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SPECIAL REPORT

知の宝庫「早稲田大学図書館」

加藤哲夫図書館長インタビュー

加藤哲夫図書館長に、早稲田大学図書館の取り組みと今後の課題についてお話を伺いました。

教育・研究に不可欠な存在として、 充実、進化する大学図書館

加藤 哲夫/早稲田大学図書館長 法学学術院・博士(法学・早稲田大学)

図書館近代化の先駆的存在

加藤 哲夫/早稲田大学図書館長 法学学術院・博士(法学・早稲田大学) 略歴はこちらから

――早稲田大学図書館の価値と歴史について、お聞かせください。

 早稲田大学図書館の蔵書規模は、500万冊を超え、日本の大学図書館の中でも一、二を争うトップクラスです。歴史が古いことは言うまでもありませんが、図書館の近代化、情報化においても最先端の取り組みを行ってきました。例えば、蔵書のデータベースをいつでもどこでも検索することができるWINE検索システムは10年以上前から稼働していますし、江戸期以前の資料を電子化した古典籍総合データベースも完成しています。通常、古典籍は難しい手続きを経て初めて目にできるものですが、インターネットにつながった端末さえあれば、いつでもどこでも貴重な古い資料の内容を見ることが可能になりました。また、図書館のデータベースは、国際規模のデータベース機関であるOCLCにも提供され、世界中に公開されています。

――インターネットが普及し、図書館データベースの充実だけでなく、電子ジャーナルなどの電子ブックが増え、端末上で中身を読むこともできるようになりました。図書館は今後どのように対応していくのでしょうか。

 図書の電子化は図書館にとって避けて通ることのできない課題です。大学図書館に限らず、公共図書館も同様ですが、蔵書スペースが限られていますし、電子ブックの普及という社会の流れにも対応していかなければなりません。50年先の図書館が電子図書館といった形になっている可能性もないわけではありませんが、図書館が利用者にとって蔵書に直接触れることのできる施設であるとともに、情報探索を実現できる有用な施設であることは、この先も変わらないと思っています。

教育の中枢としての役割も強化

――早大学図書館としての使命は何だと思いますか。

 大学図書館は教育、研究の中枢です。従来、大学図書館は伝統的な価値観のもと、どちらかというと研究支援の面を重視してきました。

 ところが、個人的な話になりますが、かつて学部長として学部の学生の教育を真剣に考えていく中で、学部生が図書館を十分に学習上活用しているだろうかということを疑問に感じてきました。そのため、図書館のもつ一つの役割である学生や大学院生のための教育的機能をいっそう重視したいと考え、そのための組織的な対応を考えました。

 米国の大学では随分と前からこのことに気づき、学生や大学院生が図書館を十分に活用することが、教育の質の向上につながると認識して、大学図書館が運営されています。学部などと図書館が連携し、普段の授業の予習・復習、さらには自学自習に図書館が欠かせない存在になることが大切です。

 そこで、二つの大きな柱を立てて、図書館の教育的機能の充実に取り組んできました。一つは、学習支援という柱です。2年前に学習支援連携委員会を立ち上げ、図書館と各学部、大学院が連携し、図書館が持っている情報をより一層活用してもらうことを協議してきました。また、オープン教育センター、ITセンター、遠隔教育センター、国際部、ライティングセンターといった全学的な基盤教育を推進している部署とも連携しながら、学習支援を強化しています。具体的には、先行的なプログラムとして政治経済学部、文化構想学部、文学部、基幹・創造・先進理工学部においては、教員、助教、助手のみなさんとともに学習支援プログラムを企画し、1年生の演習などの授業を通じて、図書館データベースの活用などを啓蒙する活動を積極的に展開しています。

 もう一つの柱は、図書館サービスの充実です。2009年4月に総合閲覧課を改組し利用者支援課を発足させました。図書館職員全員が「アカデミック・リエゾン」として利用者・各学部などと図書館をつなぐという重要な役割を担います。レファレンス業務の充実はもちろん、学部や研究科における図書館情報リテラシーに関わる学習支援や研究支援に積極的に参画しています。利用しやすく、利用者のためになる図書館サービスを考え、開かれた図書館を目指しています。

図書館は大学の命

――大学図書館が抱える課題と対策についてお聞かせください。

 一つは、財政面での制約です。電子ジャーナルの普及に伴ってこれに要する経費も増大しています。図書館としてはさまざまに工夫して、有効な予算の執行にこれまで努めてきましたが、図書館が教育研究の中枢であるとの認識に立って、限られた予算をいっそう有効に活用するよう図書資料を収集することが課題になると思います。貴重書コレクションの充実は大学図書館のステイタスにつながっており、今後もそれは変わりがないと思いますが、図書館の蔵書は、社会全体の共有財産であるという認識に立って、図書館間の連携によって図書資源を共有・補完し合うように将来的にはなるでしょう。早稲田大学図書館はそういった意味では、多大な社会貢献ができると自信を持っています。

 もう一つの課題は、図書館職員の養成です。利用者支援、学習支援、研究支援といった大学図書館の多様な活動をトータルで見ると、図書館を支える人材にはさまざまな意味での専門性が必要です。そうした図書館業務に精通している若手人材の育成・養成が将来における課題になると考えています。

――加藤館長にとって、図書館とは何でしょうか。

 一言でいえば、図書館は大学の命です。館長の職についてからますます、図書館は大学の教育、研究の要であるという思いを強くしています。図書館で資料に接し、論文やレポートにこれを活用するという過程は、教員の立場からいえば非常に重要であると考えています。なぜならば、それは私たちの研究だけでなく、学生のみなさんの人間形成の上で資するところが大きいと考えるからです。学生たちがさまざまな情報を図書館で探索し学習成果や研究成果を獲得することで、大学の使命である「若者たちへの知の伝承」が可能になると考えているからです。学生時代にこの図書館で学んだ経験が社会に出て役立ち、校友になっても、図書館に戻ってきてくれたらこの上なくうれしいですね。

加藤 哲夫(かとう・てつお)/
早稲田大学図書館長 法学学術院・博士(法学・早稲田大学)

早稲田大学第一法学部卒業、同大学院法学研究科博士課程単位取得満期退学。専門分野は民事訴訟法、倒産法。02年法学部長就任、04 ~06年法学学術院長(学部長兼任)。06年より図書館長。法務省司法司験考査委員、日本学術振興会学術システム研究センター・プログラムオフィサーなどを歴任。現在、文部科学省科学技術学術審議会専門委員、国立情報学研究所(NII)客員教授、最高裁判所・下級裁判所裁判官指名諮問委員会(東京)委員などを務める。