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▼新緑号

SPECIAL REPORT
Part.2

学部の垣根を超えて学ぶオープン科目の可能性

21世紀社会に対応するため、総合大学としての特色を生かして、学部の枠を超えた総合的かつ多様な教育を実現することを目的に設置されたオープン教育センター。本学の重点教育事業のひとつとして、ますますその役割が大きくなっています。同センターが提供するプログラムについて、その可能性を探ります。

全学共通のオープン科目で、より広がりのある「知」の世界へ
選択肢は3,000以上

 多様な教育・研究機関によって構成されている早稲田大学。2000年12月に設置されたオープン教育センターは、学部ごとの独自性をもつ“ローカル”な領域と、全学を横断する“グローバル”な領域との連携を図るべく事業展開をしてきました。

 同センター独自の設置科目のほか、各学部、研究科、他大学との連携により提供される全学共通のオープン科目は現在3,000以上。どの学部に所属する学生でも学年や専攻分野にとらわれずに履修できます。さらに、社会との接点をもたらす社会連携講座などで、実社会に対応できる力、目線を養うなど、学びのスタイルは自由自在。好奇心と学びへの意欲で、「知」のユニットを自己編集できるのです。

学際的なアプローチを修得

 講義科目では、広範な教養を身に付けられる、時代に即したテーマに触れることができ、1つのテーマに多面的にアプローチする方法を修得します。

自分の目と足で深める国際理解

 早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)と連携して運営する科目をはじめ、海外で実習しながら学ぶ海外実習科目も充実しています。

実践に強い語学力を獲得

 国際コミュニケーション能力を高めるため、レベルや目的にあったプログラムを開講。少人数制のグループレッスン、リアルタイムで行う海外とのゼミや授業までステップアップします。また、アイヌ語やアイルランド語などの多様な言語科目は、日本では学ぶ機会が限られている言語を学べる貴重な場です。

4万人の個性に火をつける!
「第2の強み」を育むテーマスタディ(全学共通副専攻)とは

 自分が所属する学部の主専攻とは別に、もう一つの専門分野を持てる副専攻制度「テーマスタディ」。テーマスタディ設置の目的、学生にとってのメリットとはどんなことなのでしょうか。また例として、2つのテーマスタディについて、そのテーマを学ぶことで、学生に得てもらいたいことなどをお聞きしました。多彩なオープン科目の中から自分で戦略的かつ体系的に学び、知の開拓をする、「第2の強み」を育むための本学の取り組みをお伝えします。

早田 宰(そうだ・おさむ)早稲田大学オープン教育センター教務主任 略歴はこちらから

魅力ある人間形成のために「引き出し」を増やす

早田 宰/早稲田大学オープン教育センター教務主任 社会科学総合学術院教授

伝統と総合力を活かした制度

 テーマスタディは、設置されている20コースのうち一つを自分の副専攻にできる制度です。オープン科目群の中から、各コースが指定しているコア(必修)科目と選択科目を選んで修得することで、既存の学問にとらわれないユニークなテーマを学べます。早稲田大学ならではの伝統と総合力を活かした制度と言えるでしょう。

 設置の目的は、主専攻の他に「第2の強み」を持ってもらうことです。社会で戦っていく上で、主専攻は言わば「剣」のようなもの。一方で、副専攻はその人の持つ強みを補強するものとして、「盾」の役割を果たしてくれます。さまざまな引き出しを多く持つ人は、心に余裕があって魅力的です。

 選択するメリットは、社会で自らのブランド力を戦略的に構築できること。大学入学後、学部と全学を見渡して、ある学問分野に興味を持ち、深く学びたくなる学生も多くいます。そんなときに、テーマスタディで学んでおけば、社会へ出て大学での専攻について問われたときに、ただ漫然と授業を受けている学生とは違うと判断されるでしょう。「学問に対して真摯に取り組む姿勢」がきっと評価されるはずです。

教育の原点の場として

 教授の「教えたい」欲求と学生の「学びたい」欲求が合致するのが、教育の原点。現在、教授たちの間では自発的にコース開拓をする動きがあり、さまざまな新しい学問が生まれつつあります。学生たちにも、その潮流に乗って一歩踏み込んだナレッジの開拓をしてもらいたい。そして、一人でも多くの学生が人としてのスケール感を身につけ、社会に羽ばたいてほしいです。

