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キャンパスナウ

▼2017 錦秋号

Feature

国際性を育むキャンパス

Part4 世界で活躍する人材を育てる

 早稲田大学が進めるキャンパスの国際化の目的や、今後を見通して目指すべき「真の国際化」について、担当する理事や教員にお聞きしました。

Interview
日常の学生生活から豊かな国際性を養い“地球市民”として生きる

他大学に先駆けてきた国際化の歴史

早稲田大学 理事(国際担当)
国際学術院
森田典正教授

 早稲田大学は、1990年代半ばから国際化を加速させ、日本の諸大学に先駆けた取り組みを続けてきました。1991年のソビエト連邦崩壊をきっかけとしたグローバル化の流れを、94年に就任した当時の奥島孝康総長が本学に取り入れ、強いリーダーシップをもって推し進めました。98年には大学院アジア太平洋研究科を創設し、英語の授業のみで学位を取得できる本学初のプログラムを実施。さらに海外の大学とのトップ交流を積極的に行い、当時ほんのわずかだった海外協定校を在任期間中に約150校にまで増やしました。シンガポール国立大学やベルギー・ブリュッセル自由大学など、現在本学にとって重要な協定校との関係は、この時期に構築されたのです。国際化の方針は白井克彦前総長にも引き継がれ、2004年には外国人留学生と日本人学生が同じ環境の下、ほぼ全ての授業を英語で学べる国際教養学部が創設されました。後に同学部は早稲田キャンパスの中心部の11号館に移り、09年には新たに5学部で英語学位プログラムが導入されました。英語学位プログラムは今年度より文化構想学部にも設置され、現在は7学部13研究科で実施されています。現在、海外の大学・機関と結んでいる協定の数は企業や大使館等を含め779(91ヵ国)に上ります。この体制と実績も評価され、2014年には文部科学省から「スーパーグローバル大学創成支援」トップ型に採択されました。

留学の足掛かりとなる国際的なキャンパス

 協定校の増加、英語学位プログラム導入などの取り組みは本学の国際化・グローバル化を着実に進め、国籍や背景が多岐にわたる多様な学生・教員がキャンパスに集まりました。特に昨年度本学に在籍した外国人学生の総数は約7,000人にまで増加しています。少人数で実践的な英語を学ぶTutorial Englishや、多様な国の第二、第三外国語教育も併せて、キャンパスの国際化はハード・ソフトともに日本の大学で一番進んでいるといえます。学生は授業や課外活動、国際ボランティアやインターンシップなどを通して、外国人教職員・学生に出会い、外国語や異文化と日常的に接することで、異文化交流の経験を積むことができるでしょう。

 ただ、本学の進める国際化は、学生に学内での国際経験だけで満足してもらうためのものではありません。2032年度までに全学生の海外留学を目指している通り、本学が考える最も重要な国際経験は海外留学です。キャンパスで力を積んだ学生が留学をして、帰国後もキャンパスで途切れることなく世界を感じながら、留学経験を生かした学びを続けられる。そんな学生生活を全学生に送ってもらうために、海外留学と連続したものとして国際的なキャンパスがあるのです。留学は、言語・文化・学業・人付き合いを通して、日本にいたのでは体感できないホリスティックな経験ができます。これまで留学を経験した学生を数多く見てきましたが、その一人ひとりが語学レベルはもちろん、人間としても大きく成長しています。入学時まで海外経験が全くなかった「純ジャパ」の学生も同様で、例えば国際教養学部のある学生は、それまで海外経験はなかったものの、英語と中国語を勉強し、北京大学のダブルディグリー課程を修了しました。別の学生は、英語とフランス語を勉強し、4年間ずっと首席を取り続けて、卒業後にフランスの高等師範学校に奨学金を与えられ進学しました。そういった学生を見る度に、学生の可能性は底知れないものだと感じます。ですから、どの学部でも、海外経験がなくても、自分の可能性を信じて国際経験に挑戦してみてほしい。本学では留学生との交流イベントから、留学に伴うスキルアップや費用の支援まで、行く前も帰ってからも留学を生かせる環境・あらゆる機会を取りそろえていますし、きっと挑戦に見合う力がつくはずです。

これから求められるのは「プルリリンガリズム」

 留学を含む国際的な学生生活は国際教養学部を中心に確立されつつありますが、本学がこれから目指すのは、この流れを全学生へと広めることです。スーパーグローバル大学創成支援事業が進める国際競争力・国際通用性の向上には、学生全員の国際化が不可欠です。

