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▼錦秋号

SPECIAL REPORT

世界がキャンパス
WASEDAから“Study Abroad”

グローバルに活躍できる国際人を育成することが、大学に求められる使命のひとつです。早稲田大学では、世界のどこをも学びの場とする「グローバルキャンパス」を目指しています。多彩な海外学習プログラムと、大学としてのサポート体制などを紹介します。

白木 三秀(しらき・みつひで)早稲田大学政治経済学術院教授 略歴はこちらから

Part.1 インタビュー

未知の世界で、たくましく、しなやかに成長することが留学の意義

白木 三秀/早稲田大学政治経済学術院教授、早稲田大学留学センター所長(取材時)

グローバル化が進む現在、留学の意義は何か、留学する学生のために留学センターにはどのようなミッションが求められているのか、白木所長にお話を伺いました。(2010年9月3日取材)

日本を、そして自分の力を、客観的に見つめ直すために

 留学センターは各国から学生が集うキャンパスの実現、そして本学の学生が留学しやすい環境作りを目的として活動しています。具体的には海外提携校の拡大や各種留学プログラムの策定が主な業務です。

 近年、日本の学生は留学に行きたがらないという話を耳にすることがあります。確かに日本での生活水準は世界的に見ても高いレベルにあるでしょう。社会インフラは整備されており、失業率も相対的に低い。あえて留学という冒険をしなくても日本で生活していれば十分ではないか、学生たちがそう考えるのも無理はありません。しかし、少し視点を変えてみると日本の違った姿が見えてきます。例えば一人当たりのGDPはすでに同じアジアのシンガポールに抜かれました。また発展途上国における存在感についても、中国や韓国の台頭により相対的に低下しているのが実状です。多くの日本企業は強い危機感を抱き、生き残りをかけて競争に臨んでいます。いまや日本は決して安穏な生活ができる楽園ではないのです。

 私はそんな日本の姿、そして自分自身の力を客観的に感じるためにも留学が必要だと思っています。ここで以前私が主催していたゼミの話をしましょう。数年前のことですがタイのタマサート大学の学生たちと交流する機会がありました。タイの学生が日本についての研究を英語で発表したのですが、英語力、知識量などで私のゼミの学生たちは圧倒されていました。あまりのレベルの違いに学生たちはショックを受けていましたね。早稲田大学は日本では高い評価を受けており、就職にも恵まれています。しかし一歩世界に出れば、自分の本当の実力が問われるのです。本学では留学する学生の数は減っていませんが、今後国際化がさらに進行することを考えると、もっと多くの学生に留学や海外経験を積んでほしいと考えています。

留学センターは最初の一歩を踏み出すための手段

 かつて留学と言えば一大事でしたが、現在は学生にとってかなり身近な存在になったと感じています。最近では留学を斡旋する企業・団体も増えてきました。その中で当センターの強みはやはり協定校の多さとプログラムの多彩さでしょう。現在、協定校の数は世界各国に600校以上、そのうち約半分の304校に留学することが可能です。またプログラムについては、現地の企業や国際機関のOECD(経済開発協力機構)でインターン経験を積めるものから大自然を満喫できるものまで1,000以上のコースがあります。

 実は私自身、学生時代に長期にわたって外国を旅行したことがあります。当時は今のようにしっかりとしたプログラムはなく、すべての手配を自分で行いました。私見ではありますが、当センターを利用せずに留学するのも一つの方法だと思います。なぜなら多くの苦労を経験する中で身に付く能力もたくさんあるからです。しかし効率や安全性など、留学のハードルが高いと感じたならば、ぜひ当センターを活用するべきです。プログラムには気軽に参加できる短期間のコースも数多く揃っています。一度海外経験を積むことで、より長期のプログラムに興味が湧くかもしれません。大切なのは、まず行ってみること。留学センターはそのための手段の一つなのです。

企業で必須となりつつある海外経験

 留学ではさまざまな文化や考え方に触れる機会があります。それまで生きてきた社会と違う環境で過ごすことで、柔軟性やたくましさが身に付くことこそ留学のメリットだと私は考えています。

 残念ながら、日本の企業は留学に対する評価がまだ低いのが現状です。しかし近年、企業ではダイバーシティ、つまり多様な人材の必要性が増してきました。海外で仕事をしたり、違う国の人々と仕事をする機会が増えることを考えると語学力はもちろん、柔軟性やたくましさは必須の能力になるでしょう。私は文部科学省から支援を受け、ある調査をしたことがあります。その調査とは企業が実施する海外プロジェクトが成功する条件について。3,000以上のケースを調べて判明したことは、プロジェクトリーダーが過去に海外勤務の経験があると成功率が飛躍的に高まるということでした。ビジネスパーソンが海外経験を持つ必要性がデータでも実証されたわけです。ですから学生の皆さんには今一度、海外に目を向けてみてほしいと思います。

 短期プログラムは気軽に参加できるものですが、長期留学については「自分が何のために海外に行くのか」ということをよく考えてほしいと思います。目的によって国や大学も違ってくるからです。ここで注意したいのが、大学をブランドで選ばないことですね。世界的に有名な大学は大半が研究面に重点を置く大学。海外経験を積むという観点で言えば、教育を重視する小規模の大学で勉強した方がよっぽど有益なケースが多いと思います。大学選びはぜひ慎重に行ってください。

 本学では留学をはじめとした海外経験の推進を積極的に始めています。今後は授業などでも海外経験の機会が増えていくでしょう。学生の皆さんが「世界」を意識しながら学べる環境を充実させるため、当センターでも活動を加速させていきます。

※交換留学、ダブルディグリー・プログラム、ISAプログラム、TSAプログラム、私費留学のみ。短期留学は含まれません。

白木 三秀(しらき・みつひで)/早稲田大学政治経済学術院教授、早稲田大学留学センター所長(取材時)

【略歴】
1951年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、同大学院経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。国士舘大学政経学部助教授・教授などを経て、1999年4月より早稲田大学政治経済学部教授。2005年より同大学政治経済学術院教授。労働政策審議会委員、国際ビジネス研究学会副会長などを兼務。