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キャンパスナウ

▼2017 錦秋号

第二世紀へのメッセージ

早稲田大学にゆかりのある方に、早稲田の魅力や目指すべき姿を語っていただきます。今回は、早稲田大学を卒業後、音楽大学で学び、指揮者として活躍している岩村力さんに、大学時代の思い出や大学に期待することをお聞きしました。

指揮者
岩村 力さん
略歴はこちらから

多様な価値観が集まる大学だからこそ、
平和で豊かな社会のためにメッセージの発信を

岩村 力さん/指揮者

視野を広げるため音大の前に早稲田へ

――早稲田大学理工学部を卒業後、音楽大学に進学されましたが、どのような経緯で指揮者を志したのでしょうか。

 声楽家である母が合唱団の指導をしている関係で、幼い頃から音楽が身近にありました。小学校の卒業文集では「管弦楽の指揮者になりたい」と宣言しています。高校卒業後は音楽大学に進学しようと思っていたのですが、母から「指揮者になりたいのなら音楽以外にも視野を広げたほうがいい」と助言を受け、音楽の次に関心があった電気関係の学科で学ぶことにしました。当初の計画通り、早稲田を卒業する年に桐朋学園大学音楽学部を受験したのですが、子どもの頃から吹いていたクラリネットで演奏学科に入り、ホルン科に転科して卒業。さらに研究科で指揮を専攻しました。8年間在籍し、卒業したときには32歳になっていました。

――早稲田での学生時代、印象に残っていることは何ですか。

オーケストラから学ぶ思いやりや協調性

――子ども向けのファミリーコンサートなど、次世代に向けた活動も多いですが、どのような思いで取り組んでいらっしゃいますか。

 また、クラシックのコンサートでは、耳を澄まして音楽を聴きます。騒々しい普段の生活では、耳を澄ますことってそうなかったりしますよね。古代ギリシャの哲学者ゼノンが「自然は人間に1枚の舌と2つの耳を与えた。だから人間は、話すことの2倍聞かなければならない」と言うように、耳を澄ますという行為は、相手の言葉に耳を傾けることにも通じるのではないかと考えています。

――学生や若者に伝えたいアドバイスをお聞かせください。

 若いうちは特に、異なるジャンルへ視野を広げることが大切です。私も音楽の道に入る前にまったく違う分野を学んだことで、思考回路に良い影響が与えられたと思っています。早稲田大学には多様なジャンルを志す仲間がいます。人付き合いを通じて、さまざまな分野を見聞きすることが、将来の活躍の幅を広げるのではないでしょうか。

目の前の学生たちに充実した毎日を

――今後、どのような指揮者を目指していますか。

 以前は、なるべく多くのオーケストラでタクトを振り、奏者全員に慕われる存在でありたいと思っていましたが、そもそも全ての人間と相性が合うということはありませんし、最近は、それが第一の目標ではないと思うようになりました。指揮者としてなすべきことは、スコアを通して作曲家と対話し、曲のイメージを演奏家に伝える“媒体”になることです。指揮台には、指揮者の存在感より、音楽そのものや作曲家が見えているという状態が理想です。

 また、指揮者として年を重ねることが楽しみで仕方ありません。同じ本を読んでも年齢によって感じ方が異なるように、曲に対する感じ方も変わります。元気に長生きして、音楽に触れ続けていたいと願っています。

――早稲田大学に期待することをお聞かせください。

 ひとつは、毎日、キャンパスに活力が溢れていることです。未来を語ることも大切ですが、目の前の学生がいきいきしていて、充実した毎日を重ねているかどうかが、大学の力を高める最も重要なことではないでしょうか。

 もうひとつは、社会への還元です。優秀な学生を輩出することはもちろん、世界に向けて早稲田大学のメッセージを発信していくことに期待しています。多様な価値観を持った人材が集まり、パワーに満ちた早稲田大学だからこそ、豊かな社会を実現するために発信できることがあると思います。

岩村力さん(いわむら・ちから)さん/指揮者

早稲田大学理工学部電子通信学科、および桐朋学園大学演奏学科を卒業。マスタープレイヤーズ指揮者コンクール優勝、グゼッラ国際指揮者コンクール第2位など数多くのコンクールに入賞。 95・97年フェラーラ市立歌劇場の招待を受け、クラウディオ・アバド氏のもとで研鑚を積んだほか、シャルル・デュトワ、チョン・ミョンフン、ジャン・フルネ、イヴァン・フィッシャーなどのアシスタントを数多く務め、国際的に活躍の場を広げている。2000 〜07年NHK交響楽団アシスタントコンダクターを経て、2010年より兵庫芸術文化センター管弦楽団レジデント・コンダクター。2015年、兵庫県功労者表彰(文化功労)受賞。