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キャンパスナウ

▼2016 早春号

第二世紀へのメッセージ

早稲田大学に関係のある方にお話を伺い、客観的な視点により、早稲田大学の魅力や課題を浮き彫りにします。

独立行政法人 日本スポーツ振興センター 理事長
大東 和美さん
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スポーツを通じて強い「個」を養ってほしい

大東 和美さん/独立行政法人 日本スポーツ振興センター 理事長

ラグビーのトップ選手として活躍した後、企業やスポーツ界で要職を歴任されてきた大東さん。これまでの歩みを振り返りつつ、早稲田大学で学んだこと、今後に期待することについてお聞きしました。

同志愛の精神に共感して

――高校時代にラグビーを始めたきっかけについて教えてください。

 中学生までは野球少年でしたが、ラグビーのユニークなボールの形状、15人という大人数で競うスタイルにひかれて、ラグビー部に入部しました。ただ、見るのとやるのとでは大違い。タックルやスクラムなどコンタクトプレーを辛いと感じることもありました。それでも不思議と止める気が起こらなかったのは、「ノーサイド」や「カマラデリー(仲間)」といった言葉に表される、ラグビー独自の考え方に共感していたからです。チームメイトはもちろん、試合が終われば相手選手も大切な仲間。そうした同志愛の精神に多くのことを学びました。

――早稲田大学に進学を決めた理由、また大学生活で最も印象に残っている出来事について教えてください。

 早稲田大学を進学先に選んだのは、運動部に民主的なイメージがあったからです。 当時、運動部に対してはどこか封建的な印象を持っていたのですが、早稲田大学ラグビー部については、個人を尊重する風土が根付いているという話がよく耳に入ってきました。実際、寮では先輩・後輩の上下関係に縛られることのないフラットな雰囲気でしたし、自由に使える時間も多く、文武両道を実践できる環境が整っていました。でも、ひとたびグラウンドに出れば常に真剣勝負。何ごとにも妥協しない厳しい空気のなか、練習や試合に取り組んできました。

 ただし私が入学して以来、早大ラグビー部は3年連続で大学選手権を勝ち抜くことができず、社会人チームと日本一を争う日本選手権への出場を逃してきました。だから4年生になり主将の指名を受けた時は、日本選手権への出場が至上命題となっていたのです。

 少しでも可能性があればそこに全力を尽くすのが早大ラグビー部のDNA。その気持ちを大切に、皆で心を一つにしてシーズンを戦い抜きました。結果、負け知らずで大学選手権優勝を飾り、さらには日本選手権では新日鉄釜石を破って、日本一の栄冠をつかむことができたのです。

 早大ラグビー部では、部歌として「北風」と共に大学選手権で優勝した時にだけ歌える「荒ぶる」が受け継がれています。特別な「荒ぶる」を冠婚葬祭などで歌うことが許されるのは、優勝した年の最上級生のみ。その権利を持っていることは、私にとって生涯の誇りとなっています。

――社会生活でスポーツの経験はどのように生かされましたか。また大学がスポーツに力を入れる社会的意義について、感じるところを教えてください。

 社会では多くの場面でチームワークが求められます。チームで良い結果を目指すには、メンバー一人ひとりが周囲と協調しながら、自分の役割を認識し、行動化することが欠かせません。スポーツはこうした強い個を養う良い機会となります。特に人間形成の面で大きな効果が期待できる。目上の人に対する礼儀や仲間との信頼関係の築き方など、読書では得られないものを体験的に習得することができますからね。

 早稲田大学では昔から文武両道を大切にしてきました。その歴史は、引き続き守り通してもらいたいと思っています。

リーダーは明るくポジティブであれ

1971年1月7日 秩父宮ラグビー場にて日本体育大学を破り大学日本一を飾る。この年は破竹の勢いで勝ち進み、念願の大学選手権、日本選手権優勝を成し遂げた

――リーダーに必要な資質とは何だと感じますか。学生にアドバイスがあればお願いします。

 リーダーに求められる素養は時代と共に変化するものなので、一概にはいえませんが、私が心がけてきたのは、常に明るくポジティブであることですね。後ろ向きのリーダーには、誰もついていこうと思わないでしょう。どんな人生にも、山もあれば、谷もある。一つひとつのことにくよくよせず、長い目線に立って歩を進めることが大切です。

 また、鹿島アントラーズの社長やJリーグのチェアマンなどを務めるなかで重要視してきたのが、“ ロマンとソロバン”のバランスです。勝利に向かって全身全霊を捧げる情熱はもちろん大切ですが、活動を続けるための資金をどう捻出し、環境を整えるのかといったことを考えるのも、リーダーの大切な役割です。

 私の場合は大学卒業後、プライベートで競技を続ける傍ら、会社では営業として真剣に仕事に取り組んできました。そうした幅広い経験がロマンとソロバンの両立に結びついていると感じます。学生の皆さんには、自分で道を狭めず、何でも興味を持って挑戦し、さまざまな経験を積んでほしいと思います。

 加えてグローバル化の時代ですから、語学力を磨き国際感覚を養うことも大切です。“Think Globally、 Act Locally"の精神をぜひ身に付けるようにしてください。

ウィニングカルチャーを未来に継承してほしい

――最後に、日本スポーツ振興センター理事長としての抱負、そして早大ラグビー部への期待についてお聞かせください。

 新国立競技場に関しては、昨年、方向性が明確となり、今後も建設コストやスケジュールなどの情報開示を心がけながら推進していきます。また、未来のアスリート育成も重要テーマです。スポーツ施設やサポートプログラムの充実に引き続き取り組み、その財源となるサッカーくじの「toto」に関しても国民の皆さんにご納得いただけるよう、透明性を高めながら運用していく考えです。ちょうど2015年10月にスポーツ庁が発足したところなので、そうした関連機関と縦横の連携を深めながらスポーツ振興に当たります。

 早大ラグビー部に関しては、2018年に創立100周年の節目を迎えます。昨今は苦戦が続いていますが、伝統のウィニングカルチャーを未来にしっかりと受け継ぐためにも、勝利にこだわり続けてほしいと思います。個人にもサポートを惜しみませんので、選手・関係者の皆さん、頑張ってください。

大東 和美(おおひがし・かずみ)さん/独立行政法人 日本スポーツ振興センター 理事長

1948年兵庫県生まれ。
報徳学園時代から始めたラグビーで頭角を現す。
早稲田大学では主将を務め1970年度の大学選手権および日本選手権で優勝。
1971年早稲田大教育学部卒業後、住友金属で営業に従事。
同社にはラグビー部がなかったため同好会などで競技を継続し、日本代表への選出、早稲田大学ラグビー部監督などを経験。
ビジネスでは住友金属で九州支社長を務めた後、2006年にJリーグの鹿島アントラーズ社長、2010年Jリーグチェアマンなどを歴任。2015年より現職。