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キャンパスナウ

▼2017 錦秋号

Feature

国際性を育むキャンパス

「Waseda Vision 150」では、グローバルに活躍できるリーダー育成のため、全学生に海外留学の機会を提供することを掲げ、多様な留学制度・体系を整備しています。また、全国一の外国人学生数を誇るキャンパスでは昨年度の在籍総数が7,000人を超え、外国語教育や外国人学生との交流等さまざまな機会を用意しています。日常を通して国際性を育み、留学前後のスキルアップも図ることができる環境を早稲田では整えています。

早稲田で鍛えるコミュニケーション力

異文化コミュニケーションの基礎となる語学教育。グローバルエデュケーションセンター(GEC)が用意しているプログラムについて、企画運営を行っている教員に語っていただきました。

実証実験に基づいて構築したチュートリアルイングリッシュ

グローバルエデュケーションセンター
近藤悠介准教授

――早稲田大学の語学教育には多彩な科目が揃っていますが、これまでどのように進化を遂げてきたのか、その変遷をお聞かせください。

近藤

2002年にチュートリアルイングリッシュが開始するまで、語学の授業は40~50人のクラスが一般的で、参加型とは言い難いものでした。2001年には、ひとクラス当たりの人数を段階的に減らして効果を測る実証実験を行い、最終的に4人であれば全員参加が可能になるという結論に。現在の「チューター1人に対し生徒4人」のスタイルが確立しました。2003年以降は、ヨーロッパで外国語の修得状況を示す際に使われているガイドライン「CEFR(Common European Framework of Reference for Languages)」に合わせた6レベル計120レッスンのプログラムが完成しました。チューターの養成も徹底していて、ワークショップやモニタリングを通して厳選された人材がそろっています。

田中

学生からの根強い支持もあり、他大学にはない素晴らしい英語教育プログラムだと自負しています。

近藤

こうしたプログラムの仕組みづくりは、実際の指導経験やテキスト編纂の経験があり、全体を俯瞰できる人がいないとうまくいきません。改革に尽力された中野美知子先生(当時)、さらに中野先生を支えた職員の存在も大きかったのではないでしょうか。

田中

当初の履修者は300人程度でしたが、2003年に政治経済学部で必修にしたのを皮切りに増加し、2007年には約9,000人、純ジャパの学生はほぼ全員が履修するまでになりました。現在は少し減っていますが、英語が得意でチュートリアルイングリッシュを必要としない学生が増えているからです。

近藤

初級から上級プラスまで、6レベルで細かくグループ編成されているほか、学生のニーズに応え、ライティング、ディスカッション、ビジネスと、学ぶ内容のターゲットを搾ったバリエーションを広げてきましたね。

田中

さらに英語を使いこなすための科目として、ビデオ会議システムを使って海外の大学の学生とディスカッションを行う「CCDL(Cross-Cultural Distance Learning)」を開設したほか、学部では、海外の大学とオンラインで合同ゼミを行う「サイバーセミナー」「サイバーレクチャー」など、さまざまな方法で英語でのコミュニケーション能力を高めるためのトライアルを重ねてきました。正規の授業以外にも、ICC(異文化交流センター)では日本人の学生と留学生がペアになって互いの言語や文化を教え合う「ランゲージ&カルチャー・エクスチェンジ」なども行われています。

「英語を学ぶ」から「英語で発信することを学ぶ」へ

――学部ではどのような英語教育が行われていますか。

グローバルエデュケーションセンター 教務主任
首藤佐智子教授(法学学術院)

首藤

法学部では2004年に大きなカリキュラム改革を行い、リーディング、ライティングといった技能別の授業を廃止して4技能総合型とし、英語を教えるのではなく、英語で教える授業「CLIL(Content and Language Integrated Learning)」を始めました。1年生では春学期は「Bridge」、秋学期は「Gate」というプログラムで、英語を聞いて理解・表現し、ディスカッションする基礎を作り、英文をパラグラフで書く等の訓練も行います。2年生では、人権問題や環境問題などのさまざまなテーマを英語で学ぶ「Theme」が必修に。それぞれの授業で1,000語のリサーチペーパーを書きます。

田中

「CLI L」は法学部だけでなく、政治経済学部でも導入され「World Views」というオリジナルテキストを使った英語の授業を開講していますね。学生にとっては、英文のレポートは多少抵抗があると思いますが、実際はいかがですか。