 さらに一歩先を見通して、今後は母国語と英語に加えて違う言語を習得する「プルリリンガリズム(複言語主義)」を全学的に推し進めたいと考えています。現在、学生の留学先の半分以上は英語圏であり、特に米国への留学は圧倒的に人気があります。もちろん英語は世界の共通言語として大切ですが、英語圏は世界の一部でしかありません。これからは国を越える“国際化”ではなく、地球全体として国の境がなくなる“グローバル化”の時代であり、その中で求められるのは、母語以外にふたつ以上の言語を完璧でなくとも使用できるプルリリンガルな人材です。そのため、私は今教えている学生には非英語圏の大学での英語プログラムへ留学することを勧めています。例えば、2013年からはASEANの6大学と国際教養学部が連携し、母国語+英語+現地語でコミュニケーションを取りながら学ぶ「AIMS7 多言語・多文化共生プログラム」をスタートさせました。英語プログラムは世界の大学でのトレンドなので、同じような機会は今後増えていくと思われます。国際経験=英語だけではなく、複数の言語や文化の幅広い経験を積むことが、“地球市民”として生きる上で必ず役に立つでしょう。本学ではプルリリンガルな教員や職員の充実とともに、学生に挑戦を促していきたいと考えています。

真の国際教養とは?

国際教養学部長
PINNINGTON, Adrian J. 教授

 国際教養学部は、国や文化の違う学生が共通の言語で共に学ぶ「国際」、幅広い分野の授業の中から自分の専攻を見出していく「教養」というふたつの柱をもつ学部です。大きな特色といえるのは、国籍や育った環境、さまざまな文化的背景をもった多様な学生が机を並べ、同じように多様な教員の下で学んでいること、そして2004年の創設以来、99%の授業を英語で行っていることです。同学年の3分の1は外国人留学生で、毎年250人の単年度留学生もあわせれば、割合はさらに大きくなります。学生の多様性を生かすため、授業は少人数で参加型のものが多く、文化や考え方の違う人と直接意見を交わす機会が豊富に用意されています。

 ときには、政治的に緊張関係にある国同士の留学生が、授業中のディスカッションで衝突することもあります。しかし、その経験こそが本当の意味での国際化ではないでしょうか。国の境界が薄れ、国籍に大きな意味がなくなりつつある現代では、自分と異なる他者への理解と共存について常に考える必要があるからです。本学部では、誰でも自由に発言できる自由な雰囲気の下で、集まった全ての学生が真の国際化、生きた国際コミュニケーションを学ぶことができています。日本に住んでいるとなかなか気付けないことですが、留学生は「日本の大学では誰でも自由に発言させてくれるんだ」と驚き、そこに大きな魅力を感じてくれているのです。

 日常的に留学生と交流できる環境は、日本人学生にも良い影響を与えています。日本や本学に期待して留学し、授業や課外活動に意欲的に取り組む留学生と接することは大きな刺激になりますし、異文化と接することで自分が無意識に持っていた価値観も見えてきます。互いに刺激し合い、モチベーションを高められる環境にいるため、本学部の学生は学内外で勉学、芸術、交流活動に参加して国際性を養い、世界中に幅広い人脈を作っています。

 良い影響が受けられるのは、本学部の学生に限りません。留学生は、学内の交流イベントやグローバルエデュケーションセンター提供科目、学生寮、サークルなどを利用して他学部の学生とも交流しており、異文化に触れる機会は全学生に用意されています。異文化交流という言葉に壁を感じてしまう学生の皆さんもいるかもしれませんが、その壁は自分が作り出しているに過ぎないもの。ぜひどの学部の学生も、日本語による日本人だけの環境にとどまらず、より挑戦的な環境を求め、活用してほしい。語学に自信がなくても、まずは留学生に声を掛け、イベントや授業、そして留学へと、もっと“Ambitious”になって挑戦することで自然と国際性は磨かれていきます。

 時代に合わせ、国際教養学部は今も進歩を続けています。母国語と英語だけでなく、第3、第4の言語を使えることは、世界を舞台に活躍するうえで武器になる。そのため非英語圏への留学プログラムや、プルリリンガルな教員の充実も図っています。一方、留学生の期待に応える授業内容や制度、サポートの向上にも引き続き取り組みます。留学生も日本人学生も多言語を習得できるような教育環境を整え、グローバルスタンダードなプログラムを提供していくつもりです。