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▼盛夏号

SPECIAL REPORT

「早稲田文化」創造と発信

 大学が所蔵する文化資源を教育研究に有効に活用するとともに、広く社会に公開することは本学の大きな使命となっています。「早稲田文化」を創造し、世界に向けて発信する意義と新たな取り組みについてお伝えします。

Part.3

山根基世さん キャンパス内博物館一日探訪

文化発信の新しい形を牽引する

 今、本学では各界の文化人、学生、地域社会と連携をとり、文化発信の新しい形をつくろうとしています。秋に行われる「フォトジャーナリズム・フェスティバル」はその取り組みのひとつ。その概要と目指すものをお伝えします。

次世代を育てるフォトジャーナリズム・フェスティバル

フェスティバルでは、DAYS JAPANのフォトジャーナリズム関連写真の展示も。写真は第5回DAYS大賞1位「ケニア選挙後の混乱」(撮影:ワルテル・アストラーダ【AFP】)

 今秋、本学とDAYS JAPAN共催により、フォトジャーナリズム・フェスティバルが行われます。現場のジャーナリストの仕事に触れながら、メディアの状況、未来についても考え、次世代を担うジャーナリストを育てる機会とするのが目的です。また、本フェスティバルでは、長いジャーナリズムの歴史と、日本唯一のジャーナリズム大学院を有する教育機関である本学の活動も紹介します。

 これまで大学の各学術院と箇所が行っていたジャーナリズム活動を一元的に情報発信し、その力を結集させることも文化推進部の重要な役割です。今回のフェスティバル開催で道筋をつくり、今後各種の複合的なイベントも継続的に行っていくことを視野に入れています。世界で何が起こっているか、人々に何を伝えるべきなのか、を問う本フェスティバルは、同時に世界に向けた文化発信が重要な使命である本学の文化事業の意義も担っているのです。

フォトジャーナリズム・フェスティバル
INFORMATION

■開催期間
コア期間2009年11月22日~12月5日(全体:2009年10月~2010年2月)

 コア期間には毎日各種イベントを開催。展示は「地球の上に生きる2004~2009『DAYS 大賞の5年』」、「広河隆一『人間の戦場40年』―核と中東問題」など学内各所にて開催。ほか「大スライドショー」、「音楽とジャーナリズムのコラボレーション」、「上映会」、「講演会・シンポジウム」、「ワークショップ等活動報告」、など多数企画。詳細は今後ポスター、チラシ、ウェブサイト「早稲田文化」などで告知。

問い合わせ先
TEL:03-5272-4783(文化推進部文化企画課)

『DAYS JAPAN』編集長 広河隆一さんに聞く

命をかけても伝えたい世界の真実

 今回、早稲田大学でフォトジャーナリズム・フェスティバルを共催できることをとても嬉しく思っています。フェスティバルでは、世界最大のフォトジャーナリズム・フェスティバルであるフランスのペルピニヤン世界報道写真祭でも目玉となっている大型スクリーンでのスライドショーを大隈講堂で開催するほか、ジャーナリズムと音楽のコラボレーションによるコンサートなど、たくさんのプログラムを用意しています。展覧会では、気になった作品と時間の許す限り対話し、自分が生きている社会で何が起きているのかを知り、そして、自分にできることは何かということを考えるきっかけにしていただければと思います。多彩な方法で、世界の真実を伝え、ジャーナリズムの危機を問いかけたいと考えています。日本最大級の規模になりますが、これは早稲田の懐の深さであり、ジャーナリズムに関しては譲れないという強い思いによるものではないでしょうか。

6月11日文化構想学部表象・メディア論系主催で行われた、広河隆一氏講演会「戦争とフォトジャーナリズム」で、学生の質問に応える広河氏。写真・坂内 太(文学学術院専任講師)

 私がフェスティバルを通して伝えたいことは、フォトジャーナリストが命をかけても伝えようとした世界の真実です。『DAYS JAPAN』がフォトジャーナリズムの発展のために実施している「DAYS国際フォトジャーナリズム大賞」が対象としているのは、人間と自然の尊厳が脅かされていることを告発する作品、人間と自然の尊厳を謳い上げる作品です。状況に対する理解と責任を持って、常に被害者の側に立って写真を撮り、発表することがフォトジャーナリズムだと考えるからです。しかし現在は、そうしたジャーナリストのアイデンティティが希薄になり、本当に大事なことが伝えられず、私たちは、この国がどちらの方向に進んでいるかさえ分からない状況になっています。

 フォトジャーナリストになりたい方だけでなく、世界で何が起こっているかを知りたい方、これから世界を舞台として仕事をしたい方など、一人でも多くの方に足を運んでいただければ幸いです。

