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キャンパスナウ

▼2013 盛夏号

NEWS REPORT

世界の平和と人類の幸福の実現に貢献する研究を目指して

「研究の早稲田」から最先端の成果を報告

細胞シートに血管網を形成する技術を開発

 理工学術院の梅津光生教授、坂口勝久次席研究員と清水達也東京女子医大教授らは、生体組織構造を真似たコラーゲンゲルの上で培養することで、血管網を持つ厚い細胞シートをつくる技術を開発しました。

 細胞シートとは細胞を増やして薄いシート状に加工したものです。通常、心筋の細胞シートを厚くすると内部に酸素・栄養が行き届かず死滅してしまい、生体外では0.03mm程度が限界で、より厚くするには内部に血管網を形成する必要があります。今回の成果は、トンネル状にくりぬいたゲル材料に血管内皮細胞を含有させた細胞シートを張り付けて培養を行うと、内部に血管網が形成されて培養液が流れ込み、厚さ0.1mmの組織になることを確認したものです。

 この成果により生体内に近い条件を試験管の中で作り出せるため、薬剤効果を検証する精度が高まると期待されています。

世界初、「ナノ絆創膏」で大静脈の止血に成功

ナノ絆創膏をウサギの下大静脈切開部に貼る

 細胞膜と同じ位薄いナノ厚(1mmの10万分の1)の「ナノ絆創膏」。共同開発者である武岡真司理工学術院教授と木下学防衛医大准教授らのグループは、ウサギを用いた下大静脈からの大量出血の止血に世界で初めて成功。同成果は、国際血管外科学会誌「Journal ofVascular Surgery」(電子版)に掲載されました。

 ナノ絆創膏はあらゆる臓器や皮膚の表面に接着剤なしで間隙なくぴったりと接着し、かつ癒着を全く起こしません。透明なため止血具合を明瞭に把握でき、しかも止血が不十分な時は重ね貼りが可能です。

 今回の成功により、血管縫合などの複雑な手技がなくても大静脈のような壁の薄い大血管からの大量出血が簡単に止血でき、さらに大怪我による大量出血の止血治療にも役立つという期待が高まっています。武岡教授らは、今後も改良を重ね、動脈止血にも有効なナノ絆創膏の開発を目指す予定です。

細胞の減数分裂における20年来の謎を解明

 佐藤政充理工学術院准教授は、科学技術振興機構、東京大、英国CancerResearch UK、かずさDNA研究所と共同で、精子・卵子等の配偶子を形成する減数分裂の仕組みの一端を明らかにし、「Nature cell biology」誌に発表しました。

 減数分裂では、動原体(染色体の中央部分)が中心体から遠く離れており染色体の分配にエラーが起きるリスクが高いにも関わらず、なぜ紡錘体に捕まえられて正しい配偶子を形成できるのかが20年来の大きな謎でした。今回解明されたのは、減数分裂では、①微小管が特別に長く形成され、遠くの動原体を捕まえて中心体までたぐり寄せること、また②微小管結合タンパク質Alp7は動原体側に位置して微小管を結合しやすくすること、の2点。これにより、Al p7などの因子を人工遺伝子として細胞に導入することで、減数分裂に起因するダウン症候群や流産などの予防治療につながる可能性があると見られています。