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キャンパスナウ

▼4月号

REPORT

早稲田大学とNTTが産学連携に係る包括協定を締結

~日本発の世界展開を創出する情報通信基盤テクノロジーの開発に向けて~

 2008年1月28日、本学と日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、情報通信分野を中心とした産学連携に係る包括協定を締結しました。協定締結の背景、経緯と今後の展開について、研究推進部長 中島啓幾教授にお話を伺いました。

組織対組織が可能にする新たな共生関係

 本学とNTTは、情報通信分野において組織対組織として連携していくこととし、産学連携に係る包括協定を締結しました。情報通信分野、特に基礎・デバイス系技術、情報セキュリティなどの情報通信プラットホーム技術を中心に、技術、人、設備といった互いのリソースを活かし、新たな共生関係を構築していきます。

 本学とNTTの連携はすでに長年の実績があり、基礎・デバイス系技術、情報通信プラットホーム技術についても、毎年数件~10件程度の共同・受託研究を行ってきました。今回の包括的連携契約と従来の共同研究等との大きな違いは、連携テーマの提案や連携中テーマの進捗確認などについて、組織対組織で協議できる体制(図参照)を構築したことです。

締結の背景

 本学は、1942年に私学でいちはやく電気通信学科を設立するなど、情報通信分野における数多くの先端的研究と人材の輩出をリードし、国内外の民間企業や研究所、国、地方自治体、他大学などとの研究交流を行ってきました。

 一方、NTTは、NTTグループにおける横断的な基盤的研究開発を一元的に行っており、情報通信分野において世界で屈指の総合的な研究開発拠点として、確固たる地位を築いています。

 前述の通り、両者は従来から共同研究や共同実験、人的交流等を中心に連携を進めてきました。これらの活動の多くは、両者の研究者同士の個人的なつながりを契機に個別に企画・推進されてきたため、新たな組み合わせによる連携や複数分野を跨いだ分野融合的な連携の創出は困難でした。

 これらの活動の多くは、両者の研究者同士の個人的なつながりを契機に個別に企画・推進されてきたため、新たな組み合わせによる連携や複数分野を跨いだ分野融合的な連携の創出は困難でした。

 組織対組織での対応を可能として、これまでの友好的な関係を維持・発展させ、創造的な研究への取り組みをも含めた研究活動の強化、高度な研究開発力をもつ人材の養成等を図るべく、本協定の締結に至りました。

 契約にあたっては、研究推進部の産学官研究推進センターが間に立って双方のニーズの洗い出しを行い、契約書の条項についてもキャッチボールを繰り返しながら、細かな点まで確認していきました。十数回にわたる打ち合わせは、産学官研究推進センターと(株)早稲田総研イニシアティブが協力による事務局が対応してこそ実現できたもので、その過程を通じ、学内外で連携と信頼関係が構築できた点も有意義でした。

協定の目的

 本協定では、本学の125年におよぶ高度で多様な知見を基にした教育・研究力と、NTTの情報通信分野での研究・開発力を結集することで、本学における教育・研究活動の拡充、活性化、NTTにおける研究開発活動の高度化、効率化を図ります。

 さらに、情報通信分野において多様化する社会ニーズに対応するべく、創出される連携成果の事業化も視野に入れて、互いのニーズおよびリソースのマッチング・融合を行うことにより、これまでにない新たな組み合わせ、複数分野融合的な多様かつ創造的な連携を企画・推進します。

 そして、国内はもとより世界、とりわけアジア地域に向けた独創的、分野融合的な技術の発信も視野に入れます。先端技術の基礎を実体験で習得するインターンシップや北京・シンガポールなど本学の海外拠点を活用した人的交流、技術交流等により、世界をリードする若手研究者・技術者の育成を目指します。NTTは今後国際標準化技術の創出を目指すという強い志をもっており、アジアを巻き込んで打ち出していく戦略も考えられます。本学が有するアジアのネットワークは、その際に大きなメリットとして働くでしょう。

本協定の特徴

 本協定の特徴としては、(1)「連携協議会」を核とした運営、(2)研究活動の強化、(3)教育活動の強化、の3点が挙げられます。

(1)「連携協議会」を核とした運営

 本協定の運営は、両者の連携責任者、連携研究推進代表者等4名ほどからなる「連携協議会」が担当します。連携協議会は、研究の連携をマネジメントする機能と、従来からの個々の研究において形成されてきたつながりを強化・緊密化する機能を果たします。

 連携協議会での議論を通して、取り組む研究・開発・人材育成等に対する共通の認識を醸成し、広範な領域に渡って多様かつ創造的な連携関係を構築します。研究に関しては、新規テーマの検討段階から連携し、共同プロジェクトを決定します。両者の研究者は共同で各研究プロジェクトの目標やスケジュール等を策定し、連携協議会は双方の研究者の協働が促進される環境を設定します。定期的に開催される連携協議会において進捗状況と計画の確認を行い、大きな成果に結びつくよう組織的に取り組んでいきます。

 また、従来からつながりがあった研究連携を一層強化・緊密化するとともに、連携協議会の活動を通じて、互いのニーズおよびリソースのマッチング・融合を図り、従来連携がなかった両者の間の新たな連携や複数分野に跨る融合的な連携の創出、活性化についても取り組んでいきます。

(2)研究活動の強化

 本協定では、情報通信分野、特に基礎・デバイス系技術、情報通信プラットホーム技術を中心に共同研究等を推進しますが、これらの分野は、政府が掲げるIT新改革戦略の根幹を成す技術分野です。

