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キャンパスナウ

▼2014 錦秋号

第二世紀へのメッセージ

早稲田大学に関係のある方にお話を伺い、客観的な視点により、早稲田大学の魅力や課題を浮き彫りにします。

元TBSアナウンサー
株式会社キャスト・プラス 取締役
吉川美代子さん
略歴はこちらから

思い切ったイメージ戦略で
外に開かれた早稲田ブランドの発信を。

吉川美代子さん/元TBSアナウンサー 株式会社キャスト・プラス 取締役

TBS一筋37年、女性アナウンサーとして報道番組の第一線で活躍されると同時に、後進の育成に取り組まれてきた吉川さん。早稲田大学での思い出や、アナウンサー時代の活躍、また、早稲田大学に期待することなどを伺いました。

教養を身につけ、人間力を磨いた学生時代

――どのような学生時代でしたか。

 子どもの頃からアナウンサーを目指していた私は、中高時代は放送部で活動し、大学はマスコミに強い早稲田を希望しました。夢と希望に満ちあふれた大学生活はしかし、当時激しかった大学紛争の影響で思い描いたものとは異なりました。なにせ、学生活動家が入学式に乱入し、壇上で挨拶をしていた総長を場外へ連れ出してしまい、入学式が中止になってしまったのですから。「すごいところに来てしまった!」と唖然としたのを覚えています。まともに授業が行われるようになったのは2年生の後期くらいでしょうか。

 キャンパス内が騒然としていたこともあり、放送研究会やアナウンス研究会に入部する時機を逃した私は、発想を転換し、大学というアカデミックな雰囲気の中で学び、教養を身につけ、多様な友人たちと交流することに力を注ぎました。いま思えば、アナウンサーとして必要な教養や人間力を磨く上で、とても意義のある時間でしたね。特に地方から集った同級生たちは本当に優秀で、さまざまな刺激を受けました。学生同士の会話も、政治や経済、芸術などと富み、高尚な内容が多かったように思います。

民法初の女性キャスターとしての道を切り開く

――大学卒業後はTBSに入社し、女性キャスターとしてキャリアを築く中で、どのような苦労があったのでしょうか。

 私がTBSに入社した1977年頃の放送局はとても封建的な男社会でした。私が報道をしたいと言うと「女のくせに生意気だ!」と呼び出されるような時代です。それでも諦めずに希望を訴え続けていると、入社6年目の1983年に、TBS初の女性キャスターとして全国ネットの早朝のニュース番組に抜擢されたのです。ただし、現場の大半は女性キャスターに反対していて、少しでも失敗すると「だから女はダメだ」と言われかねない雰囲気でした。男性記者から「俺の書いた記事を女の声で読ませるな」と目の前で言われたこともあります。それでも「世の中で起こっていることをきちんと伝えたい」という強い意志で乗り越えてきました。

 女性がニュースを読むことに少しずつ周りが慣れてきた1984年、TBSが総力をあげて取り組んだ報道番組「JNNニュースコープ」のリニューアルに当たり、キャスターに抜擢されます。それまで新聞の論説委員など錚々(そうそう)たるメンバーが出演していた番組です。メインキャスターにTBS記者の田畑光永さんが決まり、もう一人女性をということで、報道局のメンバーが私を推薦してくださったのです。応援してくれる人がいることに勇気づけられ臨んだ「JNNニュースコープ」は、視聴率でNHKの夕方のニュース番組を抜き、他の民放を寄せつけない人気番組になりました。

幅広い教養を身につけ人間力を磨いてほしい

――社会で活躍する中で、早稲田で得たことが生かされていると感じることはありますか?

 「自分から動く」という姿勢です。報道の現場では、正確な情報が求められます。アメリカの情報を知りたいときはアメリカ大使館に電話をして聞きますし、それが難しいならば大学教授などの専門家に聞く。そうやって自ら動かなければ、最高の情報に触れることはできません。こうした「自分から動く」姿勢は、早稲田の放任主義のおかげで身につきました(笑)。大学に行って掲示板を見なければ情報を得ることはできませんでしたし、単位の計算も自己責任。今の若者は簡単にインターネットで情報を得るため、そうした自ら動くという姿勢が足りないように思います。

――学生へのアドバイスをお願いします。

 私が13年間校長を務めたTBSアナウンススクールには早稲田の学生も多くいますが、最近の学生は、頭は良いけれど小さくまとまっているような印象があります。もっと個性的でも良いのではないでしょうか。専門的な知識や技術の修得も大切ですが、心を豊かにし、人間性を高めるような幅広い教養も身につけてほしいと思います。新聞や本を読み、美術館や劇場で一流の芸術に触れる。また、声を出し相手の目を見て話すことを心がけて、会話力をつけてほしいですね。そうして日々の研鑽を通して身につけた教養や感性は、人間的な魅力となり、個性を輝かせてくれるでしょう。

思い切った変革で新しい早稲田イメージを

――早稲田大学に期待することをお聞かせください。

 早稲田は他大学と比べて、ブランディングやイメージ戦略が弱く、内向きのように感じます。そのため、大学のブランドではなく個人の力で勝負している人が多いです。もっと早稲田の伝統と、圧倒的な数の利を存分に生かしてほしいと思います。ノスタルジーではなく、もっと外に向けて発信しても良いのではないでしょうか。マイナーチェンジを繰り返すのではなく、ぜひ思い切って発想を転換し、早稲田ブランドを盛り上げてほしいと願います。

吉川美代子(よしかわ・みよこ)さん/元TBSアナウンサー 株式会社キャスト・プラス 取締役

1954年神奈川県生まれ。1977年早稲田大学教育学部卒業後、TBSに入社。『JNNニュースコープ』、『JNNニュースの森』、『CBSドキュメント』など多数の報道番組の司会者を務め、近年は『ウォッチ!』や『朝ズバッ!』など情報番組のコメンテーターとしても活躍。また、13年にわたりTBSアナウンススクールの校長として後進の育成にあたる。2014年5月に退職後は、日本テレビやフジテレビなど他局の番組へのゲスト出演をはじめ、大学での講演や企業の研修など幅広い分野で活躍している。主な著書に『ラッコのいる海』(立風書房)、『アナウンサーが教える 愛される話し方』(朝日新書)。