早田 宰(そうだ・おさむ)/早稲田大学オープン教育センター教務主任 社会科学総合学術院教授

早稲田大学政治経済学部卒、同大学院理工学研究科建設工学専攻博士課程単位取得満期退学。東京都立大学工学部助手、早稲田大学社会科学部専任講師、同助教授を経て、2002年より教授。都市計画・居住環境論を専門とする。工学博士。

多賀 秀敏(たが・ひでとし)早稲田大学社会科学総合学術院教授 略歴はこちらから

PickUP! 1 テーマスタディ事例紹介〈平和学〉

インターンシップ実習で「現実を動かす」経験を

多賀 秀敏/早稲田大学社会科学総合学術院教授

 「平和」とは「戦争のない状態」――多賀教授はその一般的なイメージに異論を唱えます。「インドの学者が言いました。インドでは戦争はないのに、貧困で人びとが道端で倒れて死んでいる現実があると。戦争はなくとも、これでは平和とは言えませんよね。『平和』の反対、『平和ならざる状態(Peacelessness)』です」

平和学では、現場での学習を重視。世界の現実を見ることで、広い視野を身に付けることが目的です。(タイ・チェンマイでの実習の模様)

 『平和学』とは平和の条件を科学的に検証して実現する学問のこと。戦争だけでなく、貧困、環境、ジェンダー、人権など、さまざまな問題を相関的に考えることで、真の平和とは何なのかが見えてきます。多賀教授は20代の頃から世界各国で児童労働、差別、紛争、スラム、難民キャンプなど厳しい世界の現実を目の当たりにしてきました。「『平和学』を学ぶには、実習が不可欠。学生たちにも若いうちに世界の現実をみてほしい。テーマスタディには講義、演習だけでなくインターンシップ実習を指定科目に含めることができるので、三位一体の授業ができる。『平和学』を学ぶのにぴったりの制度です」

 昨年度も、越境労働、開発や環境保護の現場のフィールドワーク、国際協力の資金調達のためのバザーなどさまざまな実習を行いました。「世界で大学に行けるのは100人のうちたった3、4人。大学生活は貴重なのだから、実習でぜひ『現実を動かす』経験をしてほしい。『世界の現実は修正可能』と分かれば、自分の半径5mでしか物事を考えない人にはならない。もっと豊かな感性を身につけられると思います」

多賀 秀敏(たが ひでとし)/早稲田大学社会科学総合学術院教授

早稲田大学法学部卒。同大学院法学研究科博士課程単位取得退学。新潟大学法学部教授などを経て、96年から現職。外務省PKO調査や、ネパール国政選挙国際選挙監視団などの活動のほか、ストリートチルドレンの支援などにも積極的にかかわっている。

学生の声 副専攻として学ぶ意味
自分には何ができるのか。実践的な平和学を学びたい

金子 愛さん/社会科学部4年

「何か国際的なことを学びたい」漠然とそう思って入学し、出会った科目が平和学でした。平和学は国際的な視点からさまざまな分野を学べるのが魅力です。テーマスタディには、理論のほか現場を知る科目が揃っているので、一言ではとらえきれない平和学を、バランス良く、幅広く学べるところが良いと思います。

 これまでに10科目以上受講してきた中で最も印象に残っているのは、昨年インターンシップ実習で参加した、タイへの調査・研修旅行です。チェンマイ大学の学生とともに少数民族や国境問題について現場で学びました。島国日本に住む私にとって、生まれて初めて国境線に立ったときの感動は忘れられません。何の変哲もないひっそりした山奥にそびえる柵が持つ緊張感が伝わってきました。実習のテーマ以外にも、現地に行くことで教室にいてはわからないタイの風土や文化を体感しながら学ぶことができました。

