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キャンパスナウ

▼4月号

NEW WAVE

「芸術科学センター」の機能と課題について

 2006年4月に、総務省認可法人「通信・放送機構(現 情報通信研究機構(NICT:National Institute of Information and Communication Technology))」から引き継ぐかたちで開設した本学「本庄芸術科学センター」。その活動実績および2007年12月1日に教務部の外局として組織された「芸術科学センター」の機能について、センター長の田中愛治政治経済学術院教授に寄稿いただきました。

映像分野における人材育成を目指して

 2006年4月、本学は映画・映像分野の高度人材育成および最先端デジタル映像研究の推進のための拠点として、本庄キャンパスに「芸術科学センター」を開設しました。この施設は、本庄市の提案を受け、2001年5月に総務省の認可法人「通信・放送機構」(現NICT)により設立されました。本学はその事業を引き継ぎ、外部資金の導入による設備更新、最新機器の維持につとめ、別表のような映画作品の制作に協力を果たしてきました。その後、2007年12月1日に、教務部の外局としての組織「芸術科学センター」が発足しました。

 昨年、本学は創立125年の「第二の建学」を迎え、新たなる世紀に向かっての歩みを始めました。その中で、本学が発信する教育研究事業の一つとして「映像」を取り上げています。映像事業は本学の学生のみならず広く社会に対して貢献できる活動として今後の時代を担うものです。芸術科学センターはさまざまな側面から活動の幅を広げていく予定です。

 組織としての役割は、機器の保守点検や更新を中心としたMNCとの連携を強化し、「人材」というソフトウェアの育成を大きな目標の一つとしています。芸術科学センターには学生が所属していないため、GITIとの連携、また、本庄地域との連携を図り、学生の映画制作支援、地元のフィルム・コミッションとの協同作業による地域への文化還元などを中心とした役割を担っています。また、「映像戦略アドバイザリー・コミッティ」を開催し、外部の有識者を招いて今後の本学の映像教育戦略について、活発な討議も交わされています。

 「映像人材の育成」については、文部科学省が戦略目標として定めた「戦略的創造研究推進事業」の中の「メディア芸術の創造の高度化を支える先進的科学技術の創出」とも方向性を一つにするもので、今後の社会的・経済的ニーズを踏まえた「芸術と科学技術研究との融合領域」として、本学の研究教育分野において積極的に取り組むべき課題の一つとして位置づけています。

 多様な産業界へ多くの人材を輩出し、今までにも芸術、特に演劇の分野では幾多の校友が日本の文化の発展に貢献しています。それに加えて、今後はより一層多様化する「映像」の分野における優秀な人材の育成は、多数の優秀な才能を包含している本学の役割であると言えるでしょう。

 現在は国際情報通信研究科の安藤紘平教授の研究室の学生を中心に、実証実験としての映画撮影や、高度な編集機器を利用した特殊な編集作業などにセンターを活用しています。今後は、さらにその幅が広がることが期待されています。

芸術科学センター利用実績(2007年4月現在)
作品名 監督名 配給 公開スタイル 公開年
Soundtrack 二階 健 ギャガ コミュニケーション 劇場 2001
玩具修理者 はくぶん キュームービー イベント
ゴジラ×メカゴジラ 手塚 昌明 東宝 劇場 2002
海は見ていた 熊井 啓 日活ソニーピクチャー 劇場
スパイ・ゾルゲ 篠田 正浩 東宝 劇場 2003
COSMIC RESCUE 佐藤 信介 松竹 劇場
バトルロワイヤル II 深作 欣二、健太 東映 劇場
最後の恋、初めての恋 当摩 寿史 松竹 劇場
ゆうれい貸します NHK NHK TV
理由 大林 宣彦 アスミック・エース 劇場 2004
地球大進化 NHK NHK TV
キューティーハニー 庵野 秀明 ワーナー 劇場
忍者ハットリくん 鈴木 雅之 東宝 劇場
SUIT 浜本 正機 ファントムフィルム 劇場
娘道成寺 地炎の恋 高山 由紀子 パンドラ 劇場
ローレライ 樋口 真嗣 東宝 劇場 2005
姑獲鳥の夏 実相寺 昭雄 松竹/東急 劇場
戦国自衛隊1549 手塚 昌明 東宝 劇場
亀は意外と速く泳ぐ 三木 聡 ウィルコム 劇場
イン・ザ・プール 松尾 スズキ 角川映画 劇場
ニライカナイからの手紙 熊澤 尚人 I.M.J、ザナドゥー 劇場
蝉しぐれ 黒土 三男 東宝 劇場
深紅 月野木 隆 東映 劇場
まだまだあぶない刑事 鳥井 邦男 東映 劇場
愛地球博(めざめの方舟) 押井 守 パビリオン「夢見る山」 イベント
日本沈没 樋口 真嗣 東宝 劇場 2006
THE 有頂天ホテル 三谷 幸喜 東宝 劇場
バブルへGO!! 馬場 康夫 東宝 劇場 2007
あかね空 浜本 正機 角川映画 劇場
西遊記 澤田 鎌作 東宝 劇場

