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キャンパスナウ

▼2015 錦秋号

進化する大学

大学の新しい組織・制度など、進化する大学のしくみについて解説します。
第7回は、研究戦略センターです

略歴はこちらから

研究戦略センター

国際的な研究大学になるために、
学術研究活動の活性化に貢献

棟近 雅彦/早稲田大学研究戦略センター所長 理工学術院教授

研究力強化を戦略的に考える

 研究戦略センターは、2009年4月に大学研究を強化・促進することを目的として設立されました。当時の経緯を振り返ると、2004年に国立大学が法人化され、各大学が国際競争力を高めるために研究力を強化するようになったという背景があります。戦略的に研究マネジメントを進める必要性が高まり、国際研究大学として、本学では他大学よりも早い段階で本センターを立ち上げました。

 これまでに、国の競争的な大型外部資金である研究大学強化促進事業やスーパーグローバル大学創成支援事業などの獲得にも貢献してきました。現在は、総長を本部長とする研究力強化本部の事業実施部門として、「調査・分析・評価」「研究戦略の立案・提言」「研究活動の推進・支援」「人的ネットワークの拡大」を使命とし、着実に実績を重ねています。

 Waseda Vision150においても、「独創的研究の推進と国際発信力の強化」「新たな教育・研究分野への挑戦」を核心戦略として掲げており、早稲田大学の将来のあるべき姿のために、研究力の強化は重要な課題となっています。そうした中、研究力を強化し、国際的な研究大学としての地位を確立するために、本センターが研究マネジメントにおける推進力になりたいと考えています。

研究現場を理解するURAが研究者と本部をつなぐ

 当センターは、URA(University Research Administrator)13人とスタッフ5人の計18人で運営しています。URAは、それぞれが専門分野を持った教員で、研究戦略・評価、マネジメント、国の科学技術・産業政策等に精通した人材です。種々の分析に基づく研究活動の活性化に向けた提言、府省庁との折衝や対外交渉、研究プロジェクトの創成支援やマネジメント、個々の研究者の申請内容への示唆など、研究を横から支える専門家として、研究の現場と大学本部をつなぐ役割を担っています。

 現在は、URAをより効果的に活用するため、「情報収集・分析グループ」「大型プロジェクト創造グループ」「研究拠点形成・発展グループ」「アウトリーチグループ」の4つのグループに配置し、それぞれのグループが連携しながら、研究活動の成長スパイラルの実現を目指しています。

 URAは日本の大学においてはまだ新しい職種ですが、役割を明確化し、十分に活用していく制度を作っていくことが、本学のみならず日本の大学にとって欠かせない課題です。しかしながら、まだURAの存在を知らない教員も多いため、学内での認知度を向上したいと考えています。私自身、一人の研究者として、URAのサポートには刺激を受けました。例えば、研究資金獲得のための申請書の書き方について、同分野の研究者同士の議論では見えなかったことが、第三者であるURAの視点で発見され、アピールすべき点が明確になりました。こういった戦略的ツールを活用しない手はありません。

学内外にアピールし、取り組みを推進

 今後の課題は、本センターの取り組みについての理解を学内に浸透させ、学術院や研究院との連携を深めていくことです。学術院を越えた連携が必要なプロジェクトの調整役は、本センターにしかできません。

 また、受入研究費を増やしていくためには、国の限られた研究予算を当てにするだけでなく、民間資金にも目を向けることが必要です。まだ、民間企業が国内の大学に資金を出す例は多くありません。産学連携プロジェクトのノウハウを構築し、人的ネットワークの拡大により支援者を増やすことで、2032年には民間資金の獲得を現状の3倍に増やし、本学の研究活動を支援していきたいと考えています。

棟近 雅彦(むねちか・まさひこ)/早稲田大学研究戦略センター所長 理工学術院教授

研究戦略センターの皆さん

1982年東京大学工学部反応化学科卒業、1987年同大学大学院工学系研究科博士課程修了、工学博士。同年同大学工学部反応化学科助手、1992年早稲田大学理工学部工業経営学科(現経営システム工学科)専任講師、1993年同助教授、1999年同教授。2012年9月から早稲田大学研究戦略センター所長。