キャンパスナウ
▼盛夏号
- 早稲田再発見
-
写真:佐藤洋一(社会科学総合学術院 教授)cover story 表紙のお話
夏の夜の野外劇場
学苑草創期の功労者のひとり坪内逍遙が古稀を迎えた1928年、
その半生を傾けた「シェークスピヤ全集」全40巻の翻訳が完成しました。
これを祝して同年に建設された坪内博士記念演劇博物館は、
エリザベス朝時代のシェイクスピア劇場のひとつフォーチュン座を模し、
建物正面は舞台、奥の展示室が楽屋、2階の廊下が上舞台、
建物の両翼は桟敷席で、前庭が一般席にあたります。
正面上部には「全世界は劇場なり」というラテン語が掲げられ、
古今東西の演劇資料を集めた世界でも珍しい博物館である「演博(えんぱく)」は、
その建物自体が貴重な演劇資料でもあるのです。
この舞台で初めて劇が演じられたのは、1947年の「ヹニスの商人」。
翌年の設立20周年からは、5年ごとに記念公演が行われ、
1978年には「ロミオとジュリエット」も上演されました。
夏至の頃、ジュリエットが佇んだ2階バルコニーの窓から夜闇のキャンパスを眺めれば、
それは、「真夏の夜の夢」が終演して客が引けたあとの野外劇場の趣です。