する機会を設けています。今春卒業した大学院生7名は全員が、アメリカの学会とシンガポールの学会で発表しました。海外の学会から帰ってくると、皆、人生観や国際感覚が大きく変わります。その姿を見るのがうれしいですね。

 私がバイリンガル教育にこだわるのは、例えばReactive Powerという単語を知っていても、日本語訳の無効電力という言葉が分からなければ、日本で仕事ができないからです。ですから、日本語だけでなく英語でも仕事ができるということに価値を置いています。今後も積極的にバイリンガル授業を行い、国際的に活躍できるエンジニアを育成していきたいと思います。

理工学術院英語教育センター
理系学生に必須の実践的な英語教育

 理工系の分野では、英語が世界共通語になっています。そのため、技術者、研究者にかかわらずメールやレポート・論文執筆、プレゼンテーションなど、日常に英語を使う必要があります。そこで2004年に理工学術院英語教育センターを設置しました。実践的な英語教育を行い、国際レベルの研究者・技術者の育成を目指しています。