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キャンパスナウ

▼2015 盛夏号

進化する大学

大学の新しい組織・制度など、進化する大学のしくみについて解説します。
第6回は、社会連携推進室です

略歴はこちらから

社会連携推進室

社会との関わりを通して
生き方の多様性に気付く機会を提供

坂倉 みどり/早稲田大学 教務部 社会連携推進室 課長

社会の資源を教育に生かす

 社会連携推進室は、発足以来、大学の資源(知的財産、人的資産、文化的・歴史的資産)と社会の資源(行政、企業、地域など)の連携を推進する役割を担ってきました。当初は、教育を主軸に「大学が社会に何を提供できるか?」という視点でさまざまな活動を行ってきましたが、近年はWaseda Vision 150の核心戦略でも明文化されている通り、その主軸を「社会の資源をいかに教育に生かすか?」という視点にシフトし、「社会連携教育の推進」に取り組んでいます。

 社会連携推進室の連携先は、行政、企業、地域、個人と多岐にわたっています。そのいずれにおいても、学生が社会の課題に対して問題意識を持ち、次の行動につながるような仕掛けをつくり、連携先にとっても学生と接点を持つことで、何らかのメリットが生まれるように工夫しています。

 例えば、三菱自動車との連携プロジェクトでは、社長講演会に先だって、三菱自動車社員と学生とのワークショップを組み合わせるように仕掛けました。若者のクルマ離れについて、社員の方々と参加学生とがディスカッションを経て、「私にとってのクルマとは何か?」というアプローチで企業CMを作成し、社長講演会で発表しました。参加者はこの一連のプログラムを通して問題の本質に迫り、個々の関係性を築くことの重要性に気付きました。

社会連携教育“IPPO(一歩)プログラム”

 過去のプロジェクトで学生と接する中で、私たちが感じていたのは、学生が抱えている将来への漠然とした不安でした。既存のさまざまなプロジェクトやボランティア活動に自ら参加できる学生がいる一方で、「授業、サークル活動、アルバイトといった日々の大学生活を漫然と送っている学生も確実にいるのではないか?」、「『このままでよいのかな?』と感じつつも一人でモヤモヤしている学生も少なくないだろう」、という確信めいたものをこれまでの経験から感じていたのです。そこで、2014年度より、学生が社会に一歩踏み出すための導入として、“IPPO(一歩)プログラム”に着手しました。

 このプログラムは、まず、学生同士で話し合うことで他者に触れる機会とする「fumidasuワークショップ」を最初のステップとし、次に、他者に触れたら学外に出て、地域で頑張っている人や中小企業の経営者のこだわりや生き方に触れてみようという「tsunagaruプログラム」の2段階のステップで構成しています。

学びの動機に気付く場を提供

 人との出会いは一生の財産です。学生に多くの出会いを提供することで、さまざまな分野で頑張っている人々の思いを知り、人生のヒントにしてほしい。最後の教育機関である大学だからこそ、4年間では完結しない学びの動機に気付く場を提供していきたいと考えています。

社会連携推進室のプロジェクト事例

■三菱自動車プロジェクト
三菱自動車の社長講演会でのプレゼンテーションをゴールに、20名の早大生が「私にとってのクルマとは?」というアプローチでワークショップを行い、企業CMを制作。

■りそな総研セミナー
早稲田大学で学ぶ外国人留学生が企業経営者たちとともに、日本企業の特徴について議論し、「ものづくり」現場を訪問見学。

■佐賀県プロジェクト
大隈重信の出身地である佐賀県と包括協定を締結し、教員・学生とが協働することにより、学術・文化・地域の発展や人材育成に取り組む事業。

■奈良県プロジェクト
豊かな文化財や多くの歴史資源を有する奈良県と、早稲田大学の研究室を中心とした教員・学生とが協働することにより、学術・文化・地域の発展や人材育成に取り組む事業。

■墨田区プロジェクト
区民や行政職員、本学の教職員と学生が様々な角度から議論を交わし、新たな「墨田区食育推進計画」の策定に携った。

■西東京市プロジェクト
教育・文化・スポーツなどの分野において西東京市の発展と人材育成に寄与するプロジェクトの一環として、2007年度より市内の小学生を対象に、毎年2回ずつ「理科・算数だいすき実験教室」を開催。

