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▼錦秋号

SPECIAL REPORT

早稲田が目指す中高一貫教育と高大連携

 近年本学は、附属・系属校の拡充、連携強化を図っています。その背景と意義をお伝えするとともに、連携により生み出される、新たな“早稲田力”の可能性を考察します。

Part.1

早稲田大学向上のために

 本学が附属・系属校を拡充する背景と意義について、教務担当である土田常任理事に聞きました。

個性豊かな附属・系属校が大学に多様性を与える

7つの附属・系属校で個性豊かな独自の教育を展開

土田 健次郎(つちだ・けんじろう)早稲田大学常任理事 文学学術院教授 略歴はこちらから

――最初に、附属校と系属校の違いをご説明ください。

 附属校は早稲田大学と同一法人、系属校は別法人となっており、附属校は早稲田大学へは全員が進学しますが、系属校は早稲田大学への推薦入学率は学校によって異なります。例えば、100年以上の長い歴史を持つ早稲田実業はほぼ100%となっていますが、それ以上に古い早稲田中高は50%で、推薦入学と受験の両方の選択肢が用意されています。

 また、高等学院と早稲田中高は男子校ですが、それ以外は共学ですし、小学校からある学校もあれば、高校のみの学校もあり、ひと口に附属・系属校と言ってもさまざまなバリエーションがあります。それぞれカリキュラムにも独自の工夫があるため、その中から、早稲田以外の大学を受験するかどうかも含め、自分に合った学校を選ぶことができます。

――今年は大阪の摂陵中高が系属校となり、来年は早稲田佐賀中高が開学します。大阪、佐賀の地方展開の背景と狙いは何でしょうか。

 もともと早稲田大学は全国各地から学生が集まる大学でしたが、受験勉強環境の地域的格差の広がりなどもあり、最近では7割近くが関東圏出身の学生です。そこで大阪と九州に系属校を設置し、地方を重視する早稲田大学の伝統の復活を図りました。

 多感な中高生時代に過ごした環境は、人間形成に大きな影響を与えます。さまざまな地域で育った学生が共に学ぶことは、大学に多様性を与え、その魅力を向上させるでしょう。私自身は東京で生まれ育ちましたが、大学に入って初めて、他の地域出身の友人を得ることができました。

――来年には高等学院の中学部が開学しますが、中学と高校を展開するメリットは何でしょうか。

 6年間を通して、一貫した方針で教育ができることです。中高の6年間は学力、体力、精神力といった人生の基礎力が培われる時期です。この期間に高校受験の受験対策に追われず、地に足をつけた教育をすることは、大きな意味があるでしょう。

 例えば、早稲田佐賀中高は半数が早稲田大学に推薦入学し、半数が受験で他大学等へ進学しますが、中高の6年間を2年ずつ「基礎力養成期」「応用力養成期」「実践力充実期」に分け、きちんと段階を踏んでどの進路を選んでも通用する学力を磨きます。このようなことは、高校の3年間だけではなかなか実現することができません。高校から入学する生徒に対しても、中高一貫組に刺激を与える存在になってくれることを期待しつつ、早い時期に中高一貫の校風になじませるような指導を行います。

大学の研究と教育の水準を向上させることが大前提

――大学、附属・系属校の連携はどのように行われているのでしょうか。

 昨年から、大学とすべての附属・系属校の代表者が集まって、大学と附属・系属校の関わり方や、附属・系属校同士の交流について、忌憚なく議論する会議を始めました。現場で教鞭を執る先生が参加し、有意義な意見交換が行われています。

――高大連携についてはいかがでしょうか。

 大学側にとってのメリットは、優秀な学生を確保するために、附属・系属校の教育に関与できることです。大学の教員が中高に出向いて講義や理科実験を行ったり、高校生に大学の講義を聴講させたりすることはもちろんですが、大学側が求める要素を中高のカリキュラムに盛り込めることが何と言っても魅力です。そのためには大学側も学部レベルで、中高の現状についての認識を深め、中高側からの意見や要望に耳を傾けなければなりません。縦のつながりを強化し、生徒が自分にあった学部に進学できるように、密な連携が行われることを期待しています。

――系属校が増えると多様なルートから学生を受け入れることになります。大学の受け入れ体制は整備されているのでしょうか。

 本学では、附属・系属校に限らず、指定校推薦、AO入試、自己推薦入試、帰国生入試など、さまざまなルートで新入生を受け入れています。そのため、入学時の学習水準にも差が生じる可能性があり、初年次教育を充実させることが必要です。そこでそれに対応すべく、英語力を強化する「チュートリアルイングリッシュ」を拡大し、新たに「学術的文章の作成」、「数学基礎プラスα」といった科目を新設して、全学基盤教育を拡充しています。

 附属・系属校をただ増やすだけでなく、大学自身が研究と教育の水準を上げていかなければ、全体の質は向上しません。それぞれの附属・系属校の位置づけを再認識し、組織的に連携することで、早稲田大学の向上を実現したいと考えています。

土田 健次郎(つちだ・けんじろう)/早稲田大学常任理事 文学学術院教授

早稲田大学第一文学部卒、同大学院文学研究科東洋哲学専攻単位取得退学。博士(文学)。日本中国学会賞、東方学会賞を受賞。主な研究テーマは、中国宋代思想、日本江戸時代思想。