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キャンパスナウ

▼7月号

第二世紀へのメッセージ

藤原 和博(ふじはら・かずひろ)さん 略歴はこちらから

今、学生に必要なのは「生きるための技術」

藤原 和博さん/杉並区立和田中学校・前校長

民間初の中学校校長を務められたご経験から、大学教育への期待を語っていただきました。

──これからの大学に求められることは何だとお考えでしょうか。

 学生たちが国際社会で生き抜くための教育やネットワークづくりだと思います。

  近年、日本では価値観の多様化が進み、みんな同じことをしていれば幸せだった時代から、自分が幸せだと感じるために自ら未来を切り開いていかねばならない時代を迎えています。社会のあらゆる分野で「みんな一緒」から「一人一人それぞれ」へのシステム・チェンジが行われているのです。

 そうなると、世界に飛び込む時に自分をアピールするための国際競争力を身につけねばなりません。これまでは所属する組織にすがりついていた人も、組織のパワーをうまく生かしつつ、「自分のキャラ」を生かし表現する技術が求められます。日本の大学はその技術を教えるべきではないでしょうか。

 同時に、学生たちがネットワークを構築するための拠点づくりやサポートなど、国際的な付加価値を生み出すことも求められるようになるでしょう。私も校長時代、保護者の皆さんから「子どもたちを将来留学させたい」という声をよく聞きました。必ずしも商社マンや外交官の家庭ではなく、普通の家庭でもそう考える時代まで来ているのです。

──大学教育に足りないと思う点はどんなことでしょうか

 人生を歩んでいくための導入教育です。今の学校教育では、例えば、本の読み方、ディベートの方法、物の捨て方、テレビとの付き合い方など、自分の人生を自分で編集していくための技術、つまり「自分の人生のオーナー」として生きていく上で必要な技術を教えてくれません。私はその必要性を感じ、校長時代に子どもたちが「よのなか」と「自分」のつながりを感じるための授業[よのなか]科を創設しました。例えば、子どもたちに「あなたがゴムを使って商売をするならどうしますか?」という課題を出すと、「燃やすことのできるゴムでタイヤを作る」といったユニークな答えが返ってくる。そうやって「付加価値」の意味を知り、ベンチャービジネスが理解できるようになるというような授業です。[よのなか]科は全国の小中学校で始まっていますが、まだ普及には時間がかかります。[よのなか]科に通じる「生きるための技術」教育を大学でも行ってほしい。学生たちも、保護者の方々も望んでいることだと思います。

──早稲田大学への期待をお聞かせください。

 ノンプロフィットのためのマネジメントスクールの設立です。その一番のニーズは校長先生だと思います。現在の学校の先生は、授業のための技術習得、部活動などの生活指導、その他事務など、やらなければならないことがたくさんあるため、校長先生になった時に学校をマネジメントする技術が身についていません。その上、サラリーマンのように部下もいないため、人を動かすリーダーシップが養えないのです。そこで、企業のマネジメント層にも教壇に立っていただき、校長先生たちに指導をしてほしいと思います。

 また、私のように教育以外の分野で働いてきた人の人脈を学校に取り入れるために、民間で校長先生を志望する人たち向けの教育界を学ぶビジネススクールという意味もあります。

 私は義務教育改革の必要性を痛切に感じ、民間から校長先生になりました。ぜひ早稲田大学にも力をお借りできれば、日本の子どもたちの未来は変わっていくと思います。

藤原 和博(ふじはら・かずひろ)/杉並区立和田中学校・前校長

1955年生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、(株)リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、ヨーロッパ駐在、同社フェローなどを経て、02年からビジネスマンと兼務で杉並区教育委員会・参与に就任。その後、小中学校での教育改革にかかわる中で自ら開発した[よのなか]科の実践が話題になり、03年4月から08年3月まで杉並区立和田中学校校長を務める。都内では義務教育分野で初の民間人中学校校長。本学とのつながりとしては、「大隈塾」への参加、早稲田大学社会安全政策研究所所長兼大学院法務研究科教授の石川正興氏主催の社会安全政策研究所設立1周年記念シンポジウム「地域社会における新たな少年非行対応ネットワークの構築の可能性―杉並区の取り組みを中心に―」への参加などがある。