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▼錦秋号

SPECIAL REPORT
Part.2

附属・系属校校長座談会

多様な環境で個性を育む中高一貫教育と高大連携の可能性

 附属・系属校のうち、来年中学部を開設する早稲田大学高等学院(以下高等学院)、関西で長い歴史を持ち、 今年から系属校として新しい一歩を踏み出した早稲田摂陵中学校・高等学校(以下早稲田摂陵)、来春、佐賀に開校する早稲田佐賀中学校・高等学校(以下早稲田佐賀)の各校長が集まり、各校の特色や中高一貫教育の狙い、大学との、また学校同士の連携に期待することなどについて、話し合いました。

同じ早稲田でも三校三様

矢口 本日はお集まりいただきましてありがとうございます。最初に各校の特色をご紹介ください。

山西 高等学院は、早稲田大学とともに長い歴史を刻んできましたが、新制以降60年の歴史を重ねました。自主自律の気風があり、それが時には生意気な生徒を育てることもありますが、いい意味で批判精神を持って世に自らの考えを示すことができるような人に育ってほしいと思っています。これは、混迷した時代に求められることではないでしょうか。

 当校の特色ある取り組みの一つに、必修の卒業論文があります。高校生も大学生も苦手なようですが、自分の頭で考え、議論し、言葉できっちりと表現ができるようになることを目指しています。そのためのカリキュラムを組んでいます。特に3年生の卒論の授業は1クラス約10名で行っています。

 また、教育内容をより深化させるため、来年、中学部を開設することになりました。高等学院に入学してくるものは優秀な生徒が多いのですが、それでもさまざまなタイプの子がいて、中学校の教育が大きく影響していることが分かります。そこで、ぜひとも自前の中学校教育をしてみたいと思っています。中学部では、基礎学力を確保し、高等学院の教育が十分生かされるような資質を持った生徒を育て、高校教育にも大きな刺激を与えたいと考えています。

 現在、高等学院では教科以外のクラブ活動や、社会情勢に合わせた国際交流プロジェクト、環境プロジェクト、模擬裁判プロジェクトなどのプロジェクト活動にも力を入れています。さらにはスーパーサイエンスハイスクール(SSH)として理数系教育でも魅力的な取り組みをしています。

藁谷 早稲田摂陵は、元々は日本の経済を根本から支えてきた繊維業界の方々が人材育成のために設立した大阪繊維学園の設置校で、47年の歴史があります。教育学部長を務めたり、教職大学院を立ち上げたりした経験を生かし、教育現場が抱える課題に応えられる学校にしたいと思っています。

 その課題の一つに関連しますが、早稲田摂陵に行って驚いたのは、敷地が2万3,000坪もあり、野球、サッカー、ラグビー、陸上が同時にできるグラウンドが2つもあるということです。都心の学校はスペースが限られていて、やれることに制限があります。大学の場合は、限られたスペースでも他大学とのネットワークで仮想のキャンパスを広げることができますが、中高はなかなかそうはいきません。面と向かってぶつかり合うことができる実空間が必要です。

 早稲田摂陵はこれまでも地域にしっかりと根ざした面倒見のいい学校と言われてきましたが、今後も一人ひとりの個性を大切にした教育をしたいと思っています。早稲田大学は全国からいろんな背景を持った学生が集まって切磋琢磨することで、大学の活力を生んできました。私は早稲田摂陵で、子どもたちのいろいろな個性に真剣に向き合いたいと思っています。

 校長になってから、地域の教育委員会や警察、消防署に挨拶にいくと、「藁谷さん、一緒にいい子を育てましょうね」と言われ、ぜひとも地域の力を子どもたちの教育に結びつけたいと思いました。ボランティアやインターンシップを通じた地域社会との関わりの中で、子どもたちが将来の進路を見出してくれればと思っています。また、社会との関わりを世界へも広げるため、国際理解教育に力を入れ、海外に2回修学・研修旅行に行きます。さらには、海外と行き来するいくつかのオプション、国際インターンシップ等を通して国際理解教育を深めたいと思います。

溝上 来春、いよいよ早稲田佐賀が開校します。地方で早稲田の名を冠するにあたって、早稲田大学が持っている理念を忠実に再現したいと考え、「学問の独立」「進取の精神」「地球市民の育成」を設立理念としました。これらの言葉の解釈でローカル色を出したいと思っています。