 政府IT戦略本部は、2006年以降のIT国家戦略として、IT新改革戦略を策定しました。そこでは我が国が、持続的に発展可能かつ自律的で、誰もが主体的に社会の活動に参画できる協働型のIT社会に変貌することを宣言しています。

 この戦略では「構造改革による飛躍」、「利用者・生活者重視」、「国際貢献・国際競争力強化」の3つが基本理念となっており、さまざまな視点に立った研究開発、事業化が求められています。また、世界に先駆けて2010年度にはITによる改革を完成することが宣言されており、急速な技術の発展、社会ニーズの多様化も想定されます。

 これら社会的要求に対応するべく、同分野で両者がこれまでに培ってきた高度な研究・開発力を結集するとともに、理工学を中心とする技術的観点のみならず、法学、経済学、社会学、心理学といった社会科学・人文科学的観点にも立った文理融合型研究プロジェクトの企画・推進にもやがては取り組むことで、次世代における情報通信システムの具現化に寄与する技術の発信を図ります。

(3)教育活動の強化

 本協定においては共同研究以外にも、インターンシップ等による人的交流、各種技術系教育セミナーの開催、また本学研究者とNTTの幅広い部門の研究者による技術交流をはじめ、それぞれの強みを活かす相互補完的な教育・人材育成活動にも積極的に取り組んでいきます。

今後の展望

 当面の具体的な連携内容として、本協定では以下の取り組みを予定しています。

共同研究として、「サービスのスケーラビリティやユーザビリティを考慮した新たな認証認可技術に関する研究」、「ダイヤモンドを用いた高周波・高出力電子デバイスに関する研究」の2点、また、人材育成プログラムの推進として、「インターンシップ等を利用した人材交流」、「海外拠点を活用した人的交流、技術交流」を予定しています。

 上記の具体的な予定については、今後連携協議会で発展させていきます。3月3日に第1回目が開催され、連携運営骨子を定めて意識統一を図る良い場となりました。

 今後の話になりますが、いずれは核となる研究テーマが常時を5つほど走っているようにしたいと考えています。連携において重要な点は、双方にメリットがあることです。NTTの研究所は、素晴らしい研究者や高度な機器、装置等を有しています。「インターンシップ等を利用した人材交流」では、学生がそういった機器を使いこなせるように指導していただくなど、一般的に言われるインターンシップに比して、より専門性の高い内容を想定しています。ただ、それがNTT側にとって一方的な負担となることは避けなければなりません。そういった理由からも、相互のメリットとなる共同研究という「土俵」を確保する必要があります。

 インターンシップの単位認定については、教務部や理工学術院等との今後の相談になります。

キーワードは「競争」から「連携」へ

 今回の協定にあたっては、個別の協定として体制を構築することはもちろん、今後も見据えた上で細部まで考慮して取り組んできました。大学と企業の連携の仕方はさまざまですが、これをひとつのプロトタイプとし、経験を蓄積していきたいと考えています。

 研究大学としての評価の指標も、今年に入り「競争」のみから「連携」も、とシフトしつつあります。これまでは、外部競争的資金調達の例に顕著なように、主として「競争」により、研究大学の実力が測られてきました。しかし最近は、国際的な連携のみならず、国内であっても、産官学官の連携、国(公)私立といった異なる法人形態の大学同士が連携することを促す動きが顕著となっています。

 知的財産権の扱いといった問題もあり、法人を跨いだ連携は非常に困難です。しかし、そういった問題をいかに解決して、相互にメリットのある連携・提携を実現できるかが、今後トップクラスの大学として生き残る上で重要になると認識しています。

 研究推進部としてもその重要性をふまえ、多くの時間を割いて体制づくりに尽力しました。例えば、協定の契約書についても、この協定の趣旨に則って結ぶ個別共同研究契約書の雛形を含んでいます。関心のある方は、下記連絡先に問い合わせてください。また、若手研究者、博士課程の学生からの連携提案を募って、検討のテーブルにのせていくことも視野に入れています。トップダウン、ボトムアップ両方のルートを確保することが必要です。

 また、事前評価・中間評価・成果確認等を通して、教員のプロジェクト運営を支援し、対外的に成果を保障していくのも、連携協議会が担うべき役割でしょう。目的を共有した上でのリソースの配分も行っていきます。

 今回の協定が具体的な実行段階に入っていけば、そういった経験も蓄積でき、推進・実行体制も確固たるものになると考えています。

連携協議会
  早稲田大学 NTT
「連携協議会」代表者 理工学術院 ・国際情報通信研究科 教授
富永 英義
常務理事 情報流通基盤総合研究所長
藤原 弘道

委員

理工学術院長
橋本 周司
サービスインテグレーション基盤研究所長
三宅 功
理工学術院 教授
堀越 佳治(理工分野)
情報流通プラットホーム研究 企画部長
木原 洋一
理工学術院 基幹理工学部 教務主任
小松 尚久
物性科学基礎研究所 企画部長
牧本 俊樹
事務局 研究推進部
株式会社早稲田総研イニシアティブ
サービスインテグレーション基礎研究所
大学連携グループ

※上記に加え、協議会を円滑に遂行するための下部組織として企画運営委員会を設ける。

連携協定の相談、問い合わせ先
研究推進部 産学官研究推進センター
TEL:03-5286-9867
E-mail: contact-tlo@list.waseda.jp
株式会社早稲田総研イニシアティブ UICチーム
TEL:03-3203-4427
E-mail:bu-producer@list.waseda.jp