広河 隆一(ひろかわ・りゅういち)さん

1967年早稲田大学教育学部卒業後、イスラエルに渡る。帰国後、中東問題と核問題を中心に取材を重ね、1982年レバノン戦争とパレスチナ人キャンプの虐殺事件の記録で、IOJ大賞受賞。2002年『パレスチナ 新版』(岩波新書)で第2回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞、2003年に土門拳賞など数多くの賞を受賞。2004年にフォトジャーナリズム月刊誌『DAYS JAPAN』を創刊する。

社会に開かれた「早稲田文化」へ

 本学では、「早稲田文化」を広く発信していくために、地域や各界の文化人の方々と連携を深めていこうとしています。「早稲田文化」の創造と発信には何が必要なのでしょうか。3人の文化人の方から本学へのメッセージをいただきました。

「早稲田文化」をつくることが日本、アジアの文化につながる

青木 保(あおき・たもつ)/文化人類学者・前文化庁長官

 大学は社会において文化の拠点のひとつであるという意識を、日本の大学はもっと強く持たなくてはなりません。早稲田大学は、近代日本文化を背負う人材を多数輩出していますから、まさに文化的拠点の一つとして、その「創造の軌跡」をもっと広く開かれた形で社会に示していく必要があるでしょう。 それには、音楽や映画や演劇など、さまざまなパフォーマンスに対応できる多機能なシアターを持つといいですね。現在は大学のいろいろな箇所で文化活動が行われていますが、その力が散在していて外から見えにくい所がある。文化発信の中心地となる文化空間を造ることで、社会全体にも大きな影響を与えるはずです。

 オックスフォード大学やケンブリッジ大学を例にすると、これらの大学は、言葉、ファッションなどあらゆる面において、イギリス文化の基礎を形成しています。ハーバード大学やエール大学にしても、独自の文化的な世界を展開している。それらと同様に早稲田にも、早稲田独自文化の世界を展開できる文化的特色がもっとあるはずだと思います。今後、大学の発展のためにも、文化研究という面だけでなく、「早稲田」という文化をつくる。それが日本の文化でもあり、アジアの文化でもあり、グローバルな世界の文化にも通ずる。そういった構想を強力に進めていかれることを心から期待しています。

青木 保(あおき・たもつ)/文化人類学者・前文化庁長官

1938年東京生まれ。東京大学大学院修了。大阪大学で博士号取得。大阪大学教授、東京大学教授。早稲田大学アジア研究機構教授などを歴任。その間、米ハーバード大学客員研究員、仏国社会科学高等研究院客員教授、独コンスタンツ大学客員教授などを務めた。1965年以来、アジアでフィールドワーク研究に従事。日本民族学会(現文化人類学会)会長(1994-96)。同学会名誉会員。2007年4月~09年7月、文化庁長官。サントリー学術賞、吉野作造賞、紫綬褒章などを受ける。

日本を知り、世界を知り、国際化へ

阿刀田 高(あとうだ・たかし)/作家・日本ペンクラブ会長

 知的なリーダーとして、日本文化のすばらしさ、その独自性を認識してほしい。広く知り、そして一つか二つ、例えば歌舞伎とか鎖国の意味とか、深く語れるものを培ってほしい。21世紀は国際化の時代であり、国際化とは、まず自国を知り、次いで他国を知り、それを融合させていくことにほかならない。キャンパスで過ごす年月が、この方向性を培うものであってほしいと願う。

 私が代表を務める日本ペンクラブは、来秋、四半世紀ぶりの国際ペン大会を東京で催す。テーマは「環境と文学―今、何を書くか」である。早稲田大学の共催を得て、このキャンパスで内外の文学者のさまざまな参加が企画されている。学生諸君の助力と参加を期待したい。こういう国際的な集まりにもどうか広く慣れ親しんでほしいと願う。

阿刀田 高(あとうだ・たかし)/作家・日本ペンクラブ会長

1960年早稲田大学第一文学部卒業。国立国会図書館に勤務しながら執筆活動を続け、1978年『冷蔵庫より愛をこめて』(講談社文庫)でデビュー。1979年短編『来訪者』で日本推理作家協会賞、短編集『ナポレオン狂』で直木賞、1995(平成7)年『新トロイア物語』(以上講談社文庫)で吉川英治文学賞を受賞。他に『シェイクスピアを楽しむために』(新潮文庫)『プルタークの物語』(潮出版社)など著書多数。本学文化推進部アドバイザリーコミッティ委員

坪内逍遙の志を伝え、演劇を創造し開拓する場を

野村 万作(のむら・まんさく)/狂言師

 08年11月に本庄市と早稲田大学との共催で行われた「本庄早稲田能」では、息子の萬斎と親子の役で「二人袴」を演じました。また、09年5月には、中国・北京大学で狂言を演じる機会があり、どちらも「こんなにも興味を持って狂言を見てくださるのか」と感激しました。早稲田大学と本庄市、また北京大学との深い交流を土壌に、「狂言」を紹介できたことに、ご恩を感じています。

