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第二世紀へのメッセージ

見城 美枝子さん 略歴はこちらから

早稲田の伝統に誇りを持ち次の125年に受け継ぐ

見城 美枝子さん/青森大学社会学部教授

 教育、環境、農業……と幅広い分野に造詣が深く、青森大学社会学部で教鞭をとる傍ら、コメンテーターやエッセイストとして活躍されている見城美枝子さん。大学・大学院時代の思い出や本学に期待することなどを伺いました。

あらゆることに全力投球した学生時代

――学部時代の思い出をお聞かせください。

 私の学生時代は、今思い返してみても、とても充実していましたね。早稲田界隈に下宿していたのですが、当時から食べることを大切にしていたので、自炊が出来る家を探しました。八百屋さんで野菜をまけてもらったり、同じ下宿の人と仲良くしたり、すべてが楽しくて、まさに青春でした。

 高校2年生の時にアナウンサーを志して早稲田を受験したので、さっそく放送研究会に入部しました。魅力的な先輩、後輩と知り合い、先輩を尊敬する気持ちや仲間との友情を学びました。今になってもあの頃の仲間たちと、よく話をします。

 また、フランス語を学ぶためにアテネフランセに通い、今で言うところのダブルスクールもしていました。学生時代に喫茶店に入った記憶もないくらい、多忙な日々を送っていました。

――キャスターとしてご活躍の中、本学大学院理工学研究科に社会人入学されたのは、どのような思いがあったのでしょうか。

 社会に出てからは、アナウンサーの仕事と4人の子育てで、力を出し切る一方でした。45歳の頃には、自分の原資が底をついてしまったという感覚がありました。中味を充実させ、自分を再生したいと思ったのです。これからもフリーで仕事をしていくためには、社会のニーズになる種を持とうと考え、一番下の子どもの小学校受験が終わったときに、今度は自分が、大学院を受験することにしました。

 長年の海外取材で、欧米人と日本人の言葉、発想、行動の違いを実感し、日本人のアイデンティティについて興味を持つようになりました。相撲には「はっけよいのこった」という掛け声がありますが、「準備はいいですか?(八卦良い?)ではどうぞ」という意味があります。ボクシングならすぐにでもパンチしますが、相撲では相手の状況を配慮するのです。これは、結論が最後に来る日本語と結論を最初に述べる英語の違いにも見られます。感覚で掴んでいた日本人の特性を理論づけるために、大学院で学ぼうと思ったのです。

社会に出てからリタイアするまでに必要なことを教えたい

――大学院では、どのような研究をされましたか。

 7年間、住宅の番組を担当していたこともあって、興味があった建築学を専攻し、住空間によって育まれてきた日本人の礼儀や所作について研究しました。例えば、日本の家はふすまで仕切られているので、部屋の外の気配を感じる文化があります。それに対して欧米の家は、壁とドアで仕切られているため、完全に外とは遮断されていて、来訪者はノックをして存在を示します。日本人が、日本家屋のDNAを持ったまま欧米の家に住むようになると、ソフトとハードのギャップがさまざまな事象を引き起こす……そういったことを理論づけて多くの人に伝えたいと考えました。たまたま建築でしたが、自分が7人いれば7研究科に行き、いろいろなアプローチで日本人について学んでみたいです。

――15年前より大学で教鞭をとられていますが、どのような講義をされていますか。また、学生に対してどのような思いで教壇に立たれていますか。

 大学では3つの科目を受け持っています。「メディア文化論」では、情報を分析して評価するメディアリテラシー、「建築社会学」では、住空間が社会的にどのように人を育んでいるかということを教えています。もう一つの「環境保護論」では、食料問題を中心に現場に学生を連れて行って指導しています。

 講義のモットーは、大教室でも肉声で話すことです。そうすると自然と前のほうに集まってきてくれます。レポートは手書きで提出させます。手で文章を書くと、脳と手が活性化するからです。私自身、パソコンを使うようになってから何かが欠落しているような気がしてなりません。講義の共通項は人と社会。授業を通して、学生が社会に出てからリタイアするまでに必要なことを教えたいと思っています。

百聞は一見にしかず 五感を使って行動しよう

――早稲田大学OGの集まりである「稲門女性ネットワーク」の会長を務めていらっしゃいますが、女子学生へのメッセージをお願いします。

 私は早稲田に入って本当に良かったと思っています。卒業して、その良さがさらに分かりました。在学中に多くのことを吸収して、自分のものにしてほしいですね。今の学生たちは、点と点を一本線で効率的に結ぶことを良しとしているように思います。私たちは、あちらこちら寄り道して、その過程で多くのことを学んだような気がします。本来早稲田は、そのような雰囲気の大学ではないでしょうか。今の世の中では、女性のほうが男性より選択肢が多いですし、自由だと思います。そのメリットを生かして、社会に役立つ人間になってください。

――お母様の立場として、子どもたちに伝えたいことはありますか。

 インターネットだけで世界を見たような気になってほしくありません。寺山修司の「書を捨てよ、町へ出よう」はさまざまなことを示唆してくれる本ですが、内(インター)にこもっていないで、外に出かけ五感をフルに使ってほしいですね。そもそもホモサピエンスは、歩く人という意味だそうです。人間は歩くことが大事です。家庭では、子どもが小さい時から「百聞は一見にしかず」ということを示唆するべきだと思います。

――次の125年を歩み出した早稲田大学に期待することをお聞かせください。

 大隈講堂のような建物や、創立者の意志など、早稲田にはたくさんの伝えるべきものがあり、それは非常に幸せなことだと思います。これまでの125年を誇りに思うと同時に、次の125年に早稲田の伝統をしっかり伝えていってほしいです。多くの人を介して伝統は何百年も受け継がれていきます。学生にもそのロマンを感じてほしいですね。

見城 美枝子(けんじょう・みえこ)さん/青森大学社会学部教授

群馬県館林市出身。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業。大学卒業後、アナウンサーとして活躍し、独立後は、中教審などの政府各種委員を歴任。子育てが一段落した40代の時に早稲田大学大学院理工学研究科に入学。建築学の視点で日本人について研究した。現在、青森大学社会学部教授として、メディア文化論、建築社会学、環境保護論を講義。著作、講演、テレビなどでも活躍中。