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キャンパスナウ

▼2016 錦秋号

進化する大学

本学の新しい組織・制度など、進化する大学のしくみについて解説します。
第11回は、ダイバーシティ推進室です

略歴はこちらから

ダイバーシティ推進室

多様な個性が集う大学 ~「早稲田らしさ」のこれから~

矢口 徹也/ダイバーシティ推進室長(ダイバーシティ推進委員会 委員長)

多様性重視と個性尊重は早稲田の伝統

 ダイバーシティ推進室は今年7月に開設されました。早稲田大学の中長期計画「Waseda Vision 150」を受けて、より幅広い視点で活動するため、男女共同参画推進室を発展的に改組して誕生したものです。

 ダイバーシティの推進とは、国籍、性別、障がいの有無などにかかわらず、多様な個性が活躍できる環境を醸成することであり、それによって大学全体が新たな発想を生み出し、発展していくことを目的としたものです。近年、良く耳にする言葉ですが、早稲田大学にとっては目新しい考えではありません。

 創立者である大隈重信は、国家による人材画一化に危機感を抱き、学生が将来、広く世界で活躍するためには、自由な思考とリーダーシップの育成が不可欠と考えていました。それゆえ、大学の教旨(教育の基本理念)には、学問の独立、個性の尊重、自由討究、独創の研鑽が掲げられました。また、大学を多様な人々が集う場とするために、創立初期から積極的に留学生の受け入れを行い、女子学生への門戸開放を検討し、大学の機能を拡大普及するために通信講義録事業を開始しています。

 留学生受け入れについては、1905(明治38)年に清国留学生部を設置、戦後もその理念は引き継がれ、外国学生特別選考の実施、国際部、日本語教育研究センターの設置等を行い、海外の700を超える大学、機関と協定を結んできました。それによって、現在、約5,000名の外国人学生を受け入れ、3,000余名の在学生を海外に派遣しています。

 女子学生については、大正期から聴講生の受け入れを開始し、1939(昭和14)年に4人の女性が正規学生として入学しました。1949(昭和24)年の新制大学の発足時からは、全学部で男女平等の資格での入学が始められました。戦後、学生の女性比率は向上してきましたが、学部、専門分野によっては依然、男女比率の差が存在し、専任教員の女性比率も約15%です。このような男女間の格差は、本学のみならず日本の教育・研究全体に見られる傾向であり、さらには政治や実業の世界も共通して抱える課題です。近年それが男女平等の観点のみでなく、国際的な競争力の足かせにもなっているとの認識から、積極的な是正が求められるようになってきました。

全学で連携し各種施策を進める

ダイバーシティ推進室スタッフ6名

 本学では、創立125年をむかえた2007年に「早稲田大学男女共同参画宣言」を発表し、男女共同参画推進室を開設しました。翌2008年には「Waseda Next 125」に基づいて「早稲田大学男女共同参画基本計画」を定めて具体的な取り組みを加速してきました。

 この基本計画に基づき、大学は女性専任教員比率や女性管理職比率向上の具体的な数値目標を掲げ、教職員の男女共同参画に関る支援策を実施し、各キャンパスに授乳・搾乳室を設置するなど、施設面の充実を計ってきました。女子学生の進学と就職支援、さらにダイバーシティ、男女共同参画理解のための科目設置、公開講演会の開催、教職員の研修も進められています。

 本年7月、男女共同参画室はダイバーシティ推進室に改組され、男女共同参画に加えて、障がい者支援、セクシュアル・マイノリティ支援などを含めた幅広い視点から大学のダイバーシティ推進のための施策を検討していくことになりました。今後も、学生や教職員に対する教育研修、学内の制度や環境整備、学内外への広報啓発および情報収集、調査、交流活動などに取り組んでいきます。いずれの活動においても、各学術院や学内関係箇所など全学を挙げての連携が必須です。本学にとって望ましいダイバーシティのあり方とは何かについて確認しながら、各種施策を進めていきます。

「多様な個性」が集う大学
【ダイバーシティ推進室の発行物】

さんかくニュース

リーフレット

 先に本学の多様性と個性尊重の歴史についてふれました。官吏養成を目的とした官学に対抗して私学を設立した早稲田の大隈、同志社の新島襄には共通して大切にした倜儻不羈(てきとうふき)という言葉がありました。これは、強い信念と独立心を持った並外れた才能を意味しています。大隈、新島は、学生の個々の可能性に着目し、若者が自ら考え、行動していくことを重視した教育者でした。もともと教育には、人類が蓄積した知の体系を伝達していく一方で、旧来の社会を改革する新しい個性を育てていく役割があります。彼らは、近代化の名目の下で教育における伝達機能、組織適応が強調され、教育が矮小化されていくことを恐れていました。それゆえの倜儻不羈だったと思います。

 現在の日本の学校教育では、子どもたちの問題解決能力獲得の必要性が指摘されています。早稲田大学に集う学生たちが多様な人々と交流し、お互いに認め合っていく力(言葉、ものの見方、考え方)を身につけていくことは、国際化した社会の中で活躍するために、重要な要件になっています。ダイバーシティ推進室も以上の課題に応えられるよう尽力したいと考えています。

「スチューデントダイバーシティセンター」の開設が予定されています

 外国人学生、障がい学生ならびに性的マイノリティ学生の支援や啓発・交流活動をとおして、多様な学生が安心して学業に専念できる学生生活環境の確保と、本学に集う全構成員が多様な価値観や生き方を受容するキャンパスづくりの推進を目的とし、現在開設準備が進められています。

女性活躍推進法に基づく行動計画

 2016年度に施行となった女性活躍推進法に基づき、早稲田大学では右のような課題および数値目標を設定している。

女性専用の交流・休憩スペース

「ダイバーシティ推進室分室」の設置

 2016年9月、西早稲田キャンパス60号館に「ダイバーシティ推進室分室」がオープンしました。女子学生、女性教職員の利用をメインとした交流・休憩スペースや、授乳・搾乳室等としてご利用いただけます。

今年7月に開催された「なぜデンマークは世界一幸福な国になったのか~同性パートナーシップを世界で初めて認めた社会~」の様子

ユニークなイベントを開催

 広報啓発活動の一環として、ダイバーシティ推進に関する各種イベントを開催しています。学内の女性研究者と研究職を目指す学生との交流会や、ダイバーシティ先進国であるフィンランドやデンマークの取り組みに学ぶ講演会など、多彩なラインナップが特徴。

矢口 徹也(やぐち・てつや)/ダイバーシティ推進室長(ダイバーシティ推進委員会 委員長)

教育・総合科学学術院教授。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学、博士(教育学)。専門は生涯教育(女性教育、青少年教育)。著書に『山形県連合青年団史』(朋文社)、『女子補導団−日本のガールスカウト前史』(成文堂)、『日本社会教育学会60周年記念資料集』(東洋館出版)など。

ダイバーシティ推進室(大隈会館2階)
03−5286−9871(平日9:00 ~ 17:00)
http://www.waseda.jp/inst/diversity
diversity@list.waseda.jp