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嶋村 和恵(しまむら・かずえ)早稲田大学商学学術院教授 略歴はこちらから

消費者の心を動かすためにお金よりも知恵を絞った広告が面白い

嶋村 和恵/早稲田大学商学学術院教授

 大学生の頃は、まさか自分が大学教授になるとは思っていませんでした。学部時代から広告に興味があって小林太三郎先生のゼミで学んでいたのですが、大学に残ることはまったく考えずに、普通に就職活動をして生命保険会社に一般事務として入社しました。仕事のできる若い女性が多い会社で職場の雰囲気も良く、楽しいOL生活を送っていたのですが、思うところあって、このままでいいのか?と悩みだし、会社を辞めたくなってしまったのです。

 今なら転職ということになるのかもしれませんが、当時の女子の就職は非常に限られていたので、とりあえずという感じで大学院に進みました。そのままずるずると博士課程に進んで、気がついたら短大の専任講師の職が決まった34歳になるまで大学院にいることに。でも不思議とあせることはありませんでした。仲間にも恵まれ、居心地が良かったのでしょうか。

誕生日に、ゼミ生からプレゼントされた寄せ書きティディベアと色紙

 当時の仲間が今の職場の仲間でもあるわけですが、30年以上のつきあいというのは、気心が知れていていいものです。今となっては、社会人を一年経験したことは、毎朝早起きして規則正しい生活を送り、団体生活に馴染むことができたという自信になったので良い経験でした。

 学生が広告論を学ぶきっかけの多くは、面白い表現などに対する興味です。でも本当の広告論の面白さは、企業が現状を認識し、さまざまな制約の中で消費者の気持ちを動かす努力をしていることが見えてくるところです。派手さはなくても、知恵を絞ってある広告に価値を見出してほしいですね。ここ1~2年、ネット広告が全体の1割を占めるようになるなど、広告業界が大きく変化しています。半年先にどうなっているかが見えません。ですから広告論の授業で何を教えるかが悩ましい状況です。現場のクリエーターによる講義の機会を設けるなどして、深いところまで理解してもらえるよう工夫しています。

 数年前の在外研究で、広告教育の現状と課題について調査しましたが、米国ではコミュニケーション学部やジャーナリズム学部の中に広告学科があり、どちらかというと広告物の制作に重点が置かれています。一方、日本では商学部の中でビジネスと結びつけて教えられることが多く、広告のような狭い領域で学科が設置されることはありません。私も大学のカリキュラムは、専門学校のように特別な技能を学ぶより、その周辺のことも含めて幅広く学ぶほうがいいと思っています。学生に人気がなくても、広告の歴史や消費者行動など、広告を学ぶ上で必要な内容を提供することも大切だと思っています。

眼鏡コレクション。お給料をもらうようになってから、眼鏡を集めるようになりました。いろいろなデザインを試すのですが、やはり丸顔には丸い眼鏡が馴染むようです

 最近の学生を見ていて感じるのは、仲間に対してはものすごく思いやりがあって気遣いがあるということです。私のゼミ生も本当に仲が良く、ほほえましいですよ。でも学生全般の傾向として、自分たちの輪の中で空気は読んでも、輪を出ると他人が転んでいても気にしないようなところがある気がします。ついさっきまで授業を受けていた学生と廊下ですれ違っても挨拶すらしてくれないことが多いので、なんだかさびしいです……。 最近、何かと忙しかったので、心のゆとりを取り戻すためにも、ピアノや絵や書道などを再開したいと思っています。いつも気持ちにゆとりを持って、周りの人を支えられる人間でありたいですね。

嶋村 和恵(しまむら・かずえ)/早稲田大学商学学術院教授

1978年早稲田大学商学部卒業。大学卒業後、1年間の会社員生活を経て大学院に入学し、広告論の研究を再開する。1993年早稲田大学商学部専任講師、1995年助教授、2001年より教授。趣味は音楽を聴くこと。ダンス★マンやジャニス・ジョプリンがお気に入り。