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キャンパスナウ

▼2014 早春号

My study, My career

早稲田で活躍する女性研究者を紹介します。

2032年の創立150周年に向けて本学のあるべき姿を考える「Waseda Vision 150」。
そのVisionのひとつ「世界の平和と人類の幸福の実現に貢献する早稲田の研究」を推進するため、女性研究者の活躍を通じた新たな視点と思考の導入も期待されています。今回は、東玲奈先生にお話を伺いました。

東 玲奈(あづま・れいな) 国際学術院専任講師
略歴はこちらから

教員と学生が互いに尊敬し合える 学びの場を目指して

東 玲奈/国際学術院専任講師

人は周りの環境からヒントを得て行動している

 社会科の恩師を通して心理学という学問を知り興味を持ったのは高校生のときです。そのときは臨床心理学を学習しようと心理学科に進学しましたが、理系研究者の父の影響で認知心理学の分野に惹かれていきました。大学か企業で研究を続けたいと思い始めたきっかけは認知心理学の教授が夏休みの図書として薦めてくださった『誰のためのデザイン?』という人間工学の本です。人間はボタンを見れば押し、レバーがあれば引き、右向き矢印を見れば右を向く、というように、環境からごく自然にヒントを得て行動しており、器具などのデザインが意図する人の行動がその自然な行動に反するものであるとき、人の行動はより遅く不正確なものになるということを初めて知りました。どのような環境なら人は正しい行動をとることができ、どのような環境下では行動を誤るのか。そしてそのような行動の早さや正確さにおける違いはどのような認知過程で起きているのか。学生時代はそのテーマに夢中になり実験を繰り返しました。

海外の教育・研究機関での学び

博士課程を過ごしたケンブリッジ大学のペンブルック・カレッジの図書館

 しかし当時の日本の心理学研究は非常に体系的、かつ海外から一歩も二歩も遅れた古い情報しかない状況で、海外の進んだ研究に触れたいと一年間の留学を決意。周りが就職活動に動き出すころには手続きを終え、早々とイギリスの大学院へ留学。気づけばポスドクまで含めて10年間、海外で研究を続けていました。

 海外ではさまざまな分野と連携した研究が進められています。発達障害児の見え方や脳内イメージという比較的医療に近いテーマを研究していた私は、海外滞在中に精神科医を中心とした分野連携プロジェクトのメンバーとして22番染色体異常による発達障害児に関する研究に携わりました。医学の知識がない私に対しても、実験の組み方や進め方など得意分野に関する意見を求め、ひとつのテーマを解明しようとする研究者たちの姿勢は印象に残っています。多国籍の職場でかつ男女ともにさまざまな分野の研究者の集まりであり、性別・国籍・専門分野などでマイノリティだと感じたことは一度もありません。

学術的ツッコミでクリティカル・シンキングを涵養

ロンドンオリンピックのときテムズ河岸にて息子と

 ゼミではクリティカル・シンキング(批判的思考)の涵養を意識した発表型の授業をしています。興味のある分野について調べたことを英語で発表する学生に対して、「別の解釈もできるよね」「著者の意見は本当に正しいのかな?」といった学術的なツッコミを入れるのです。学生にはひとつの意見だけが正しいのではなく、さまざまな解釈について考えることで学術的な視点を身につけてほしいと考えています。一方で、学生は興味の対象が一人ひとり異なり、記憶や学習などの基礎研究から消費者心理や交渉術、対人魅力研究まで、発表テーマはさまざまです。新たな視点に気づかされることも多く、学生との授業は非常に楽しいです。

すべての人に“敬意”を持って接する

 私が大切にしていることは、高校の恩師から学んだ“敬意”を持って人と接することです。生意気盛りの高校生に向かって「私はあなたたち一人ひとりを人として尊敬しています」と真剣に語りかける恩師の姿に、この先生のような人になりたいと思いました。講師として早稲田の学生たちと接している今も同じです。学生は目の前を通過していく存在ではありません。やんちゃな学生や大人しい学生などすべてが愛おしい存在です。中には問題を抱えて内にこもってしまう学生もいますが、学生たちには困ったり悩んだりしたときこそ顔を見せに研究室に来てほしいと伝えています。微々たる力ですが、新しい視点のひとつを提供できるかもしれませんから。これからも出会うすべての人と真剣に向き合うことで、教員と学生がお互いに敬意を持って接することのできる環境を築いていきたいと考えています。

東 玲奈(あづま・れいな)/国際学術院専任講師

上智大学文学部心理学科卒業。ロンドン大学University College LondonでMaster of Scienceを取得。ケンブリッジ大学で心理学のPhDを取得。ミュンヘンのマックス・プランク研究所、ロンドン大学キングスカレッジ付属精神医学研究所などでのポスドクを経て現職。