早稲田大学の教育・研究・文化を発信 WASEDA ONLINE

RSS

読売新聞オンライン

ホーム > キャンパスナウ > 2015 錦秋号  Front Runner―活躍する若者―

キャンパスナウ

▼2015 錦秋号

Front Runner―活躍する若者―

学生生活のなかで身につけた視点や能力を活かして活躍している学生と若手校友をクローズアップして紹介するコーナー。 第7回は法学部3年の新藤晃平さんと、東京都立武蔵丘高等学校の中里有希さんにお話をうかがいました。

人生のどこかで、思い出してもらえるような教師に

略歴はこちらから

中里 有希さん/東京都立武蔵丘高等学校

 教師になりたいと思ったのは高校3年のとき。ある先生の古典の授業に魅せられ、あんな風に教えてみたいと人生の目標ができた。第一志望を祖父の出身校でもあった早稲田大学の教育学部に決め、自己推薦入試で合格。町田守弘教授に出会い、国語教育という分野があることを知った。「町田先生は、授業にサブカルチャーを取り入れる新しい試みに挑戦されていて、私も大いに影響を受けながら、生徒の興味を引くような面白い授業を追求しています。教育学部は学科の人数も少なく、教授との距離も近いので、アットホームな雰囲気の中で勉強に集中できました」

 学生時代の仲間とは、今も定期的に早稲田大学国語教育学会の例会で顔を合わせ、交流が続いている。

 教員採用試験の狭き門を無事突破できたのは、専任の指導教官がマンツーマンで試験対策を講じてくれる「教員就職指導室」の存在が大きかった。3年生の終わりから通い詰め、何度も論文指導を受け、試験に臨んだ。「自分だけでは、十分な準備ができなかったと思います。教員就職指導室の先生のきめ細やかなサポートには本当に感謝しています」

 現在はまさに、大学で研究した授業の工夫を実践する毎日だ。資料に漫画や映像を使ったり、毎回最初の5分間を使って百人一首を一つずつ紹介したりとひと工夫。生徒の反応を見て、次の授業に生かし、常に改善策を考えている。最近では森鴎外の「舞姫」を取り上げた際、授業の最初にあらすじを配って、まず「仕事を選ぶか、恋愛を選ぶか」と問い掛けた。「生徒たちは、はっとしていました。自分たちの生活に置き換えることができると、明治の話も急に身近になりますね」

 教師として日々意識していることは、教師にとって生徒は大勢でも、生徒にとってはそうではないということ。街で卒業生に声を掛けられ「先生にたくさん叱られたけど、なぜかが分かったよ」「学校にいたときはいかに守られていたか、今になってよく分かる」と言われ、その思いを強くした。「彼らの人生の貴重な時間にどう関わることができるか、一人ひとりをよく見ながら、最善を尽くしたいと思います」

吹奏楽部の顧問として、生徒たちと合奏を楽しむ。定期演奏会で指揮を振ることも。

  時には、生徒と対立することもある。これだけは譲れないということを明確に示し、妥協はしない。「心の中は葛藤だらけです。いつもこの方法が正しいのか自分に問い掛けながら、生徒と向き合っています。いろいろな生徒がいるので、自分の経験だけでは分からないこともある。そんなときはベテランの先生に相談しながら判断しています」

 教師という天職を得て、新しい国語教育に挑戦し続ける中里さん。これからも多くの生徒と出会い、卒業後、ふとした瞬間に思い出してもらえるような教師になりたいと思っている。自分の子どもを持ったとき、定年間近になったとき、その時々の自分がどんな教師になっているのか、わくわくしながら、キャリアを重ねている。

中里 有希(なかざと・ゆき)さん/東京都立武蔵丘高等学校

東京都出身。2007年早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、東京都公立学校(高等学校)の教員に採用され、現在は2校目。国語(現代文、古文)を教え、第3学年の担任も務める。趣味はフルート。大学時代は早稲田大学交響楽団に所属。現在も個人レッスンを続け、吹奏楽部の顧問として生徒たちと合奏を楽しんでいる。