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キャンパスナウ

▼3月号

SPECIAL REPORT
Part.3 - Symposium

社会貢献で大学生は育つのか

 1月29日、WAVOC主催のシンポジウムが開催されました。WAVOCで活動する学生がそれぞれの活動を通じて自らが何を感じ、どのように変わったのかについて発表したほか、パネルディスカッションが行われました。ここでは、メディア、企業、大学行政、大学のそれぞれの立場から有識者をお招きし、「社会貢献で大学生は育つのか」というテーマで展開されたパネルディスカッションのダイジェストをご紹介します。

WAVOCは、学生だけでなく大学そのものも育てている

左から
コーディネーター
朝日新聞社 ジャーナリスト学校事務局長
五十嵐 浩司氏

パネリスト
三菱自動車工業株式会社 アドバイザー・前常務
張 不二夫氏

文部科学省 高等教育局大学振興課 大学改革推進室長
今泉 柔剛氏

早稲田大学 常任理事 WAVOC副所長 政治経済学術院教授
堀口 健治氏

五十嵐 学生の発表を見て、図書館にこもって文字を読むという従来の学習とは違う可能性を感じました。本日は、大学が学生をどのように育てていくのか、その中で大学生の社会貢献活動がどのように社会に還元されるのかということについて語り合っていきたいと思います。最初に学生発表のご感想をお聞かせください。

 学生たちの発表から、それぞれの活動を通じて自分たちが何を感じ、どのように変わったのかを知ってほしいという意志がひしひしと伝わりました。また、学生の自主性を尊重しながらも、先生方のご指導、環境づくりがあって、プロジェクトが成り立っていることを感じました。

今泉 大学がどのような教育を学生に提供していくかが社会的に議論されている中で、学生発表を聞いて、非常に濃密な学生支援が行われていると感じました。活動する学生には、WAVOCで学んだことを一過性のものではなく継続して日常的なことに生かしていってほしいです。

堀口 WAVOCは、教育、研究という大学の機能に、新たに社会貢献を加えるという位置づけで発足しました。結果として、学生が育ち、同時に大学も教育方法を革新するという意味で育っていると感じています。

五十嵐 WAVOCのような活動を通じて、大学が変わりつつあるということについては、大学行政の立場からはいかがでしょうか。

今泉 学生だけでなく大学そのものも育っているということに同感です。昨年12月に中央教育審議会では「学士課程教育の構築に向けて」という答申を出しました。大学で身につけてほしい力を「学士力」とし、そのための項目として、(1)知識・理解、(2)汎用的技能、(3)態度・志向性、(4)総合的な学習経験と創造的思考力を挙げ、こうした項目を満たした上で、各大学での教育・研究がなされるべきだという考えを打ち出しています。WAVOCが目指していることは、この方向性と非常に合致していると思います。

どこの大学を出たかではなく、何を身につけたか

五十嵐 こうした社会貢献活動をしている学生を企業はどう評価しますか。

 これからは勉強だけでなく、社会貢献活動などを通じて培った人間性を加味した評価ができればよいと思います。ただ現段階では、学生がそうした活動経験を活かすことができるのは自己PRくらいしかありません。WAVOCのように組織化されて、カリキュラムとして捉えることができれば、企業も評価しやすいと思います。

五十嵐 社会貢献活動が長期化して、通常よりも遅れて就職する場合、今日の社会がそれを受け入れられるのでしょうか。行政の立場からはどのようにお考えですか。

今泉 大学改革の方向性として、今後はどこの大学を出たかではなく、何を身につけたかということが評価されるようになっていくと思います。企業としても、留学などで卒業が遅れても、それは遅れではなくその学生の付加価値だと捉え、採用するようになるのではと期待します。

ボランティア活動は、社会に対する気づきを与えるもの

五十嵐 WAVOCは世界を舞台に多くの学生が活動していて、組織運営が大変だと思います。財源の確保などはどうしていますか。

堀口 学生が自らのアルバイトで旅費を出しているというのが現状であり、それは今後も変わらないと思います。しかし、それ以外のスペースや教職員のサポート、予算などの点で大学の支援はまだ不十分です。人手は足りない状態で、先輩学生が後輩を応援しています。長期的には大学のカリキュラムとしてWAVOCの活動を位置づけ、必修科目や副専攻に認定するといったことも議論されています。そうすれば、新たな支援も可能だと思います。

五十嵐 納税者の一人としては、税金を国公立大学だけでなく私学のこうした活動にもあてればよいと思います。

今泉 私も賛成です。大学が教育を改善し、質の高いプログラムを学生に提供する。それを受けた学生が社会に出て活躍し、社会に貢献する。そのように公共の利益となるのであるならば、税金を投入する意味があります。

五十嵐 学生たちが活動で得たことを社会に還元できるか、それで社会を変えることができるかどうかということが、大きな分かれ道になると思います。学生の活動支援の財源ということも含め、私たち企業社会は何ができるのでしょうか。

 企業の社会貢献活動は、社員に対して“気づき”を与えるものでもあると考えています。当社でも植林活動をしていますが、多くの社員が参加し、「企業も社会貢献をする」という意識が少しずつ浸透しています。自然との共生、そして、社会との共生を抜きにして、企業活動は成り立ちませんから、ボランティア活動は必要なことだと思います。WAVOCの活動が社会に広まり、そういった意識を持つ学生がより多く社会に出てくるといいと思います。

五十嵐 新聞社も資金を提供することはできなくても、知恵、人、紙面提供を通じて人々に伝えることで、社会貢献活動を支援することはできます。WAVOCの活動を通じて、大学生の皆さんが社会のさまざまな問題に気づいていることは素晴らしいと思いました。そういった感覚を持った人が社会に出てくる。これは社会にとって非常にプラスであると思います。

堀口 今日は教育の方法について認識を改めました。学生たちは、理論を学ぶだけでなく、自ら発信し社会に働きかけるところまで到達しています。そういったことを教育の場では大事にしなければならないと思いました。

今泉 誰かのために、少しでも何か役に立つことをしたという意識を持つことで、自分が生きている意味を認識するのだと思います。学生たちは、WAVOCの活動を通じて、自分が生きている意味、人はどう生きていくのかということを学んでいると思いました。

シンポジウム会場では、学生たちによるプロジェクト報告の展示も

 ボランティア活動の本質には、語り合いと仲間づくりがあります。その仲間づくりが社会の大きなネットワークづくりになっていくことを期待しています。熱意を持って語らいをすれば、相手は必ず理解を示し、お互いが納得する方向に持っていくことができる。ボランティア活動を通じて、より多くの人がその気づきを得られればいいと思います。

五十嵐 そうですね。大学生の社会貢献活動が社会に還元され、社会変革につながっていくことを願っています。