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▼新緑号

My study, My career

早稲田で活躍する女性研究者を紹介します。

2032年の創立150周年に向けて本学のあるべき姿を考える「Waseda Vision150」。
そのVisionのひとつ「世界の平和と人類の幸福の実現に貢献する早稲田の研究」を推進するため、女性研究者の活躍を通じた新たな視点と思考の導入も期待されています。初回は、法務研究科の北川佳世子先生にお話を伺いました

北川 佳世子(きたがわ・かよこ) 法務研究科教授 略歴はこちらから

理論の面白さを学び多様な視点で考える力を養う

北川 佳世子/法務研究科教授

明確で理論的な刑法を
追求するため研究者の道へ

 刑法は犯罪者を罰する法律のため、法律を専門に学んでいない方には「厳しい」「怖い」といったイメージがあるようです。「なぜ女性が刑法を?」と問われることもよくあります。しかし実際に学んでみると、他の法律と比べて刑法は理論的で考え方が非常に明快なように感じられました。刑法は国家刑罰権を行使するのに用いられる法律であり、その適用を誤ると人権侵害になりますから、その理論的基礎、根拠はしっかりとしたものでなければなりません。また、刑法では異なる学説間で激しく意見が対立する場合も多く、そうした対立の背景にある理屈、理論の違いに面白さを感じました。

 現在も所属する法務研究科の女性教員の数は少ないですが、私の学生時代には法学部にはたしか法学系の女性教員はお一人であったかと記憶しています。とはいえ、大学院進学時にはそのようなことはあまり気にならず、ゼミで履修していた刑法について「理解できていないことが多い、まだまだ学び足りない」という思いで大学院に進学しました。大学院に進学するゼミの先輩や同学年の学友が多かったことも影響しています。社会に出て働くよりも、進学して大学院で学ぶ姿の方が具体的にイメージできました。

異なる視点で考える力を
身につけてほしい

 学生には、異なる視点を通して物事を考える力を身につけてほしいと考えています。例えば法務研究科のゼミでは判例を検討することが多いですが、判例の立場を理解するだけでなく、弁護士と検察官の各々の立場からどのような理屈でどのような主張ができるか考えてもらいます。「効率的に司法試験の勉強をするために判例だけ学べばいい」とか、「自説の論証ができれば十分です」といった態度では、将来の法曹実務を担う能力の向上が望めないからです。自分の見解を主張して終わりではなく、過去の判例を踏まえた上で相手方の主張を予測し、どう反論するかといった思考が必要です。そのためにも、さまざまな見解を理解する必要がありますが、学説を弁護士や検察官の主張になぞらえると、より興味を持ってくれる学生が多いように感じます。

 面白いのは、学ぶ過程やアクセス方法を変えるだけで学生の反応が変わること。研究者志望の大学院生にとっては、判例は重要だけれどもひとつの見解であり、あるべき理論の構築を目指して研究していることに留意します。学部学生には、刑法に関心を持ってもらえるよう、検討する事案を選別して知的好奇心をくすぐる仕掛けが必要です。学部学生でも興味がわけば、理論的にも突っ込んだ立派な報告をしてくれます。反骨精神というか、あえて判例と違う立場に立とうとする学生が多いところが、早稲田らしいですね。

もっと学生と触れ合い
各自の個性を伸ばしたい

 自身のキャリアを形成していくと同時に、仕事と家庭をバランスよく両立していくことも私にとっては課題のひとつでした。研究職に限らず女性がキャリアを積んでいく際には、出産というライフイベントを伴うことが想定されます。育児を一人でこなすのは大変です。幸い、私の場合は主人と融通し合えましたが、主人の職場環境がそれを可能にした面もあると思います。また、大学でも周囲の先生方からさまざまな配慮をいただき、手厚くサポートしていただきました。周囲の理解と協力があってこそなんとか続けてこられたのだと思います。とはいえ、これまで研究や学生との交流に十分な時間を割くことができませんでした。子供の成長に伴い、合宿を行うなど学生とプライベートな部分まで交流して、各自の個性を伸ばせるような指導をしたいと考えています。さらに学生の卒業後も交流が続き、卒業生と在学生の交流が生まれて人の輪が広がればと期待しています。

授業で使用している刑法関連の書籍

手帳に挟んでいる息子さんからの手紙。仕事で行き詰まった時などは、この手紙を見て気持ちを切り替えることも

北川 佳世子(きたがわ・かよこ)/法務研究科教授

早稲田大学法学部卒業、同大学院法学研究科修士課程修了、同博士後期課程単位取得満期退学。海上保安大学校助教授、岡山大学大学院法務研究科教授等を経て、2007年、早稲田大学大学院法務研究科教授。専門分野は刑法。