 これからは今まで学んできたことを踏まえて、自分には何ができるのかを考え、より実践的な平和学を学んでいきたいと思っています。

PickUP! 2 テーマスタディ事例紹介〈戦略的環境研究〉

環境を学ぶことは、人間が社会でどう生きるかを考えることにつながります

吉田 徳久/早稲田大学理工学術院大学院環境・エネルギー研究科教授
友成 真一/早稲田大学理工学術院大学院環境・エネルギー研究科教授

左)吉田 徳久(よしだ・とくひさ)早稲田大学理工学術院大学院環境・エネルギー研究科教授 右)友成 真一(ともなり・しんいち)早稲田大学理工学術院大学院環境・エネルギー研究科教授 略歴はこちらから

 環境問題は、その言葉を聞かない日はないほど、現代社会に生きる私たちの最重要テーマです。しかし、その捉え方は百人百様で、最も関心が高い地球温暖化問題を研究する上でも、科学、政策、経済などさまざまなアプローチが必要です。

 吉田徳久教授は、そうした環境というテーマをこう表現します。

 「環境は、あまりにも多面的な要素を持つテーマで、大海原のようにむやみにこぎ出すと迷子になってしまいます。しかし、航海図で全体像を俯瞰した上で、行きたい場所(知りたいこと)を決め、航海術(研究の道筋)を身につければ、無事に航海することができます。ここでは、さまざまな専門分野を持った教師が講義やゼミ形式の授業を通じて航海術を伝授します。また、環境問題は、結論が出ていないことがほとんどですが、先人がどこまで議論してきたかを教えることで、学生たちの研究を指南しています」

「環境を経営する」授業での学生発表風景

 さらに友成教授は、環境を学ぶことは環境問題を理解するだけにとどまらない深みがあると指摘します。

 「環境問題は社会問題の一つですが、逆に、いろいろな社会問題が環境問題という現象に表出しているとも言えます。ですから、環境という切り口を通して経済、政治、外交なども学ぶことになり、さらに結果的に人間としての生き方そのものを考えることに行き着くのです」

 両教授は、学生たちが環境を学ぶことを通して身につけた知恵を持って、卒業後にさまざまな立場で次の社会を作っていってほしいと願っています。

吉田 徳久(よしだ・とくひさ)/早稲田大学理工学術院大学院環境・エネルギー研究科教授

東京大学理学部地球物理学科卒業。東京大学大学院理学系研究科地球物理学専門課程(修士)修了。環境省環境管理局水環境部長等を経て07年より現職。サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)の早稲田大学内コーディネートを務めるほか、国及び地方公共団体における環境施策展開の社会的な背景の分析に関する研究等を行う。

友成 真一(ともなり・しんいち)/早稲田大学理工学術院大学院環境・エネルギー研究科教授

京都大学大学院工学研究科修了。通商産業省(現経済産業省)入省。通産省ロシア東欧室長、国土交通省企画官等を経て07年より現職。エネルギー政策、地球環境政策、地域経営、行政経営、自分経営、プロジェクトマネジメントを駆使した、エネルギー・環境プロジェクトの現場での展開に関する研究を行う。

学生の声 副専攻として学ぶ意味
自分のフィールドを決め役割を認識する

吉見浩一郎さん/理工学部4年

 私がテーマスタディ「戦略的環境研究」のプログラムの中で学んだことは、環境問題に取り組む場合には自分の強み、軸となる専門分野を持っておくことが重要だということです。

 私は大学に入学する前から、将来は環境問題に従事したいと考えており、大学ではさまざまな環境問題について学んでみたいと考えていました。ですが、所属している学科で学べることは社会問題としての環境問題についてではなく、理論や技術に関する内容のものでした。当時の私は一分野に絞らずにもっと幅広い知識を身につけたいと考えており、このプログラムに参加することにしたのです。

 しかし、受講した感想は、環境学はあまりにも広く一人では到底学びきれないというものでした。その時に、環境問題に取り組むには自分のフィールドを定め、自分の役割をしっかり認識することが重要だということを理解したのです。また、そうすることで他の分野にも逆に接しやすくなるということも知りました。

 私は今、数ある領域の中で「気象」に関心を持っています。来年度大学院に進学してしっかりとした実力をつけ、それを軸に幅広い知識を身につけ、環境問題の解決に活かしていきたいと考えています。