劇場公開作品40作品、TV放映作品10作品、その他10作品(※上記記載含む)

本庄芸術科学センターの概要と活動実績

 センターは上越・長野新幹線「本庄早稲田」駅から徒歩約8分の自然に恵まれた環境に立地し、5000坪の敷地に本格的な映画撮影ができるスタジオを設置しています。センターには、大型ブルーバックを備えたスタジオのほかに、デジタル・シネマ対応の編集室、高精細プロジェクターの試写室、映像サーバーなどの設備があり、それらをネットワークで結んで即時に編集作業などができる高度な設備を備えています。また、モーションコントロールカメラ、モーションキャプチャーを駆使したデ ジタル映像作品制作のための最先端システム(Smoke,Inferno、Lustre)を備えており、これからの日本のデジタル・シネマ制作を牽引するに値する、日本で有数の高度な施設となっています。(別欄参照

 今までにも、センターは本学特命教授・篠田正浩監督の「スパイ・ゾルゲ」をはじめ、樋口真嗣監督の「ローレライ」、「日本沈没」など、多くの話題を集めた映画作品の特撮・編集に貢献してきました。現在の映画作品にはこうした高度な特撮・編集技術を駆使した作品の需要が高まっており、今後センターが芸術界に果たす役割には限りなく大きい可能性があると言えるでしょう。

具体的施策について

 そのためには、既述の充実したハードウエアを利用して、映像人材育成事業を全学体制で整えていく必要があります。具体的には、

  1. 各学部・大学院・芸術学校・オープン教育センターとの連携を図りながら映像人材を育成する。
  2. 映像クリエーターのみならず、プロデューサー、配給事業者などの人材養成を行う。
  3. 映像産業界および本学出身の映画・映像関係者の支援、寄付講座などを積極的に受け入れ、実践的人材育成を行う。
  4. 映画・映像分野の教育コンテンツを新しい教育メソッドとして確立し、その結果を多くの人々に提供することにより、社会貢献を行う。

 などの事業が考えられます。これからの時代に求められる芸術的素材の一つであるデジタル・シネマに関わる人材を育成することは、広く芸術の世界の一翼を担う個性的な事業です。

早稲田総研シネマティックアートの設立とその目的

 また、産学連携事業の一環として、2007年12月3日にセンターの運営組織を整備し、センター事業をサポートするために大学関連会社「株式会社早稲田総研シネマティックアート」を設立しました。ここでは、芸術科学センター運営協議会の事務局の委託業務をはじめ、センターの研究開発事業における企業との先端的な研究成果を、「実証実験」として広く社会に公開することを実施中です。また、今後は社会人教育事業なども視野に入れ、大学各機関との連携を図りながら活動を展開する予定です。

 さらには、センターの利用促進のための幅広い営業活動、その成果物である映像の社会への還元、社会人を対象にした映像人材教育のコンテンツの開発、ネットワークで各ポストプロダクションを結び、映像の編集が違った場所で同じ環境で行えるような高度な環境整備の計画など、従来の大学の組織の枠組みにプラスアルファの要素を加え、社会活動の一環としての事業を目指します。

(広報室)

早稲田大学 芸術科学センター 施設概要

芸術科学センターは敷地面積5000坪、その敷地内に撮影スタジオ、編集室他、映像制作に必要な各種編集作業に応じた7部屋を用意しております。
各部屋間はネットワークを整備しており、データ間のやり取りもスムーズに行えます。

撮影スタジオ

468(W18m×D26m×H10m)の広さに合成用ブルーバック(33m×10.5m)を常備、モーションコントロール、モーションキャプチャー、照明機器および昇降装置から構成されており、大小さまざまな被写体をあらゆるアングルから撮影することができます。

MAスタジオ

マルチチャンネルデジタルミキシングコンソール卓、デジタルオーディオワークステーション、マルチトラックレコーダー、各種エフェクタなどや収音室から構成されており、200インチのサウンドスクリーンと5.1chサラウンド以上に対応可能で、臨場感あふれる音声編集が可能です。

CG室

CGソフトや複数のワークステーション、ネットワークサーバーにより、高速で高品質な映像コンテンツ作成、それをサポートするネットワーク環境で、映像制作だけではなく、学生の教育にも利用が可能です。

総合調整室

高精細DLPプロジェクター、16:9対応200インチ音響透過型スクリーン5.1ch対応サラウンドシステムで構成されています。さらにラスターも装備、カラーコレクションも行えます。映像編集、加工後の画質評価やダビング、MA後の完成作品の試写に対応可能な構成になっております。

オンライン編集・合成

大容量のストレージを有したハイビジョン対応ノンリニア編集機、バックアップ用高速磁気テープドライブデジタルオーディオミキサーなどにより構成されており、高品質なデジタル編集加工が可能な設備になっています。