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キャンパスナウ

▼5月号

SPECIAL REPORT

世界から早稲田へ。早稲田から世界へ。

 学びのフィールドを世界に広げる学生の数は、増える一方です。世界中の大学から、学びたい大学を選ぶことが当たり前になる時代が、すぐそこまで来ています。

 世界の中から選ばれる大学になるために、早稲田大学が進むべき、真のグローバル化とは何かを考えてみましょう。

早稲田大学では、大学のグローバル化という言葉が重要なキーワードとして使われていますが、実際のところその目的や現状をしっかり把握している人は少ないのではないでしょうか。そこで改めて、早稲田大学におけるグローバル化について、国際担当常任理事の内田勝一国際教養学術院教授にご説明いただきました。

世界から選ばれる大学を目指す早稲田大学のグローバル化

国際担当常任理事 内田 勝一/早稲田大学国際教養学術院教授

1世紀以上前からグローバルな大学
内田 勝一

──歴史を振り返ると、早稲田大学におけるグローバル化はいつ頃からどのような形で始まっていたのでしょうか。

 1905年には清国留学生部が設置され、1920年代くらいまでは、中国や韓国の留学生が全体の1/5~1/4を占めていました。彼らの中には、早稲田大学で学び、帰国後、独立運動の中心となって活躍した者もいます。

 例えば、中国共産党の創始者である李大釗(りたいしょう)は、北京大学で毛沢東に社会主義を教えています。また、1972年に日本と中国の国交が正常化されるにあたって、本学の卒業生たちが、日本と中国の架け橋となりました。

 韓国においても独立運動の中心的存在になった卒業生がたくさんいますし、東亜日報(新聞社)、高麗大学、サムソンの創業者も早稲田出身です。ちなみに韓国語で「ワセダ」は、素晴らしいという意味だそうです。実に素晴らしい偶然ですね。そうした歴史の積み重ねがあって、中国や韓国をはじめとするアジアにおいて、本学のプレゼンスは非常に高いものとなっています。

 戦後は、1963年に国際部が設置され、米国の大学から1年間学びに来る学生の受け入れが始まりました。米国で日本に関するビジネスを始めた者もいて、本学と米国との関係においてかけがえのない存在になっています。

 最近では、1998年に大学院アジア太平洋研究科、2000年に大学院国際情報通信研究科、2001年に大学院日本語教育研究科、2003年に大学院情報生産システム研究科を設置し、日本語教育研究科を除く3つの大学院では、英語による授業のみで修士学位を取得できるようにした結果、多くの留学生が集まりました。2004年に開設した国際教養学部は留学生が1/3を占めています。

世界水準の大学になるということ

──改めてお聞きしますが、大学におけるグローバル化をどのように定義していますか。

 教育と研究の両面で、世界水準の大学になるということです。言い換えると、世界中から早稲田で学びたいという学生が集まり、世界的に認められる大学になることです。

 世界水準であることを客観的に計る指標としては、研究の面では、例えば研究論文が「サイエンス」や「ネイチャー」などの世界的権威のある学術誌に掲載されることや、文部科学省のグローバルCOEなどの競争的資金を獲得することなどがあげられます。教育の面では、一例として教員と学生の比率があります。現在、米国のトップの大学では、フルタイムの教員と学生の比率が1:10~15ですが、早稲田の文系学部は、1:40と大きな差があります。こうした指標を高めると同時に、教員や職員が一丸となってサービスを向上するという心構えを持つことで、グローバル化を推進します。

────グローバル化推進における数値目標はありますか。

 今年の正月、福田首相は施政方針演説で「留学生30万人受け入れ計画」を発表しました。本学では、留学生8000人を受け入れることを目標にしています。これは世界のトップ大学の留学生比率20%を指標としています。

グローバル化は、手段であり、目的でもある

──なぜ大学はグローバル化を推進しなければならないのでしょうか。

 まず、大学のレベル向上の手段の1つだと考えることができます。現在、日本の大学は勝ち残るために厳しい競争社会に突入しています。国内の18歳人口は減少する一方で、1992年は204万人でしたが、昨年生まれたこどもの数は106万人です。一方、外国に目を向けると、今年、中国でセンター試験を受けた人は1000万人。他のアジア諸国でも高等教育に対する熱が高まっています。大学のレベルを維持・向上するためには、アジアをはじめとする世界中の優秀な学生を受け入れることが不可欠です。

 次に、グローバル化を目的と捉えると、さまざまな改善すべき点が浮かび上がってきます。留学生の立場に立って考えてみましょう。

 入口では、入試を日本語以外の言語でも実施したり、各国の大学入試の統一試験の成績を使えるようにしたり、新学期を世界の主流である9月に合わせるなど、海外から受験しやすい体制の整備が課題です。入学後は、英語で行う授業を増やし、来日当初は日本語ができなくても授業が受けられるようなカリキュラムにするほか、寮の整備などの生活サポートを充実させる必要があります。

 出口では、日本企業に就職したい留学生を阻むさまざまな問題、例えば、ビザなどの制度面や企業のマインドなどを変えていかなければなりません。つまり、日本社会の構造全体を変えていかなければ、大学のグローバル化は達成できないのです。大学だけでできることとできないことがありますが、これらの課題を理解した上で、できることに取り組んでいかなければなりません。

──日本の学生にとって、大学がグローバル化することの意義は何でしょうか。

 国際的に活躍できる人材になるための環境が与えられるということです。そのためには、さまざまなバックグラウンドを持った人が集まる、多文化共生のキャンパスをつくることが必要ですし、派遣留学生をさらに増やす工夫が必要です。交換留学のほかTSAやISA、ダブルディグリーなど学部生を対象としたさまざまな留学プログラムが用意されていますが、夏や春の休みを利用して安いコストで行ける短期留学プログラムを充実させれば、もっと多くの学生が海外に出ることができます。1カ月でも現地に行けば、その国の言葉、文化、教育、社会への関心が高まり、共生の必要性を認識し、また、同じ年齢の学生がどれだけ勉強しているかを目の当たりにして、勉学意欲が高まるでしょう。

 大学院でも、研究の担い手となる優秀な大学院生を世界中から集め、共同研究できる環境整備の推進が必要です。

──教職員にとっての課題は何でしょうか。

 海外との共同研究をさらに増やすためには、教員が海外を行き来しやすくするような制度が必要です。例えば海外の大学教員を5~7月の夏休み期間中に、日本に招聘する制度があってもよいのではないでしょうか。新任の先生を米国のリベラル・アーツ大学に派遣し、授業のやり方を学んでもらえるような制度も作りたいと考えています。

 現在、ほとんどの学術院、独立研究科や高等研究所において、外国人の研究者を募集しています。魅力的な環境を用意することも優秀な研究者を集めるために必要でしょう。また、職員についても、外国語の修得や、海外の大学において学ぶ機会が必要だと思います。

 大学のグローバル化は、教員、学生、職員が、同時にレベルアップすることが大切です。学部は、教育・研究レベルを向上し、本部(国際部)は、各学部のイニシアチブを全力でサポートし、大学全体で必要に応じて組織や制度を変えていく機動力を発揮すれば、グローバル化が活気づくと思います。

 早稲田には清国留学生部以来、留学生を育てて世の中に送り出す伝統があります。世界中から質の高い学生を集めて、世界で役立つ人材を輩出していきましょう。