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キャンパスナウ

▼7月号

プロ・ローグ

高林 龍(たかばやし・りゅう) 略歴はこちらから

知的財産権は、良い技術と文化を最大限生かすためにある

高林 龍/早稲田大学法学部教授

 裁判官だった父の影響で、物心ついたときには法曹の道に進むことを決めていました。父は会社員を経て裁判官になったこともあり、ことのほか「裁判官の独立」について口にすることがありました。「裁判官は、サラリーマンとは違って、あくまでも自分が正しいと思う道を選ぶことができる仕事だ」頑固者だった父らしい言葉です。私もその気質を受け継いでいるのかもしれません。というのは、学生から「キレキャラ」と言われ、怖い先生だと思われているようです。授業中にルール(しゃべらない、携帯を使わない、眠らない)を守らない学生を叱るのは当然のことですから、そう思われても大いに結構。もちろん、一生懸命学ぼうとしている学生にとっては優しい先生です(笑)。

 私の専門である知的財産権法は、地方裁判所の専門部と最高裁判所の調査官の時に担当していた分野です。調査官の役割は、裁判に必要な法律の資料を集め、裁判官が判決を作るのを手伝うことですが、法律を研究しながら何本も論文を書くので、学者に似た仕事です。知的財産権は専門性が高い分野なので、その面白さに目覚め、熱心に研究に勤しんでいたところ、縁あって母校に戻ることになりました。私の場合、知的財産権に取り組むことになったのも、大学の研究者になったのも、良いタイミングでチャンスを与えられたからです。運が良いのだと思いますが、自分が選んだ道で徹底的に頑張れば、人生は次々と開けてくるのだと信じています。

 高林ゼミでは、ゼミ生の自作自演で模擬裁判を実施。迫真の演技に引き込まれるうちに、著作権法の理解が深まる。この裁判は和解で決着。高林先生は、裁判官は紛争解決人であり、和解へ導くことも裁判官の生き甲斐であることを伝授したいと言う。

 初めての講義のことは今も忘れられません。裁判官としての経験や知的財産権法分野の重要論点を話せば講義になると思っていたのですが、学生がついてこなくて、ショックを受けました。しばらくは教壇に立つことが少し苦痛だったのですが、在外研究で米国に行き、多くの学者の姿を見た経験がプラスになり、帰国後は講義が楽しくて仕方ありません。教師は、学生の興味を引き出すために、エンターテイナーでなければならないと考えています。良い質問をもらうと、俳優が演技をした後に拍手をもらうように嬉しいですね。若い人たちは発想がユニークですから、質問の切り口に感心することも多く、研究と教育は、相互に補完し合うものであることを実感しています。

 現在取り組んでいることの一つに、アジア知的財産判例英文データベースの構築があります。知的財産紛争には、国境がありません。今後、アジアの国々が発展し技術力を持つようになると、日本のような知的財産立国が増えることは必然です。ただ、知的財産は必ずしも保護すれば良いというものではありません。保護することが世の中のメリットに結びつかなければ意味がないのです。バランス感覚を持った知的財産意識を育てるためにも、国際間で知識を共有する意義は大きいと思います。今後はさらに、ヨーロッパも含めて発展させていきたいと夢を膨らませています。

高林 龍(たかばやし・りゅう)/法学部教授

1976年法学部卒業。卒業後17年間、裁判官として民事事件、知的財産権関係訴訟を担当。1995年に同学部助教授として勤務。1996年から教授。2004年から大学院法務研究科教授も兼務。専攻は知的財産権法。