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キャンパスナウ

▼5月号

MISSION! 大学の仕事

教職員に与えられたさまざまなミッションと、早稲田大学の新しい動きをご紹介します。

学生が主体となって、創り・育てる

異文化交流のコミュニティ

国境や国籍を超え、人と人との交流を生み出す、ICCの仕掛けとは?

あらゆる価値観を理解し、発信する場として

ICCにくれば、世界の国々にアクセスできる

 国際コミュニティセンター(以下ICC)は、2006年6月、学生部の一組織として、インターナショナル・スチューデント(IS)とローカル・スチューデント(LS)※の相互交流を促進することを目的として発足しました。国境、国籍、文化の枠を越えて学生たちが集い、交流を通じて異文化理解を深めています。ICCにおける異文化は、幅広く捉えられており、海外だけでなく日本各地の地方文化も紹介したり、世代の異なる地域コミュニティの方々や卒業生、教職員も交流のカウンターパートとし、あらゆる価値観を理解することを目指しています。

 発足のきっかけは、学生部や国際部を中心とする若手職員グループが、海外研修の一環で韓国、延世大学校のグローバル・ラウンジを視察したこと。教育の国際化に力を入れる中、ただISや派遣留学生の数を増やすだけではなく、キャンパスにおける根本的な環境整備が必要であると考えた上での提案でした。現在、日本の大学の中でも、ハード・ソフト両面において充実度の高い異文化交流のコミュニティとなり、他大学からの視察が絶えません。

 運営に関わっているスタッフは、5人の職員と7人の学生スタッフリーダー。ICCでは、公募によって選ばれた学生スタッフリーダーが、授業の空き時間を利用して、イベント企画やプレゼンテーション、窓口対応などに従事しています。

※国籍を問わず日本で教育を受けた学生や、日本で育った学生を指しています。

初年度は交流イベントに延べ5000 人が参加

ミュージカル「フェーム」の舞台製作に挑戦

 ICCで行われるイベントは、学生スタッフやイベント・サポーター(ボランティア学生)たちの自由な発想により、多岐にわたっています。開設初年度は、130以上ものイベントが行われました。ISに日本文化を紹介するジャパニーズ・フェスタや、ISが音楽、ダンス、食べ物、民族衣装などを通じて母国の文化を紹介するイベントもあります。学生が自分たちの力で積極的に企業にアプローチし、イベントの企業協賛も増えています。また、長期にわたって一つのものを作り上げる過程で、理解と友情を深めることを目指す長期プロジェクトも行われています。昨年は、ブロードウェイ・ミュージカル「フェーム」の舞台製作に挑戦しました。約100名のLS、ISが約10か月にわたって準備、練習を重ね、大隈講堂での日英バイリンガル公演は大成功を収めました。

 ICCの活動は、キャンパスでの交流イベントが中心ですが、平成19年度文部科学省「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム」(学生支援GP)に採択された「異文化共生社会で生きる力を養う実戦活動」の一環として、アウトリーチと呼ばれる学外での活動も始めています。ISが、小中高の教育現場でゲスト・スピーカーとして自分の国の文化や社会について紹介し、現場でのコミュニケーションをLSが手助けするという異文化理解教育支援活動や、地方の生産現場での労働体験や奉仕活動などが あります。

世界につながる小さな窓

 手探り状態でひとつずつイベントを切り盛りした初年度を振り返って、今後の課題を職員の櫨木裕子さん(写真右)はこう語ります。「今後さらに大学の国際化が進み、ISの数が増えてきたら、孤独感や勉強のことなど、悩みを抱える学生も増えてくるかもしれません。そうした時にICCをうまく活用してもらえるといいですね。もちろんISだけではなく、すべての学生が、ICCという小さな窓を通じて、世界に羽ばたくきっかけになれればと思っています。そして、近い将来、学内のあらゆる場所でISとLSが友情を深め、共に勉学に励むことが当たり前の風景になったら、ICCにはまたあらたなミッションが生まれてくると思います。常に変化し続けるニーズにいかに柔軟かつ積極的に対応していけるかということが、私たちスタッフの課題ですね」

 学内の他部署との連携も強化され、早稲田大学のグローバル化に新たな可能性を提示しているICC。今後の展開がますます楽しみです。

ICCサイト
http://www.waseda.jp/icc/

ICCでの経験を通じて成長を実感

森田 紗也加さん/学生スタッフリーダー(国際教養学部2年生)

 小学校、中学校と両親の仕事の都合でアメリカで過ごし、幼い頃からいろんな国の人と接する機会がありました。その経験を生かせる活動を探していたときに、学生スタッフリーダーの募集を見つけて応募しました。インターナショナル・スチューデントとローカル・スチューデントとの架け橋になれることや、自分自身も学内外でさまざまな出会いがあることに魅力を感じたからです。

 実際、日々この仕事を通じてさまざまなことを経験しています。「ジャパニーズ・フェスタ」やフランスの学生生活を紹介するカフェ・イベントの企画・運営を担当したり、障害を切り口とするダイバーシティ・プロジェクトのお手伝いを通じて、障害を持っている学生の日常を知ることができたり、何百人もの学生の前でICCを紹介するプレゼンテーションをしたりと、この一年間で成長したことを実感しています。これから本格的に自分自身の留学準備が始まりますが、留学先でもICCの経験を活かせそうです。

イベント・レポート 各国文化紹介企画
「ジャパニーズ・フェスタ」

 緑豊かな大隈庭園に面したICCラウンジの扉を開けると、そこは賑やかな笑い声に満ちていました。4月に新しく来日したばかりのインターナショナル・スチューデント(IS)を迎えるウェルカム・イベント「ジャパニーズ・フェスタ」の「日本舞踊体験」。ガラス張りの明るいスペースで、スポットライトに照らされた葵流の舞踏家の艶やかな舞いを息をのんで見つめるISと、うれしそうに見守るこのイベントの企画・準備を担当したローカル・スチューデント。少し前までは、なかなかキャンパスで目にすることのない光景でした。講師の先生方による舞踊の観賞の次は、いよいよ体験タイム。扇子の使い方を教わりつつ、「さくらさくら」を踊ります。日本文化に触れ、新しい友達もでき、楽しいワセダ・ライフの始まりです。