■木島平村プロジェクト
長野県木島平村との連携で、過疎化問題に直面する農村の活性化に取り組む。

■川口市プロジェクト
川口市内の中小企業経営者を対象にした参加型のセミナー。2014年度は「経営のモヤモヤを観える化しませんか」をテーマに。

社会と関わる2段階のステップ
自分から一歩踏み出す

Step1 fumidasu(踏み出す)ワークショップ

 学生同士のグループワークを通じ、バックグラウンドの違う学生間の交流を図り、個と個の関係を作ることで、他者を理 解することの導入的体験をするものです。参加してくれた学生から、以下のような感想を頂きました。

思ったより衝撃的だった。意外と考えさせられました。
とても大学っぽかった(本来の)。普段の大学ではこんなに真面目に話す機会がないので、よかったです。
素敵な人たちと出会い、自分を見つめ直すきっかけになりました。今の自分に強い肯定感が生まれました。
早稲田に対する親しみの気持ちが湧きました。このような機会をもっと増やしてほしいです。
人に出会い、生き方を知る
Step2 tsunagaru(繋がる)プログラム

 地域で頑張っている人や中小企業経営者に触れ、そのこだわりや生き様に迫ることで、「他者とは何者か、自分とは何者なのか」という気付きに加え、「生きることの一体感」を体感するものです。2014年度は夏期に11プログラム、春期に10プログラムを実施しました。こちらの参加学生からは、以下のように感想を頂いています。

「縁」の広がりを感じました。最初の一歩に対し、ぐっと背中を押して送り出して頂いたこと、大変感謝しております。
受入側の手の掛けよう、力の入れよう、気持ちの入れように感動しました。他人から、しっかり扱ってもらう経験は、他の誰かをしっかり扱おう、という循環につながります。それがこのプロジェクトの価値だと思います。
インターンシップと違って、このプログラムは制限がないから、伸びしろが無限なんだと思います。
日頃から、自分の世界が狭いな、と思っていて、変えたいなと思って参加しました。本当に良かったと思っています。ここから行動に移さなければいけないと思いました。
「tsunagaruプログラム」に参加した学生の声

「tsunagaru-chiikiru」
社会科学部2年 勝田 翔さん

(染谷亜紗子さん(花泉酒造/福島県南会津町)のプログラムに参加)

この体験を通して考えたのは、普段生活している世界から飛び出せば、新しい価値観を知ることができるということでした。普段私 が生活している世界では、お金という価値観が中心を占める『物質主義』的な考え方が主流であるように思います。人と人とのつながりや自然を中心に考える『精神主義』的な考え方も、頭では理解しているつもりでしたが、実際に体験することは別ものでした。

「tsunagaru-mochimasu
教育学部 生涯教育学専修3年 賀茂慎一郎さん

(宮治誠人さん(宮治通信工業株式会社代表取締役/中野区)のプログラムに参加)

普段、絶対に出会わない人たちとの出会いが自分を知らない世界に誘ってくれワクワクしました。この活動を通して一番感じたのは 「全ては人から始まる」ということ。人を通して新しい出会いがあり、自分を成長させるきっかけを作ってくれると実感しました。今後の短い学生生活で出会う一人一人を大切にして、自分の世界をどんどん拡げていきたいと思います。

このように、学生たちは経験を通じて、人と人とのつながりや、働く誇りなどを感じ取って、さまざまな生き方を知り、視野を広げています。受け入れ先からも「大学生と触れ合って、元気をもらえる」という声を頂いています。

※学年は2015年3月時点

坂倉 みどり(さかくら・みどり)/早稲田大学 教務部 社会連携推進室 課長

「学生が成長した姿を見るのがやりがい」と語る社会連携推進室の職員の皆さん

1987年早稲田大学入職。その後、事務システムセンター、理工学術院事務所、文学学術院事務所、高等学院を経て、教務部社会連携推進室に着任、現在に至る。