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▼盛夏号

SPECIAL REPORT

WASEDA ECO FUTURE 環境を考える
THINK ECOLOGY AT WASEDA

環境問題への関心が世界的に高まる一方、早稲田大学では1979年から長きにわたって環境教育・研究に取り組んできました。教育・研究を担う大学として、環境問題の解決にどのように寄与できるのか。大学内での環境への取り組みと、環境教育・研究の一部を紹介します。

Part.1

トップマネジメントが語る早稲田のエコ

目の前のエコに取り組みながら、未来の環境を担う「地球市民」を輩出していく

早稲田大学の環境施策を統括する田内常任理事に、現在の取り組みや今後の展望について語っていただきました。

常に時代の先頭を走ってきた早稲田のエコ

田内 秀昭/早稲田大学常任理事 略歴はこちらから

――早稲田大学における環境活動の経緯についてお聞かせください。

 早稲田大学の環境活動を振り返ると、最も大きな転換点となったのは1979年の環境保全センターの設立です。国内の大学としては初めての環境問題に関する組織でした。環境保全センターは「教育・研究活動等に伴い発生する環境汚染の防止と環境負荷を低減し、学生・教職員および周辺住民の生活環境の保全をはかる」ことを目的に学内で発生する実験系廃棄物の無害化を徹底しました。世間では公害問題に対する行政の対応不足が指摘される中、地域への配慮を盛り込んだ内容はとても先進的だったと思います。

 組織の設立という観点からお話ししましたが、実はそれ以前にも本学では環境への取り組みが行われていました。代表的なものを挙げると、1890年代の足尾鉱毒事件にまで遡ります。この問題解決に早稲田大学関係者が大きな役割を果たしました。また1960年に三陸地方でフェーン現象による大規模な火災が発生した際は、商学部の故小田泰市教授が学生を引き連れて岩手県田野畑村で植林の復興に立ち上がりました。以来「思惟の森の会」という学生サークルが、毎年、植林・育林活動を行っています。本学には社会的な関心が高まるはるか前から環境問題に取り組む先達が存在し、その伝統は今でも息づいているのです。

 環境保全センター設立以後の主な動きとしては、1996年に財政改革推進本部を設置したことが挙げられます。経費削減の視点から省エネやごみの削減への取り組みをスタートさせましたが、環境活動としても大きな成果を残しました。その後は1998年にエコ・キャンパス推進本部を立ち上げ、環境マネジメントシステムEMS(Environment Management System)を導入。さらに2000年には西早稲田キャンパス(現早稲田キャンパス)でISO14001の認証取得と、環境問題に対する取り組みをますます加速させていきました。この時点で大学によるISO取得はわずか4校。早稲田大学はいつの時代も先頭に立って環境問題に取り組んできたと言うことができるのではないでしょうか。

 環境活動の本格化に伴い、学内には環境問題に関するさまざまな組織や附属機関が生まれました。特に2003年に設置された環境安全管理課は、さまざまな組織・機関と連携して環境活動を行う部署であり、環境や安全に関する情報の一元管理や諸施策の一貫性を確保する役割を担っています。

大学が果たすべき使命を追求し、最適なマネジメントシステムを構築

――現在展開する環境活動の中で重視しているのはどのようなことですか。

 ISO14001の導入により環境負荷の削減やEMS運用ノウハウの習得など、一定の効果を上げることができました。しかしさらなるパフォーマンスの向上と「大学でしかできないこと」を追求した結果、2006年からは独自に作り上げたWEMS(Waseda University Environmental Management System)を導入しています。このWEMSは外部評価を継続するなどISO14001と同様に客観性を確保する一方で、大学での学術的な活動や学生との協力体制の構築、地域との共存共栄といった活動を実践し、次なるステップへ進む上で最適なシステムを目指したものです。WEMSの導入により、大学全体で組織的・体系的な環境マネジメントが可能となり、現在積極的に運用されています。大学内の問題解決はもちろん、早稲田大学が社会で果たすべき役割までも考慮に入れた環境活動指針なのです。

――WEMSでは具体的にどのようなことを実施されていますか。

 まず、省エネ・CO2削減については、エレベーターの照明や自動販売機の省力化などを行っています。無理を強いるのではなく、教育研究活動の質の維持・向上ならびに大学キャンパスの安全を確保しながら小さな努力を全員で実践することが重要です。私もオフィスの照明やパソコンの電源にはかなり気をつけています。早稲田大学には学生や教職員など6万人を超える人々が在籍しています。これだけの人数がいれば、一人ひとりが自分にできることを行うだけで大きな効果が生まれるのです。背伸びをすることなく、まずはできることから始めることが大切だと思います。

 教育面については、全学部共通のオープン科目として環境に関するテーマスタディが選べるほか、ボランティア科目としても環境について学ぶことが可能です。また実験を行う理工系の学生に関しては注意点を学べる安全e-learningを整備するなど、学生が環境問題に触れる機会はかなり多いのではないでしょうか。環境活動において大学が果たすべき最も重要な役割は人材の輩出。今後も次の時代を担う学生たちの環境に対する意識が高まるような働きかけを強化していきたいと思います。先日、本学に留学した学生が故郷のモンゴルへ帰国し、遊牧民のために太陽光発電の普及に取り組んでいるというテレビニュースを目にしました。100に近い国・地域から学生が集う早稲田大学が社会に与える影響の大きさを改めて実感した出来事です。

地域とともに歩み続ける大学でありたい

――今後の課題や新たに取り組むべきことはありますか。

 地域の皆さんとのつながりをさらに強めていきたいですね。地球にやさしい行動を取ると「馬力」という紙幣がもらえる「アトム通貨」は早稲田・高田馬場一帯の商店街で流通する地域通貨ですが、今年から北海道をはじめとして全国9つの都道県でも展開されることが決定しました。地域の皆さんと生み出した環境活動が、全国へと広がりを見せているわけです。これは素晴らしいことだと思います。早稲田大学は創立から128年間、地域の皆さんとともに発展してきた大学です。キャンパスの周りは高齢者の方が多い地域ですから、環境施策はもちろん、大規模災害時の協力体制についてもさらに一歩踏み込んだものにしていきたいと思っています。

田内 秀昭(たうち・ひであき)/早稲田大学常任理事

【略歴】
早稲田大学社会科学部卒業。早稲田大学に就職後、システム科学研究所事務長、教務部教育研究助成課長、人事部人事課長、アジア太平洋研究センター事務長、大学院アジア太平洋研究科事務長(兼務)、学生部事務部長、総務部長等を歴任し、06 年より常任理事に就任。