 まず「学問の独立」ですが、九州地区は国公立志向が非常に強く、医歯薬系志望者が多いという特徴があります。早稲田大学への推薦枠は50%ですが、残りの50%で国公立や医歯薬系への進学を後押しすることが、九州でトップ校として成り立っていくためには不可欠だと思います。オールラウンドな知識を持った子を育てるため、高校3年の12月まで全教科を学習するというスタイルをとり、高い学力と豊かな教養を身に付けさせたいと思っています。

 「進取の精神」については、学校生活や寮生活で起こるさまざまな軋轢を解決する中で、コミュニケーション能力を育み、何事にも躊躇なく取り組む子を育てたいと思います。トップの社会人になるためには、国際社会にも通用するコミュニケーション能力が不可欠だと思います。

 「地球市民の育成」については、帰国生の受け入れや留学生を送り出すことも含めて、多様な価値観に触れあう場を作り、中高生版の地球市民、幅広い価値観を持った子を育てたいと考えています。

じっくり学べる中高一貫教育

山西 廣司
早稲田大学高等学院長

矢口 高等学院に中学部が開設され、早稲田摂陵も早稲田佐賀も中高一貫教育です。世の中でも中高一貫教育の流れが進んでいますが、地域との関連も含めて、中高一貫教育についてどうお考えですか。

山西 3校とも中高一貫教育を行う背景は異なりますが、基本的には、6年間かけてじっくり生徒を育てていきたい、ということだと思います。同時に高校から新しい生徒が入学することも、多様化を図るという点で、意味があると思います。大学入試がなく、中高大、さらに大学院までの一貫教育ができるメリットは大きいですね。高等学院は首都圏の学校で、その地の利を生かしてさまざまな活動ができます。早稲田大学全体で見れば、学生の多様化という面で、関西、九州などから入試を経ずに進学してくる生徒がいることは、プラスになるでしょう。

藁谷 早稲田摂陵の募集人員は、中学入試が120名、高校入試が180名ですが、いずれ逆転させ、中高一貫校としての比重を大きくしたいと思っています。大阪では橋下府知事が公立校を重視していますが、これは私立にとってはチャンスであると考えています。公立校が充実すればするほど、逆に公立校にできないこと、早稲田摂陵ならではの教育がはっきりするからです。6年間を使って、私立校の理念に沿った教育をし、大学の資源を十分に活用していきたいと思います。

溝上 10年前に「ゆとり」という言葉が教育のキーワードとして広まりましたが、学力の低下を招きマイナスイメージがついてしまいました。しかし私は、中学校や高等学校の生徒にゆとりは必要であり、ゆとりの中でしか自ら考える力はつかないと考えています。能力のある子は理解力も高いと思いますので、大学で行われている最先端の考え方を注入することで、一つのことをじっくり掘り下げる経験を与えたいと思っています。一つのことを掘り下げると、とんでもなく広い世界が広がっているということを実感すれば、いろんな分野に興味を持つようになるのではないでしょうか。そうした機会を中高一貫の系属校の売りにしたいと思っています。

それぞれの良さを生かす共学校と男子校

矢口 高等学院は男子校ですが、早稲田摂陵は来年から共学化され、早稲田佐賀は最初から共学校です。共学校と男子校についてはどのようにお考えですか。

藁谷 友紀
早稲田摂陵中学校・高等学校長
早稲田大学常任理事、教育・総合科学学術院教授
経済学博士

山西 附属・系属校7校のうち2校が男子校で、女子校はありません。何もないところから初めて新しい学校を作るとすれば共学だろうと思いますが、既設の学校にはこれまでに培ってきた歴史と伝統があります。高等学院は男子校ですが、男子校には男子校のよさ、共学校には共学校のよさがあるので、いろいろな切り口があっていいのではないかと思います。男子校であり続けてほしいという同窓生の意見は多いです。大学全体としての多様性という視点もあるでしょう。

藁谷 私自身は福島の男子校出身ですから男子校の良さを知っています。早稲田摂陵の場合は、系属になる前から共学化の話は出ておりました。男子生徒、女子生徒は将来社会を構成するパートナー同士ですから、お互いを尊重し尊敬し合う生徒を育てたいと考えています。

 大隈さんは女子教育の大切さを強調しており、日本女子大学の創設準備委員会の委員長も務めました。第3代総長で文部大臣も務めた高田早苗も女子教育の重要性を力説しました。早稲田は1930年代に全学部が正規に女子学生を受け入れており、当時としては画期的なことでした。今や早稲田大学は現役の女子学生でみたとき、その数が一番多い大学です。また、男女共同参画推進室が設置され、あるいは地域開放型の保育園を設けたりなど、大学としての取り組みを進めています。そうした大学の姿勢を共学化の中で具体化していきたいと考えています。

