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キャンパスナウ

▼5月号

NEWS REPORT

米国の科学雑誌「サイエンス」に掲載

柔らかいプラスチック電池の将来を展望

電池の新しい時代をつくるラジカルポリマーが、世界から注目

 論文の内容は、ラジカルポリマーと呼ばれるプラスチックを使った有機ラジカル電池の将来性について。現在、充放電が可能な二次電池のニーズは急速に高まってきています。ユビキタス社会の発展に不可欠なことはもちろんのこと、電気自動車、ロボット、医療機器などの電源としても用途が考えられています。また、風力発電や太陽電池など、自然エネルギーを利用する上でも必要です。

 現在、一般的に使われている電池は、鉛、コバルト、リチウムなどの金属でできています。金属は利便性が高い一方、資源の有限性、廃棄処分の問題、安全性など、課題も残されています。もし、プラスチックが金属の代替になれば、こうした問題点を解決し、電池の可能性をさらに高めることができます。プラスチックは焼却も可能なため金属に比べて環境負荷が低く、安全性が高いという特長があります。さらに、金属よりも軽くて柔らかく、自由自在に形を変えたり、折り曲げることも可能です。

 西出教授は20年以上前から、電気や磁気に感応するプラスチックを作るために、そのノウハウを研究してきました。中でもラジカルポリマーは、電気を蓄えるスピードが非常に速いという特長があり、一般的な携帯電話の電池をこの電池に代えると、10秒でフル充電できるほどの高い能力を発揮します。

 将来的には、クレジットカードに搭載して何かを発信したり表示できるようにしたり、衣服やバッグ、ノートなどに搭載したりとさまざまな用途が期待されています。ラジカルポリマーは、今最も、世界中で注目されているプラスチック素材といっても過言ではありません。世の中に役に立つ化学“プラクティカルケミストリー”を標榜する早稲田らしい研究の一つと言えるのではないでしょうか。

教授から一言

実学の早稲田から、未来技術の創造を

理工学術院 応用化学科 西出宏之教授(左)小柳津研一准教授(右)

 ラジカルポリマーの研究は、これまでにも専門誌に掲載されたり、経済産業省の支援プロジェクトが行われたりと、世の中に認知されてきましたが、今回のように、世界中の誰もが認める「サイエンス」に掲載されたことは名誉です。

 この成果は、早稲田の研究室チームが寝食を惜しんで手に入れた血と汗の結晶です。これを追い風に、引き続き世界の誰もが認める評価を重ねられるように波に乗っていきたいですね。野球でヒットを連続して打たないと点が入らないように、研究も実績を重ねていかなければ、世の中の役に立つものにはなりません。箱根駅伝やラグビーに負けないように、早稲田の科学も世界にアピールしていきたいと思います。