首藤

まず、日本語とは全く違う英文ライティングのルールを教えています。そもそも米国の大学では、全員が最初に「フレッシュマンイングリッシュ」を受講しますよね。

田中

そうですね。米国人は母語話者であっても、英文は訓練しなければ書けないと考えています。米国の主要な大学では、新入生は最初にライティングを履修します。このことは意外に日本では知られていませんね。その点、早稲田大学には日本の大学で先駆けとなったライティング・センターがあり、米国の大学と同じ発想で日本語と英語のアカデミックライティングの指導をしています。

※4技能:Reading、Writing、Listening、Speaking

論理的な文章を書く力をつける

グローバルエデュケーションセンター 所長
田中愛治教授(政治経済学術院)

首藤

GECでも、授業として「AWADE(Academic Writing and Discussion in English)」を2017年に開設しました。英文ライティングのルールを学び、ディスカッションを交えながら、論理的な英文を書く力を身に付けます。

田中

開設にあたっては、10人の各学部の先生と英語教育の理念を語り合い、最終的に4人の先生と相談してプログラムを作りました。共通していたのは、もはや英語そのものを教えるだけの時代は終わり、これからは、英語で自分の意見を発信する方法を教える時代だという思いです。社会に出て知的な職業に就くなら、手紙やビジネス文書などの英作文の能力は必須です。アカデミックライティングを身に付けておけば、その応用で説得力のある文章を書くことができるようになります。

学生には、最終的に英語で専門科目を学ぶ「EMI(English Medium Instruction)」を受講できるレベルまで到達してほしいです。その足がかりとして、「A WADE 」をぜひ受講してほしいですね。

近藤

実際のところ学生たちは、英語 を話すスキルが重要だという認識はあると思うのですが、書くスキルについてはさほど重要視していない気がします。留学して初めて気づくケースも多いのではないでしょうか。書く力があれば、ロジカルに話すこともできるということをもっと理解してもらう必要があると思います。

田中

そうですね。今年から、卒論は英語にしましょうか(笑)。

英語はグローバルリーダーのコミュニケーションツール
近藤

早稲田大学には、英語以外にも多彩な言語科目が開講されていますね。

首藤

28という言語数は、東京外国語大学に次ぐ多さではないでしょうか。登録者数が少ないクラスもありますが、言語を学ぶことは文化や国に敬意を払うことでもありますので、学生のニーズがあれば継続しています。

田中

国際ボランティアを経験した学生が、その国の言語を学びたいと受講することも多いそうです。私たちが考えるグローバルリーダーとは、世界中どこでも活躍できる人材です。その国の言語はもちろん、世界のコミュニケーションツールとしての英語もしっかりと身に付けて社会に羽ばたいていってほしい。進化し続ける早稲田の英語プログラムを大いに活用していただきたいですね。

第三の言語を学ぶこと―
異文化を学ぶ感受性を育む

政治経済学術院
室井禎之教授

 現在、早稲田大学では28の言語を学ぶことができます。この多様性の礎は、1960~1970年代にかけて、語学教育研究所の尽力によって築かれました。記録によると、最初に開講されたのが1960年のポルトガル語、翌年に朝鮮語とインドネシア語、さらにその翌年にイタリア語……と続き、その後も立て続けに増えています。いずれも日本と関わりが深く、当時の社会情勢による関心の高まりから学生の要請があり開講されました。一方で、さまざまなバックグラウンドを持つ教員の多様性も豊富な言語科目に寄与しています。

 日本語、英語に次ぐ、第三の言語を学ぶ意義は、自国と世界のスタンダードとも言える英語圏以外の価値観を知ることです。世界には多様な文化や価値観があるという前提で物事を考える感受性が身に付き、ダイバーシティへの理解にもつながります。ちなみに私の専門であるドイツ語に関して言えば、日本の近代化にドイツが果たしてきた役割は大きく、現在の日本の源流のひとつを学ぶ助けになるでしょう。

 今後も要請に応じて語学教育の充実を図っていきたいと考えていますが、語学は教室だけで学ぶものではありません。基礎を身に付けた後、自分で学ぶ手段は多くあります。多くの言語の習得を通じて、視野がさらに広がることを期待しています。