溝上 私の経験から言うと、20年くらい前までは保護者面談で、うちの子は女の子だから、男の子だからという前提がつくことがよくありましたが、近年は学校教育の中で男女を意識することはなくなっているのではないでしょうか。社会全体を見ても、平準化していると思います。

食からメンタルまで安心できる寮生活

溝上 芳秋
早稲田佐賀中学校・高等学校長

矢口 早稲田摂陵と早稲田佐賀は寮を建設しますが、地域との連携ということも含めて、寮の考え方についてご説明ください。

藁谷 寮の子どもたちは、ボランティアやインターンシップを通して地域との関わりを持ち、その中で個性を育んでいってほしいですね。寮と地域との連携は大切です。保護者の皆さんは、子どもを預ける寮が、安心安全で教育施設として機能するかどうかを心配されていると思います。安心安全に関してはプロの手を借ります。子どもたちに規律正しい生活を身に付けてもらうために、掃除当番もあります。そして、教師が責任を持って夕食後の勉強を習慣づけます。また近くの大阪大学医学部の学生に手伝ってもらい、お兄さんお姉さん的な存在としてメンタル面のフォローもしてもらいます。もちろん、保護者と学校の情報共有にはしっかり力を入れていきます。

溝上 寮と地域の結びつきについては、藁谷先生が言われた通りだと思いますが、少し視点を変えると、本校では食について地域との結びつきがあります。大きな産業がない地域にいきなり600人規模の寮ができるため、黒船が来たと言う人もいるくらいです。唐津市役所等が協力してくださり、入寮する子どもたちに地元の新鮮な食材を提供してくれることになりました。食は生きる上で一番大切なことです。子どもたちは、唐津の寮で食べたおいしい食事を卒業してからも時々思い出すでしょう。食は本当に大きな力を与えてくれると思います。

遠くの学校同士の連携にも期待

矢口 本学の附属・系属校としては、今日お集まりいただいた学校以外にも、早稲田大学本庄高等学院、早稲田実業学校、早稲田中学校・高等学校、早稲田渋谷シンガポール校があります。附属・系属校の一つの課題として、早稲田として横のつながり、高大連携についてお考えのことをお聞かせください。

矢口 徹也
早稲田大学教務部副部長
教育・総合科学学術院教授、 博士(教育学)

山西 大学との連携については、高等学院ではすでにいろいろなことをやっていて、これは在京の利点かもしれませんが、法学部の授業を先取りしたり、理工学部の先生が授業をしたりします。それ以外にも卒業生が学部ごとに懇談会を開いて後輩たちにアドバイスをしたりするなど、さまざまなチャンネルで高大連携が行われています。横のネットワークは、これまでにも各種クラブ活動で早稲田系の各校が集まる試合や、早慶の附属・系属校が集まる活動などが行われたりしています。生徒の場合だけでなく教員もそうでしょうが、距離的にも離れているところとの交流を考えれば、web上でつながりを作っていくことなどできるでしょうね。それぞれの学校の背景がかなり違うので、横だけでなく、縦にも斜めにも、いろいろありえるでしょう。学校がひとつの学校だけで閉じている時代ではないと思います。

藁谷 今回の合同説明会(9月13日に附属・系属全7校で初開催)もそうですが、実際にはいろいろな場面ですでに連携しております。JST(科学技術振興機構)の教育プログラム「未来の科学者養成プログラム」「デジタル化教材活用プログラム」など、附属・系属校と大学の連携は、具体的に進んでいます。まずはそれを大切に一層の展開をはかりたいと思います。それから、生徒間の連携だけでなく、情報交換やスキルアップなど、教職員の連携も進めていきたいですね。

溝上 来年本校で採用する教職員に聞いたところ、若い人は特に教職員間の交流を望んでいます。生徒のほうも2週間くらい学校をチェンジするというアイデアも浮かんできますし、保護者からは九州から東京に転勤する場合、同じ早稲田の附属・系属校に転校できるかという質問もありました。学校間の壁が低くなれば、もっといろいろな可能性が生まれてくると思います。

矢口 藁谷先生がおっしゃるように、教員養成も大きな課題ですね。教員免許更新制度や教員養成課程の修業年限についてもさまざまな議論がありますが、縦横の連携によって教員育成の課題にも対応できると思います。もちろん、子どもたちへのサポートにおいても、附属校・系属校の連携にはいろいろな可能性がありそうですね。それぞれの学校の価値を高めながら、日本の教育の将来のために力を合わせて頑張りましょう!

 本日はありがとうございました。

(9月13日 大隈会館にて収録)

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