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キャンパスナウ

▼盛夏号

My study, My career

早稲田で活躍する女性研究者を紹介します。

2032年の創立150周年に向けて本学のあるべき姿を考える「Waseda Vision150」。
そのVisionのひとつ「世界の平和と人類の幸福の実現に貢献する早稲田の研究」を推進するため、女性研究者の活躍を通じた新たな視点と思考の導入も期待されています。第2回目となる今回は、齋藤美穂先生にお話を伺いました。

齋藤 美穂(さいとう・みほ) 人間科学学術院教授 略歴はこちらから

教えて、教えられて。
学生とのつながりが研究の励みに

齋藤 美穂/人間科学学術院教授

興味が尽きなかった
“色”との出会い

 色彩心理学の研究という道を選んだのは、たくさんの素敵な巡り合わせのおかげだと思っています。私は高校の途中までデザイナー志望だったのですが、矢羽根の向きによって同じ長さの線が違って見えるなど、目の錯覚について書かれた本を読んで心理学に興味を持ちました。「物理で定義される世界と心で感じる世界は違うのかもしれない」と感じ、それを追究するために心理学の勉強をすることを決めました。

 大学2年生のときにはシドニー大学に留学しましたが、帰国後には当時いらっしゃった有名な色彩心理学の先生のゼミに参加しようと決めていました。そして色に対する関心が高まっていた私は、あるとき一つのことに気づきます。オーストラリアの強い日差しによって、日本から持って行った洋服の色が違って見えたのです。太陽の光が違えば、きっと好まれる色も違うはず。そう思い、大学の卒業論文では「色の好みの国際比較」というテーマを選びました。

 研究で分かったのは、やはり国ごとに色の好みがあるということでした。そこで修士論文では、欧米やアジア地域の色の好みの違いを研究。すると興味深い事実が次々と判明します。例えば、欧米では青は女性的な色とされていますが、それは聖母マリアが青色のガウンを身に着けているからです。そんな文化的な背景が見えてくると研究がますます楽しくなり、ずっと続けていたいと感じるようになりました。

学生に多くのことを教えられた
大学での研究生活

 研究を続けるには大学や研究所に所属する必要があります。私が研究の場として大学を選んだのは、人に何かを教えることが好きだったからです。特に初々しさを持った学生は大好きな存在で、彼らが社会に出る前の教育に携われるという点も大学を選んだ理由の一つでした。また、定期的に研究内容を学生たちに伝えることで、良い緊張感を持って日々の研究に取り組めるのではないかという気持ちもありました。

 研究者となってしばらくの間は、非常勤講師としてさまざまな大学で教鞭を執りながら自分の研究を続けました。女性研究者の数が少なかったため、キャリアについては多少ハンデがあったと思いますが、それ以上に得たものが大きかったですね。特に学生たちと接するなかで学んだことは多かったと感じています。私は美術大学でよく授業を行っていたのですが、奇抜な髪型や個性的な服装の学生を目にするうちに、ごく自然に「多様性」の大切さを学びました。これは今の私にとって非常に大切な価値観です。また授業やゼミでは気を抜くと即座に見抜かれるので、学生との時間を大切にして、講義がマンネリ化しないようにできるだけ新しいことを取り入れるようにしました。学生を教えるなかで、学生に教えられる。大学における私の研究生活を表すには、そんな言葉がぴったりのような気がします。

早稲田から新しい大学の姿を
発信していきたい

 現在、教育と研究に加え、男女共同参画と募金担当の理事として活動しています。早稲田大学の創設者である大隈重信は「男女複本位論」を唱えており、男女共同参画に積極的だった人物です。こうした早稲田大学の理念を多くの方に伝えるとともに、もう少し広い視点に立って誰もが過ごしやすいキャンパスをつくっていくことが理事としての夢ですね。

 早稲田大学は私学の雄として他の大学をリードしていく存在です。以前、あるシンポジウムへの協賛に賛同したとき、他大学が次々に賛同するのを見た関係者の方々から「ありがとうございます。早稲田大学が動けば、私学全体が動きます」と言われたことがありました。この言葉の重み、そして責任をしっかりと受け止めて、これからも活動を続けていきたいと思っています。

美大で教えていた時に学生たちが作ってくれたお弁当バッグは「宝物」

京都大学で開催された国際シンポジウムでの招待講演時に、アジアの他の招待講演者の方々と

齋藤美穂(さいとう・みほ)/人間科学学術院教授

1985年早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程修了。博士(人間科学)。1994年に色彩学論文賞受賞。1996年早稲田大学人間科学部助教授を経て現在人間科学学術院教授。早稲田大学理事。専門は色彩認知科学、感性認知科学。近著に「眼・色・光―より優れた色再現を求めて」日本印刷技術協会、「色彩学入門―色と感性の心理」東京大学出版会ほか。