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キャンパスナウ

▼2014 新緑号

第二世紀へのメッセージ

早稲田大学に関係のある方にお話を伺い、客観的な視点により、早稲田大学の魅力や課題を浮き彫りにします。

インテル株式会社 代表取締役社長
江田 麻季子さん
略歴はこちらから

多様な背景・価値観を持つ仲間たちが
目の前の世界を大きく開いてくれた。

江田 麻季子さん/インテル株式会社 代表取締役社長

目まぐるしく変化するIT業界において、半導体メーカーとして確かな存在感を発揮し続けるインテル。江田さんは、米国でのビジネス経験やリーダーシップ力を生かして要職を歴任し、昨年日本法人のトップに就任されたばかり。そんな江田さんは、早稲田大学について「さまざまな世界に触れる機会をくれたところ」と振り返ります。まさに原点ともいえる学生生活を通して何を学び、どのように新しい世界を開拓されてきたのか、これまでの歩みについてお聞きしました。

「やりたい」ことには何でもトライ

――早稲田大学を選ばれたのはどうしてでしょうか。また、どんな学生生活でしたか。

 私は高校生の頃から「大学では社会学を学ぼう」と心に決めていました。社会学は、統計学などの手法を用いて理論を構築しつつ、理屈だけでは決して捉えきれない、個や組織、国家の営みについて研究する学問です。そんな、サイエンスとヒューマニティーの両面を持ち合わせている点に、強く惹かれていました。早稲田大学を選んだのも、社会学の領域が非常に充実していたことが理由です。

 入学後は、家族社会学をご専門とする正岡寛司先生のゼミに入り、ライフステージの研究に取り組みました。広島出身で被爆体験をされている先生ご自身のお話も大変興味深く、強く印象に残っています。何より刺激的だったのは、自由闊達な雰囲気の中で、日本全国や海外から集まった、いろいろな経験、世界を持つ学生たちと出会えたことですね。生まれも育ちも東京で、中学・高校は女子校通いという私にとってそれは、目の前の世界が大きく開ける体験でした。在学中は、バスケットやバンド活動など、心の赴くまま何でもトライしてきましたが、そういう充実した生活をおくることができたのも、「やりたい」と思ったことを可能にしてくれる仲間がいたからこそだと感じています。

インテルと早稲田には共通点がある

――卒業後に渡米されています。海外を意識するようになったきっかけや、その後の道のりについて教えてください。

 私が学生だった頃の日本は、男女雇用機会均等法が施行されたとはいえ、女性が活躍できるフィールドはまだまだ限られていました。でも私は、自分の可能性を最大限に追求して何でもできるようになりたいと思っていました。そういうことが叶う環境を探し求めるうち、自然と海外に目が向いたのです。

 留学費用は、親に頼らず奨学金制度を活用して自ら工面しました。誰からの庇護(ひご)も受けない代わりに、好きなように自分の道を決めていきたい。そんな思いからでした。海外で生活することへの不安などみじんもなく、とにかくまっすぐに突き進んでいましたね。今振り返ると、つくづく「若いって素晴らしい」と思います。

 留学先でも社会学を学び、大学院修了後は現地の会社に就職。マーケティングの仕事に携わりました。うれしかったのは、入社直後から一人前として扱ってくれたことです。国籍や性別、年齢などではなく、これまで私が学んできた知識やスキルを見て仕事を任せてくれました。その分プレッシャーがあったことも確かですが、上司がビジネスの基本から根気よく教えてくれたおかげで、着実にステップアップすることができました。

 10年近くにわたった米国での暮らしに終止符を打ったのは1997年。高齢になった親が心配だったほか、ひと通りのことは経験できたという達成感もあって、日本への帰国を決めました。マーケットリサーチのマネージャーを探していたインテルから声をかけられたのは、帰国から約3年後のことです。創業者メンバーの一人であるアンディ・グローブの著書を通し、以前から魅力的な会社だと感じていたため、迷うことなく入社を決めました。

 インテルは、コミュニケーションが活発で、実力次第でいろいろなチャンスをもらえるなど、早稲田大学と似て、自由闊達な社風が特徴です。私にとっては非常にワクワクする、居心地のいい環境といえます。

――リーダーとして気を配っていることについて教えてください。

アジア勤務時代の休日

 組織がスピーディーに動ける環境を整えることに、一番重点を置いています。そのために、組織を構成する個々の考え方や、行動パターンを理解するよう努めています。こうした姿勢は、社長に就任する直前まで務めていた、アジア太平洋地域をカバーするマーケティング販売本部の本部長時代に培ったものです。

 当時、本部には100名ほどの人材が所属しており、出身地は26の国と地域にまたがっていました。多種多様な文化・習慣を持つメンバーの集まりなので、時にはびっくりするような考え方や行動が見られることもあります。大切なのは、その背景にある理由をしっかりと引き出すこと。私は彼ら、彼女らの声にしっかり耳を傾け続けることで、互いに理解を深めることができました。

 また、突き詰めると面白いもので、皆が目指すのは「やりがいのある仕事を通して会社に貢献し、幸せな家庭を築くこと」であり、根本部分は大差がないものなんです。そうしたことに気付かされたのも、大きな収穫でした。

 そんなふうに、多様な人材と触れ合いながら新しい発見ができる環境に身を置くこと自体、私にとっては楽しくて仕方ありません。考えてみると、自分の根底に流れているのは人に対する飽くなき好奇心であり、それは社会学を勉強した学生時代からずっと変わっていないように感じます。

目の前のことに一直線に取り組んでほしい

――グローバルな視点で活躍する上で求められる資質とは何でしょうか。併せて、早稲田大学に期待することも教えてください。

 国際社会の変化スピードは、年々速くなってきています。だからこそ、グローバルで活躍するには高い順応性が欠かせません。視野を広げるためにも、自分とは違う価値観や背景を持つ仲間を、たくさんつくることが大切でしょう。私自身、早稲田大学をはじめとする、さまざまな場での出会いに支えられて、今があると実感しています。

 その意味で、早稲田大学が国際学生寮をオープンさせたことは、素晴らしい取り組みですね。これからも学生たちが世界中の人々と交流できる場を、積極的につくっていってほしいと思っています。

――日本ではまだ数少ない女性経営者として、女子学生に向けたエールをお願いします。

 私は将来的に、女性経営者が珍しくない世の中を実現したいと思っています。そのためには私たちの世代が率先して環境を整えていかなければ、と考えています。私も一生懸命頑張りますので、学生の皆さんにもお願いしたいことがあります。それは、自らに“リミッター”を設けないこと。結婚するかもし 「この先、結婚するかもしれないから」「子どもができるかもしれないから」と、先々のことを考えてセーブするなんてナンセンスです。ぜひ、「やりたい」と思ったことには一直線に取り組んでみてください。

江田 麻季子(えだ・まきこ)さん/インテル株式会社 代表取締役社長

1988年早稲田大学第一文学部哲学科社会学専修卒業。1990年、米アーカンソー州立大学大学院修了。その後、米国の大学病院などでマーケティングに携わる。1997年日本に帰国し、日本マーケティング・リサーチ協会を経て、2000年インテル株式会社へ入社。マーケティング本部長として、ブランド、マーケティング・キャンペーンや法人営業部門を統括する。2010年には香港のインテル セミコンダクター(アジア・パシフィック地域統括)でマーケティング&コンシューマー・セールスの本部長を務める。2013年より現職。