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キャンパスナウ

▼2013 錦秋号

第二世紀へのメッセージ

早稲田大学に関係のある方にお話を伺い、客観的な視点により、早稲田大学の魅力や課題を浮き彫りにします。

リクルート進学総研所長
リクルート『カレッジマネジメント』編集長
小林 浩さん
略歴はこちらから

早稲田の個性を広く伝え
時代が求めるリーダーの育成を

小林 浩さん/リクルート進学総研所長、リクルート『カレッジマネジメント』編集長

全国の高等教育機関の調査を行い、高校生に進学先を選ぶための情報を提供し、高等教育機関に経営戦略や学生募集のための提言を行うリクルート進学総研所長の小林浩さん。学生時代の思い出や早稲田大学の現状、期待することについてお聞きしました。

学風にひかれて早稲田に入学

――早稲田大学ではどのような学生時代をお過ごしでしたか。

 大学では法学部に入って弁護士になろうと考えていました。そこで、全国からいろいろな学生が集いエネルギーに満ちた、懐の深い大学で勉強して立派な弁護士になりたいと思い、早稲田を選びました。ところが入学してみると、学費闘争の影響で授業が休講になりがちだったこともあって、司法試験から気持ちが離れていき、その代わりにサッカーに情熱を注ぐようになりました。当時、早稲田の専任講師だったサッカー日本代表の加藤久先生を顧問にサークルを立ち上げ、サッカースクールなどの手伝いをしたりしながら、先生から大いに薫陶(くんとう)を受けました。就職先は、都市銀行からも内定をもらっていたのですが、随分迷って当時ベンチャー企業で社会を変えていくことができると考えたリクルートを選びました。早稲田で学んだからこその選択だったと思います。

大学が学生の質を保証する時代

――リクルート入社後、教育分野を中心にご活躍され、現在は『カレッジマネジメント』編集長として日本の高等教育について取材を続けていらっしゃいますが、日本の大学が置かれている現況をどのようにご覧になっていますか。

 日本の高等教育を取り巻く環境を見ると、2005年あたりから人口が減少に転じているため、企業も国の政策としても、働き手を確保するためにグローバル化が避けられません。そのためトップ層だけでなく、中間層にも語学力やダイバーシティへの理解が求められるようになってきました。これからの時代に必要なのは、多様な価値観の人々をリードすることができ、主体的に考え、答えを見出し、チャレンジを続けられる人材です。

 日本の大学進学率は、1990年は25%でしたが、現在は50%となっています。大学には、この分厚い中間層をさらに底上げするとともに、リーダー層を育成することが求められています。中間層を底上げするためには、受動的な学生を4年間で主体的な人材へと育成するカリキュラムを構築しなければなりません。当然、どの大学もそのことは理解していますが、新しいカリキュラムのPDCAサイクルには、最低でも該当学生が卒業する4年後までかかるため、企業に比べると改革のスピードが遅いと言われがちです。しかしながら、計画を実行に移すまでの意思決定を速くすることは可能です。そうした必要性も含めて、今後は、教授会による運営から、理事会による経営へと大学のガバナンスが移っていくのではないかと言われています。

 世界に目を転じれば、米国では、大学や大学院の授業をインターネットで世界中に無料で配信するMOOCs(MassiveOpen Online Courses)が広まりつつあり、単位認定を受けられるコースも登場しています。こうした場所や時間にとらわれない新しい動きを見ると、大学は、4年間大学のキャンパスに通って学ぶ価値は何かを再定義し、どんな学生を育成するのかの責任を明確にしていくことが重要です。従来は、教える側の視点で学生に知識をインプットするという考え方でしたが、世界的な潮流ではアウトカム、すなわち、学生の視点で何ができるようになったのかという質の保証をしていこうという動きがあります。最近では、OECDによる国際的な大学生の学習成果についての調査(AHELO:Assessment ofHigher Education Learning Outcomes)も始まっていて、国境を越えた質の保証が求められています。日本の大学も、面倒見の良い大学であるよりも、能動的に動ける学生を育てる大学へと変わっていかなければなりません。授業の方法も工夫する必要があり、大学の先生たちが、まず変わらなければならないと思います。

 しかしながら、すべての大学が同じである必要はありません。日本には現在800近い大学がありますが、私立大学は建学の理念を生かしながら、ある大学は研究中心、ある大学は社会人学生がターゲットと、それぞれの役割を果たしていけばよいと思います。

個性を分かりやすく伝えることが重要

――校友でもあり、お仕事として本学への取材も度々されていますが、早稲田大学の現状をどのように捉えていらっしゃいますか。また、早稲田大学は外からどのように見られているとお感じですか。

小林さんが編集長を務める『カレッジマネジメント』

 リクルートの進学ブランド力調査によると、関東では個性が強くパワーのある大学という学風が伝わっていますが、関西では東大の滑り止めという程度のイメージしかありません。関東地方以外では早稲田のイメージは薄れています。2000年以降、いろいろな大学が危機感をもってイメージ戦略やブランド化を図っています。早稲田といえども、もっと裾野を広げて個性や魅力を積極的に伝えていく必要があるのではないでしょうか。

――「Waseda Vision 150」について、どのようなご感想・ご意見をお持ちでしょうか。

 20年後の早稲田大学について、具体的な数値目標を提示しているところが良いですね。一方、4つあるVisionのひとつに「グローバルリーダーとして社会を支える卒業生」とありますが、どんなグローバルリーダーを目指しているのかがイメージしづらく、説明も長い。高校生にも分かりやすくひと言で伝えていかないと、他大学との明確な差別化が図れません。以前の取材の際、早稲田らしいリーダー像を鎌田総長は「現場で汗を流すリーダー」、白井前総長は「地を這うリーダー」と表現されました。私が早稲田の卒業生を表現するとしたら「批判的精神をもったリーダー」でしょうか。大切な母校に、志を持った多様な学生が集まるように、早稲田で学ぶ価値を明確化し、その個性、魅力をもっとアピールしていってほしいと思います。

小林 浩(こばやし・ひろし)さん/リクルート進学総研所長、リクルート『カレッジマネジメント』編集長

1964年生まれ。1988年早稲田大学法学部卒業、株式会社リクルート入社後、グループ統括業務を担当、「ケイコとマナブ」企画業務を経て、大学・専門学校の学生募集広報などを担当。経済同友会に出向し、教育政策提言の策定にかかわる。その後、経営企画室、コーポレートコミュニケーション室、会長秘書、特別顧問政策秘書、進学カンパニー・ソリューション推進室長などを経て、2007年より現職。文部科学省中央教育審議会高大接続特別部会臨時委員。
カレッジマネジメント編集長コラム