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キャンパスナウ

▼2014 新年号

My study, My career

早稲田で活躍する女性研究者を紹介します。

2032年の創立150周年に向けて本学のあるべき姿を考える「Waseda Vision 150」。
そのVisionのひとつ「世界の平和と人類の幸福の実現に貢献する早稲田の研究」を推進するため、女性研究者の活躍を通じた新たな視点と思考の導入も期待されています。9回目となる今回は、高松敦子先生にお話を伺いました。

高松 敦子(たかまつ・あつこ) 理工学術院教授
略歴はこちらから

積極的に他分野の専門家と連携し、
広がりのある研究をしたい

高松 敦子/理工学術院教授

私がイキイキできる場所は“研究”の現場

 大学4年時に生物学と物理学を融合させた生物物理学の分野に出会い、進路において研究を意識するようになりました。しかし大学はある種特殊な空間です。世間を知らないまま研究の道を歩むよりも、社会に出て貢献したいとの思いがあり、修士課程修了後は公共システムを扱うシステムエンジニア(SE)として就職しました。3年弱が過ぎた頃、ふと大学時代の教科書を見返したところ、研究していた当時の自分がいかにイキイキとしていたかを思い出し、もう一度研究の世界に戻ることを決意しました。

 生物物理学は、例えば私たち人間はどうしてこのような形を保てるのか、なぜ人間は夜寝て朝起きるという生活のリズムがあるのかといった生命メカニズムを、物理の知識を用いて解明しようという学問です。人間、ネズミ、単細胞生物など生き物の種類を超えた共通のメカニズムを数式に置き換えることで、さまざまな分野に展開することができます。

 現在は真正粘菌の輸送管ネットワークについて研究しています。粘菌は脳も心臓もない単細胞生物にも関わらず生き物として機能し、しかも環境適応能力を有します。例えば、有害物質を含んだ忌避環境ではエネルギー効率を良くするために太い輸送管から構成された樹状のネットワークを形成し、逆に栄養分を含んだ誘引環境では網目状にネットワークを密につなげて活発に活動します。似たようなネットワークは世の中のさまざまなところにあり、そのひとつが国の環境によって異なる電力網です。粘菌の持つルールを数式に置き換え、それを応用することができれば効率の良い電力ネットワークを構築できるのではないかと考えています。

学生との触れ合いから学ぶこと

研究室夏合宿
(鴨川セミナーハウスにて)

 私の研究室は、学生のいるスペースを通って出入りするオープンな空間になっています。そのためお互いに声をかけやすく、学生との交流、学生同士の交流が盛んです。帰宅しようと学生に声をかけたところ研究に関する相談を受けたり、ある時は学生を叱った後、冷静に考えると自分もかつて同じことをしたと思い至り反省したりします。学生との関わりで学ぶことは多いです。

 また、理系は「わかった」と思わなければ楽しくありません。私が学生の頃の授業は先生のペースで進められるため授業中に「わかった」と思うことが少なかったのですが、最近の学生さんはアルバイトやサークルなど忙しいですから、できる限り授業内で理解できるように演習問題を当てるように意識しています。

社会での経験を生かし積極的に他分野と連携

研究が行き詰まると愛猫のミルクとカフェモカを構ってリフレッシュ

実際のところ研究の世界は楽しいことばかりではありません。狙い通りの成果が出ずに行き詰まることも多々あります。しかし、社会で働くという選択肢を捨て、好きな研究の道を選んだ覚悟を原動力に頑張っています。

 また、ひとつのシステムを構築するために複数の分野と連携するSE時代の経験から、自分一人の能力・知識には限界があり、他者と共同することで新しい展開が見えてくると考えています。例えばマウスやショウジョウバエなど他の生き物を扱う他大学の研究室と共同研究することで、粘菌や微生物だけでないさまざまな生命メカニズムに関わる研究を展開させることができるでしょう。こうした学際的な研究は最近増えているようです。やはり他分野の研究者と連携し、さまざまな人と意見交換することが多様な発想につながると考えています。今後も積極的に異なる分野の研究会に参加し、さまざまな研究者と交流し、さらに広がりのある研究をしていきたいと思います。

高松 敦子(たかまつ・あつこ)/理工学術院教授

東京工業大学大学院応用物理学科バイオサイエンス専攻修士課程修了後、民間企業でシステムエンジニアとして勤務。3年後、同大学生命理工学研究科博士後期課程に入学し、非線形科学に基づく生物研究をスタート。1997年理学博士。1998年理化学研究所基礎科学研究員、2000年科学技術振興機構さきがけ研究21研究員、2004年早稲田大学理工学術院助教授・准教授を経て、2009年より現職。