 日本も中国も同じ東アジアの国として、伝統劇に共通性を持っています。北京での公演を経て、夫婦愛や、神への畏怖、人と人はどうあるべきかなど、日本人の創ったテーマを笑いを含みながら伝えるという伝統芸能「狂言」を、もっと世界に発信していく必要があると私自身も感じています。

 早稲田には、演劇博物館や演劇の専攻もありますが、それらは学問をする人たちの場。実践の演劇の場は、サークル活動のみというのが現状です。早稲田が輩出したさまざまな分野で活躍する方の知恵と、学問の蓄積、大学が所蔵する膨大な文化資源を用いて、新しい演劇を創造し開拓する「創造演劇学科」といった物ができたらいいのではないでしょうか。

 これは夢ですが、「世界を視野に入れる」という理念のもと、演劇博物館を創設した坪内逍遙の志を伝え、より具体的に発信していってほしいと願っています。

野村 万作(のむら・まんさく)/狂言師

1953年早稲田大学第一文学部卒業。重要無形文化財各個指定保持者(『人間国宝』)。祖父故初世野村萬斎及び父故6世野村万蔵に師事。「万作の会」主宰。狂言の秘曲である『釣狐』の演技で芸術祭大賞を受賞した他、紫綬褒章、坪内逍遙大賞など多くの受賞歴を持つ。また、2002年には早稲田大学芸術功労者表彰を受ける。国内外で狂言普及に貢献し、ハワイ大、ワシントン大では客員教授を務める。古典はもとより新しい試みにもしばしば取り組み、代表作に『月に憑かれたピエロ』『子午線の祀り』などがある。著書に『太郎冠者を生きる』(白水社Uブックス)、『狂言三人三様・野村万作の巻』(岩波書店)がある。

EVENTS・企画展示INFORMATION

今夏~秋にかけて行われるEVENTや企画展示などの予定をご紹介します。「早稲田文化」の門はすべての方に開かれています。ぜひ、足をお運びください。

大隈記念講堂

「感劇・環境」―“演劇”が喚起する地球環境への感性と国際交流―

日時:11月4日(水)13:30~19:00
永井多恵子氏と井上ひさし氏を迎え、演劇を通して地球環境の問題を考える。

「生命のコンサート」―ジャーナリズムと音楽のコラボレーション―

日時:11月23日(祝)15:00~18:00
立松和平氏と広河隆一氏による講演。チェルノブイリ被害者で歌手のナターシャ・グジー氏、アイヌ歌手酒井美直氏、作曲家青柳拓次氏らが生命の尊厳を称えて歌う。

小野記念講堂

学生演劇公演

日時:10月3日(土)・10月31日(土)(予定)
13:00・17:00開演
みのかも文化の森で野外劇を市民に披露してきた劇団「森」とフィクション世界で夢を語る劇団「おぼんろ」による学生演劇。

問合せ先:早稲田大学文化企画課 TEL:03-5272-4783

国際研究集会「映画におけるジャポニズムとオリエンタリズム」

日時:11月9日(月)・10日(火)(仮)
演劇博物館に所属する研究員と海外からの招聘講師による研究発表と討論。

問合せ先:演劇博物館 グローバルCOE TEL:03-5286-8110

坪内博士記念演劇博物館

「現代演劇シリーズ第34弾 太田省吾展」(仮)

日時:9月20日(日)~2010年2月5日(金)
劇作家・演出家太田省吾の舞台写真や自筆原稿を通じて太田の劇世界を振り返る。

日本フェノロサ学会第30回年次大会記念「『鷹の井戸』を廻る輪舞曲(ロンド) フェノロサと能」(仮)

日時:9月25日(金)~10月16日(金)
フェノロサの死後発見された草稿から生まれた創作能『鷹の井戸』。本年、日本初演から70年を記念し、フェノロサと能を巡る企画展を開催。

「新派120周年記念~館蔵品でたどる新派歴代名優展~」(仮)

日時:10月1日(木)~11月15日(日)
新派121年目の新しい一歩を記念して、新派劇の歴史をたどる。

問合せ先:演劇博物館 TEL:03-5286-1829

會津八一記念博物館

サムライの美学 ―甲冑師明珍宗恭とそのコレクション―

日時:9月24日(木)~10月18日(日)
概要:2007年に甲冑師・明珍宗恭氏から寄贈された日本の甲冑資料を中心に、明珍氏の業績を紹介。

問合せ先:會津八一記念博物館 TEL:03-5286-3835

大学史資料センター

秋季企画展 西村眞次と早稲田史学

日時:9月28日(月)~11月8日(日)
会場:大隈記念タワー10階 125記念室概要:早稲田大学史学科の礎を築き、文化人類学を開拓した西村眞次の業績を追う。

問合せ先:大学史資料センター TEL:03-5286-1814