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キャンパスナウ

▼2016 盛夏号

第二世紀へのメッセージ

早稲田大学に関係のある方にお話を伺い、客観的な視点により、早稲田大学の魅力や課題を浮き彫りにします。

日本公認会計士協会 会長
関根 愛子さん
略歴はこちらから

自由で個性を生かせる校風により
幅広い視野を持った人材輩出を

関根 愛子さん/日本公認会計士協会 会長

公認会計士としてキャリアを積まれ、2010年日本公認会計士協会副会長、今年7月に日本公認会計士協会の女性で初となる会長に就任された関根さん。公認会計士という職業の可能性や早稲田大学に期待することをお聞きしました。

活躍の幅が広い公認会計士の仕事

――早稲田大学に進んだきっかけは何ですか。

 早大生だった姉の勧めで受験しました。理系科目が好きだったのですが、実験が得意ではなかったので、理工学部の数学科に進みました。元々、数字が何を意味するのか考えたり、物事を論理的に考えるのが好きだったんです。

――大学生活で最も印象に残っている出来事について教えてください。

 当時の理工学部は女性が少なく、約1700人中女子学生は20数人とかなり少数派でした。構内を歩いていると男子学生に「どこの大学?」と聞かれたことがあったくらいです。勉強以外では、1年生の時にブルースのバンドを組んで早稲田祭で演奏したことも。課外活動も楽しんでいましたよ。

――公認会計士を志した経緯をお聞かせください。

 大学を卒業して最初に就職したのは外資系の銀行でしたが、ずっと仕事を続けていくことを考えると「資格を取った方がいい」と感じるように。仕事で会計士の人と話をする機会があって、自分にあっているかもしれないと興味を持ったことがきっかけでした。その後銀行を辞め、ゼロから会計の勉強をして1年半後、試験に合格。27歳で公認会計士としてのキャリアがスタートしました。

 公認会計士の仕事の魅力は、さまざまな活躍の場があることです。最初は監査法人に入って、3年ほど実務経験を積む必要がありますが、その後は、そのまま監査法人で長く勤務する方もいますし、会計および監査の専門家として独立開業したり、企業のCFOになる方も多く、多くの選択肢があります。一般的には会議室等で腕まくりをして電卓を叩いているようなイメージかもしれませんが、実際は、担当する企業の工場まで出向き、在庫を確認したり、その工場の原価計算システムを確認するなど企業の実態を把握するための調査を行うこともあり、人と話すことも多い。さまざまな企業や団体と働けるのも刺激的で、アクティブな仕事です。

 また、グローバルなビジネスを展開する企業でM&Aや国際税務などの支援をする機会等、国際的に活躍できる場も増えています。

優秀な人材を確保し、監査の信頼回復に注力

――一方で、企業の会計に関わる不祥事も少なくないですが、不正を防ぐために公認会計士に求められていることは何でしょうか。

 不正を見抜く力とそれをきちんと説明する力です。世の中が複雑化し、企業が扱う情報も多岐にわたる現代においては、変化を敏感に察知し、物事を正確に捉える力が必要です。また、監査でチェックすべき項目は増える一方ですが、ITなどを導入して、例えば、企業の情報をAIなどでチェックし、AI が対応できない部分を人間が検討し判断するというような効率化を進めることも重要だと思います。

――日本公認会計士協会会長に就任されましたが、抱負をお聞かせください。

 副会長として6年務めてきましたが、その間も企業会計に関する不祥事があり、重責に身が引き締まる思いです。

 注力したいことは、第一に、公認会計士監査の信頼回復と向上です。第二に、日本社会を発展させるために、公認会計士が社会に貢献し活躍するための環境作りです。上場企業だけでなく、地域経済の活性化の鍵を握る中小企業や地方公共団体、医療法人や社会福祉法人などでも公認会計士のニーズは高まっています。第三に、多様性や国際性に適応できる優秀な人材を確保するため、公認会計士の仕事の魅力を広く伝えていくことです。ちなみに日本の公認会計士の女性の割合は14%に過ぎず、欧米と比べてもずっと低い。今後は女性活躍推進にも力を入れて取り組み、育休後の女性を対象とした復帰プログラムなども検討したいと考えています。そのような環境を整えつつある今、多くの女性にぜひ公認会計士試験にチャレンジしてほしいですね。

変化に対応できる力を身に付ける

――今、学生に伝えたいことは何でしょうか。

 学生時代は、なかなか先のキャリアを描くことは難しいものです。私も回り道をして公認会計士になりました。そのこと自体は悪いことではなく、有意義な経験ができたと思っています。しかしながら、私の学生時代と異なり、今は容易に多くの情報を得られます。多くの選択肢の中から選び取ることも難しいとは思いますが、卒業直後だけでなく、その後にも目を向けて職業を選んでほしいですね。さらに言えば、10年後の世の中は今とは変わっている可能性もありますから、変化に対応できる力を身に付けることも大切だと思います。

――早稲田大学に期待することをお聞かせください。

 監査法人でも日本公認会計士協会でも、早稲田大学出身者に出会うことがよくありますが、皆さんが活躍されている姿を通して、改めて早稲田大学の良さを実感しています。

 早稲田大学に期待するのは、自由で個性を生かせる校風を生かしながら、世界に羽ばたく人材を育成することです。これからの時代は、日本にいたとしても国際感覚は不可欠です。日本と外国の常識が違うことを理解し、広い視野を持った人材を輩出していただきたいと思います。

青森県の弘前公園の桜を見に行ったときの一こま

ホームカミングデーにて

関根 愛子(せきね・あいこ)さん/日本公認会計士協会 会長

1981年早稲田大学理工学部卒業後、外資系銀行を経て1985年に旧公認会計士試験第2次試験合格、2006年よりあらた監査法人(現PwCあらた有限責任監査法人)パートナー。2007年に日本会計士協会常務理事、2008年に国際会計士連盟(IFAC)国際会計士倫理基準審議会(IESBA)メンバーに。2010年に日本公認会計士協会副会長、2016年同協会会長に就任。