早稲田大学の教育・研究・文化を発信 WASEDA ONLINE

RSS

読売新聞オンライン

ホーム > キャンパスナウ > 2016 早春号 進化する大学

キャンパスナウ

▼2016 早春号

進化する大学

大学の新しい組織・制度など、進化する大学のしくみについて解説します。
第8回は、日本語教育研究センターです

略歴はこちらから

日本語教育研究センター

グローバル時代にふさわしい
学びの環境づくりをけん引

舘岡 洋子/早稲田大学日本語教育研究センター 所長

日本語学習ニーズに幅広く対応

 本学では、東京専門学校時代の明治17年に最初の留学生を受け入れて以来、多くの留学生に門戸を開いてきました。現在では、国内最多の4,917名(2015年11月1日現在)を受け入れているほか、多数の外国人教員を雇用。さらに毎年海外から数百名の短期・中長期滞在の研究者を受け入れています。

 

 そのなかで全学の日本語教育を一元的に担っているのが 日本語教育研究センター(Center for Japanese Language:CJL) です。対象としているのは、外国人在学生や海外育ちの日本人学生などさまざま。また受託事業として、ETP(※1)やSENDプログラム(※2)で来日したビジネスパーソンや学生など、ノンディグリーの方にも学びの場を提供しています。さらに、履修コースも3週間もしくは6週間の短期、半年もしくは1年の長期を用意しており、幅広い日本語学習のニーズに対応しています。

※1 ETP:欧州委員会がスポンサーとなり、欧州企業のビジネスパーソンに対して、日本と韓国のマーケットでの成功に必要なビジネス・言語・文化に関するトレーニングを提供するプログラム。
※2 SENDプログラム:東南アジア諸国連合(ASEAN)の大学と、単位の相互認定などを行い、日本人学生の海外留学と外国人学生の戦略的受け入れを行う、世界展開力強化事業として文部科学省により採択されたプロジェクト。

日本語教育研究センターの皆さん
※棟方隆一前事務長(写真前列中央)は2015年12月1日付で転出。
後任は木下耕一事務長。

重視しているのは多様性と主体性

 CJLの特徴として、多様性と主体性の2つに重点を置いた運営が挙げられます。

 まず、多様性を象徴するのがカリキュラムのラインナップです。大別すると、一般的な日本語カリキュラムを体系的に整えた「総合科目群」、教員が独自にテーマを設定する「テーマ科目群」に分かれ、特にテーマ科目群ではビジネスに役立つ実用的な内容のものから、俳句や演劇といった創作性豊かな内容のものまで、ユニークかつ多彩な学びを提供しています。

 一方の主体性については、履修方法に表れています。学習者は自分の語学レベルに応じて初級1から上級8まで選択できるほか、自主的にプログラムを構築できる仕組みになっています。日本語をきちんと正しく体系的に学びたいのか、文化なども含めた知識を身に付けたいのか。それぞれの目標や興味に応じて、バラエティに富んだカリキュラムのなかから柔軟に組み立てられるため、まさに「私のプログラム」といえますね。

 こうした自主的な学びを支援する取り組みのひとつとして、「わせだ日本語サポート」という制度も設けています。大学院日本語教育研究科に所属する院生スタッフが、学習者の個別相談に乗るもので、日本語学習の仕方に関する助言から日本語学習の困りごとの解決まで、日本語学習アドバイジング、学習リソースの紹介、日本語に関する相談で学習者をバックアップしています。

 ほかにも、学部生・院生による授業ボランティア制度があるなど、大勢の日本人が運営に関わっていることもCJLの魅力。人と人の交流を通じて、「語学だけでなく、日本の社会や文化を理解できて良かった」といった感想が多くの修了生から寄せられています。

魅力その1 多様性

テーマ科目群は教員が関連するキーワードを設定することになっている。「読む」「書く」「話す」などのほか、「映画・ドラマ・演芸」「理系」「仕事」「調べる」「創作する」など、キーワードの数が20にのぼることからも、その多様性がうかがえる。

授業の風景。多様な背景をもった人々が共に学ぶことで豊かな学習環境が創出される

魅力その2 自主性

CJLでは自分の興味や目標に応じて、柔軟にカリキュラムを選択できる。そうしたプログラムの組み立てを助言するほか、さまざまな面から自主的な日本語学習を支援するのが「わせだ日本語サポート」の院生スタッフ。同世代同士のため相談しやすい。

院生スタッフと学習者。日本人学生と留学生が共に学び、成長していく

受け入れ先の学術院でサポート体制の充実を

 さて、全学で掲げる「WASEDAVISION 150」では、外国人学生数10,000人という数値目標を設定しています。このビジョン達成に向けて、CJLが果たすべき役割を変えていかなければなりません。

 従来、本学で受け入れてきた留学生の多くは日本語の習熟度が高く、CJLはその総仕上げの場として機能してきました。しかし日本語の初級者が増えると予測される今後は、まずCJLにおける初級カリキュラムを充実させることが急務と考えています。

 加えて、各留学生が所属する学術院においても、授業の理解を助けるような体制づくりが必要となります。2016年から、学内にあるグローバルエデュケーションセンターでは、日本人の学部生向けに留学生をサポートするアドバイジングプログラムを開始するなど、支援体制の充実を図っているところです。各学術院とCJLとが連携し、日本人学生と留学生が共生的に学べる学習環境を整えていきたいと思います。

 CJLが運営の基本に置いている多様性には、プログラムだけでなく、人材という意味も含まれます。生まれ育った国や環境、それぞれの日本語レベルも異なる、多様な人々が互いに尊重しながら共生する姿は、グローバルな時代にふさわしい大学像といえるのではないでしょうか。その実現に向けて、CJLでは取り組みを加速させていきます。

数字で見るCJL

履修者数 2,157
授業数 650コマ/週
教員数 190
外国人学生の出身国数 89ヵ国・地域

舘岡 洋子(たておか・ようこ)/早稲田大学日本語教育研究センター 所長

早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。アメリカ・カナダ大学連合日本研究センター、東海大学留学生教育センターを経て、2007年より早稲田大学大学院日本語教育研究科教授。2015年12月より、日本語教育研究センター所長。